【延岡駅】エンクロスの秘密。TSUTAYAとスタバが溶け込む、建築家・乾久美子の傑作を歩く

投稿者: | 2026年2月24日

宮崎県北部の玄関口、延岡駅に降り立つと、誰もがその開放感と美しさに足を止めるはずです。2018年に誕生した駅複合施設「エンクロス」は、単なる駅舎の建て替えにとどまらず、日本の公共建築の常識を塗り替えた場所として、建築ファンやまちづくりに関心のある人々から熱い視線を浴びています。

「地方の駅なんて、どこも同じじゃないの?」と思っている方にこそ、ぜひこの場所を歩いてほしい。そこには、日常の風景を特別に変える、緻密に計算された「心地よさ」が詰まっています。

境界のない自由な空間:TSUTAYAがつくる「リビングのような駅」

エンクロスの最大の特徴は、施設全体を包み込むTSUTAYA(蔦屋書店)の存在です。しかし、一般的なショッピングモールにある書店とは全く趣が異なります。

ここでは、本棚が壁として機能するのではなく、空間をゆるやかに仕切る「家具」のように配置されています。最大の特徴は、「館内どこでも、購入前の本を読みながらくつろげる」という点です。

  • スタバとの融合: 1階にはスターバックスが併設されており、コーヒーの香りに包まれながら最新の雑誌や旅のガイドブックをめくることができます。

  • 「生活提案」型の棚作り: 単なる新刊案内ではなく、「食」「暮らし」「旅」といったテーマごとに本がセレクトされており、延岡の豊かな自然や食文化(チキン南蛮など!)をより深く知るためのヒントが至る所に散りばめられています。

駅の待合室としての機能と、洗練された書店の機能が「境界線なし」で混ざり合っている。この不思議な一体感が、訪れる人に「自分のリビングにいるような」安心感を与えてくれるのです。

建築家・乾久美子が仕掛けた「透明な建築」の魔法

この驚くべき空間を設計したのは、日本を代表する建築家の一人、乾久美子(いぬい くみこ)氏です。彼女は「ルイ・ヴィトン」の店舗設計や、震災復興のプロジェクトなど、繊細かつ大胆な作品で知られる建築家です。

乾氏がエンクロスで目指したのは、豪華なランドマークを作ることではなく、**「街の一部としての駅」**を作ることでした。

  • 「柱」によるリズム: 施設内を歩くと、細い柱がたくさん並んでいることに気づくでしょう。これは、巨大な壁で空間を区切るのではなく、柱の密度によって「なんとなく落ち着く場所」や「賑わう場所」を作り出す、乾氏独自の手法です。

  • 圧倒的な透明感: 全面ガラス張りの外観は、駅の外の風景(バス停や街並み)と中の活動を地続きにします。夜になると、施設内の温かい光が街を照らし、まるで大きなランタンのように街を彩ります。

  • 回遊性のデザイン: 1階から2階へと続く階段や通路は、目的がなくても「つい歩きたくなる」ような設計になっています。2階のテラスからは、延岡の山々と線路を見渡すことができ、旅情をそそります。

乾久美子氏の建築は、主役が「建物」ではなく「そこにいる人々」であることを教えてくれます。

本だけじゃない!エンクロスを彩る「延岡の日常」

エンクロスの魅力は、TSUTAYAや建築美だけではありません。ここには、延岡という街の息遣いを感じられる仕掛けがたくさんあります。

1. 圧巻のキッズスペース

家族連れに嬉しいのが、木をふんだんに使った遊び場や、ボルダリングができるエリア。ただの通過点だった駅が、地元の親子が日常的に集まる「公園」のような役割を果たしています。

2. 地域の名産が集まるセレクトショップ

「チキン南蛮」のタレや、地元延岡の老舗の味、工芸品などがセンス良く並べられています。お土産選びはもちろん、地元の人にとっても「延岡のいいもの」を再発見できる場所です。

3. 交流を生む「市民活動」

館内には、料理教室ができるキッチンスタジオや、工作を楽しめるスペースがあります。毎日何かしらのイベントが開催されており、高校生が勉強していたり、お年寄りがお茶を飲んでいたり。多世代が自然に混ざり合う風景は、地方都市の新しい未来を感じさせます。

鉄道でのアクセス方法

延岡駅(エンクロス)へは、宮崎県内および九州各地から鉄道でのアクセスが非常にスムーズです。

  • 宮崎駅から(特急利用):

    • JR日豊本線「特急にちりん」または「特急ひゅうが」で約1時間〜1時間10分。

  • 宮崎空港駅から(特急利用):

    • 「特急にちりん」または「特急ひゅうが」で直通、約1時間20分〜1時間30分。

  • 大分駅から(特急利用):

    • 「特急にちりん」で約2時間〜2時間15分。

駅を出て徒歩0分(というか駅そのもの)がエンクロスです。まずはここでコーヒーを片手に本を選び、延岡の空気感に馴染んでから、チキン南蛮の名店を目指して街へ繰り出してみてはいかがでしょうか。