多治見の歴史と文化:1300年の炎が育んだ「陶都」の矜持
多治見の歴史を語る上で欠かせないのが、1300年以上の歴史を持つ「美濃焼(みのやき)」です。
平安時代から続くこの地の焼き物は、安土桃山時代に千利休や古田織部らによる「茶の湯」の流行とともに、芸術的な頂点を迎えました。多治見は特に、陶磁器の「商いの中心地」として発展。明治から昭和にかけて、多治見駅周辺には多くの陶磁器商が軒を連ね、土蔵造りの建物が並ぶ独特の景観が形成されました。
現在も多治見は、国内の陶磁器生産において圧倒的なシェアを誇ります。しかし、今の多治見の面白さは「伝統」だけではありません。陶磁器から派生した「モザイクタイル」の世界的な生産拠点としての顔、そしてそれらを現代的なデザインや建築へ昇華させる「クリエイティブなまちづくり」の姿勢が、この街の新しい文化を形作っています。
建築とデザインを巡る:藤森照信と磯崎新の名作に触れる
建築好きにとって、多治見は「聖地」の一つです。駅から少し足を延ばすだけで、世界的に評価の高い名建築に出会うことができます。

多治見市モザイクタイルミュージアム
多治見駅からバスで約17分(笠原町エリア)に位置するこの建物は、建築家・藤森照信(ふじもり てるのぶ)氏の設計によるもの。 粘土の採掘場(粘土山)をモチーフにしたという、土の温もりを感じさせる独特の外観は、一度見たら忘れられません。4階の展示室は、天井に大きな穴が開いた半屋外空間。白いタイルと降り注ぐ光、そして藤森氏がセレクトしたレトロなタイルのコレクションが織りなす空間は、まさに「光とタイルの劇場」です。

セラミックパークMINO(岐阜県現代陶芸美術館)
駅から南東へ、緑豊かな丘陵地に位置するのが、プリツカー賞受賞建築家・**磯崎新(いそざき あらた)氏による「セラミックパークMINO」**です。 里山の地形を壊さず、建物が風景の中に埋め込まれるように配置された設計は、まさに「自然と建築の調和」の極致。水面に浮かぶ茶室や、ダイナミックな人工滝を背景にした空間構成は、静謐な美しさを湛えています。
虎渓用水広場(こけいようすいひろば)
駅の北口を出てすぐ、まちづくりの視点から絶賛されているのがこの広場です。かつての農業用水を引き込み、せせらぎと緑を配置したこの場所は、市民の憩いの場であると同時に、数々のデザイン賞を受賞しています。コンクリートの質感を活かしたベンチやライティングなど、ディテールへのこだわりが光ります。
3. まちづくりとリノベーション:ながせ商店街と「ヒラクビル」
多治見の魅力は、駅前の「まちづくり」にも凝縮されています。特に、駅から徒歩数分の「ながせ商店街」は、リノベーション好きなら必ず訪れるべきエリアです。
ヒラクビル
かつての宝石・時計店をリノベーションした複合施設です。1階には本屋と喫茶店、2階にはシェアオフィスが入っており、古いビルの趣を残しつつ、現代的なデザインで再生されています。多治見の新しい文化の拠点として、若い世代やクリエイターが集まる場所となっています。
本町(ほんまち)オリベストリート
駅から徒歩15分ほどの場所にある、陶磁器商の古い街並みを活かした観光拠点です。明治から昭和初期の土蔵や商家が並び、現在はそれらがギャラリー、カフェ、セレクトショップとして活用されています。歴史的な意匠を大切にしながら、今のライフスタイルに合わせた提案をする「リノベーションのまちづくり」がここでも体現されています。
多治見にゆかりがある著名人と企業:ものづくりのDNA
この街の「土」のDNAは、多くのトップランナーを輩出しています。
ゆかりのある著名人
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新井リコ(パティシエ): 「シェ・シバタ」の柴田武氏は多治見市出身。この街から世界へ発信するパティスリー文化を築きました。
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鈴木ちなみ(モデル): 多治見市の観光大使も務め、メディアを通じて多治見の魅力を発信しています。
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新見南吉: 童話作家の南吉は、多治見の女子代用教員として滞在していた時期があり、文学的な香りも漂わせます。
名古屋駅からのアクセス:特急と快速で快適な旅
多治見駅は、名古屋からのアクセスが非常にスムーズで、日帰り観光に最適です。
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JR中央本線(快速・区間快速):
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所要時間:約35〜40分
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料金:680円
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1時間に数本運行されており、予約不要で気軽に乗車できます。
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JR中央本線(特急「しなの」):
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所要時間:約22分
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料金:680円+特急料金(指定席1,290円〜)
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快適に、かつ最速で移動したい場合におすすめです。長野行きの「しなの」が全列車停車します。
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