先生との恋

これは私が高校2年生の秋に体験した恋の話です。

私は1学年がたった20人程度の小さな田舎の中学校に通っていました。
小学校の頃から同じメンバーでクラス替えもない。みんな仲良く、楽しい学校生活を過ごしてはいましたが、『恋愛』なんて漫画の中のお話でした。

そんな環境から抜けだして通い始めた高校は確か1クラス35人の5クラスだったと思います。
とにかく人が多くてビックリしたけれど、とてもドキドキしたのを覚えています。
クラブもたくさんあって好きなことを選べるんだ!とワクワクしました。
そして、見学の時にはじめて見た柔道部の迫力に圧倒されてマネージャーをすることに決めたんです。
これが柔道部顧問で私の初めての恋になる先生との出会いでした。

先生はその高校の中では比較的若かったので、優しいお兄ちゃんのような存在で人気がありました。
今から思えばすごくイケメンとかカッコイイという感じではなかったなと思いますが…
頼れる兄貴って感じで男女共に生徒が集まってくる先生でした。
私もマネージャーという立場上先生とはたくさん話をしたし、普通に楽しい先生だなと思っていましたね。

そんな関係が変わったのは高校2年生の時、柔道部の練習試合で出会った他校の先輩からの付きまといが原因でした。
柔道部の練習試合の会場ではまず畳を敷いて柔道試合が出来るように用意していくんですが、その畳が重くて重くて。
自分の高校では柔道場があり、畳を敷いたりしないので重さに耐えられずフラフラしてしまったところを他校の先輩が助けてくれたんです。
「こんな重いの持たなくていいよ」と代わってくれたのでお礼を言ったのですが、なぜか気があると勘違いされてしまったようで付きまといが始まりました。
とても感じのいい先輩だったのではじめは偶然だと思ったんですが、学校の最寄りの駅(先輩の高校の最寄り駅ではない)であったり同じ電車に乗っていたりが続いてなんだか怖くなって…
部活をすると遅くなるのでもうやめよう!と思いつめ、顧問の先生に話に行ったんです。
先生は「そんなの偶然だろ」とからかうこともなく(部活の先輩にはそう言われました)こっそり様子を確認すると言ってくれました。
その頃には結構追い詰められていたので先生の言葉に泣いてしまいました。やっぱり先生は生徒の味方なんだと強く思いましたね。

部活終わりの帰り道、その日も先輩は駅で待っていて「一緒に帰ろう」と声をかけてきました。
私が困った顔をするとこっそり見ていた先生が出てきて「俺の彼女に手を出さないでくれる?」と言ったんです!
私はとても驚きました。もちろん付き合ってもいませんし、生徒と先生なんて問題になるにきまってるのに何を言ってるの!?って思いました。
先輩ももちろん驚いて声が出ない様子でした。

でも先生は平気な顔をして「そういうことだから」と言って私の手を引っ張って帰りの電車に乗りました。
私はパニックのまま、でも大きな声を出すわけにもいかず先生についていきました。
人がいなくなった頃にどうしてあんなことをしたのか?先輩が教育委員会にでも言ったらどうなるのか?と問い詰めると、「大丈夫。Mは何も心配しなくていいよ」と言って笑いました。
不安もあったけれど、もう先輩に付きまとわれることもなくなるかもと思うと気持ちが晴れ晴れしてその日はぐっすり眠れました。

次の日もまた次の日も、先生はこっそり様子を見に来てくれました。何度もそうしているうちに電車に人がいなくなった残り10分が私達の距離を縮め、手を繋ぎ、キスをするようになりました。
私は幸せでした。10分だけは私だけの先生でいてくれるんですから。
心配していた例の先輩もそれから音沙汰がなくなり、3ヶ月後練習試合の会場で会った時には、隠れるように逃げていってしまいました。
あの先輩の行動は何だったのかいまだにわかりません。

通っていた高校はほとんどの生徒が3年に上がるタイミングで部活を引退することもあり、3年の春、私はマネージャーの仕事を後輩に任せました。
早く帰宅できるようになったので先生との10分もなくなってしまいました。

結局付き合っても言われず付き合おうも言われず、勇気がなくて終わった恋でしたがあの時のドキドキは今でも私の胸に残っています。

投稿者:Mai