「宮崎といえばチキン南蛮」というイメージは、もはや全国共通ですよね。しかし、皆さんが普段食べている、タルタルソースがたっぷりかかったあのチキン南蛮は、実は「ひとつの側面」に過ぎないことをご存知でしょうか?
本当の発見は、宮崎県北部に位置する延岡市にあります。ここはチキン南蛮の発祥の地。この街を歩けば、私たちが知っているチキン南蛮の概念が覆るような、奥深い歴史と味のグラデーションに出会うことができます。
今回は、ありきたりな観光ガイドでは語り尽くせない、延岡チキン南蛮の「真の魅力」を紐解きながら、実際に自分の足で歩いて確かめたくなるような情報をお届けします。

延岡から始まった物語:チキン南蛮「2つのルーツ」を巡る旅
延岡のまちを歩き始める前に、まず知っておきたいのが「チキン南蛮には2つの流れがある」という事実です。
かつて延岡市内にあった洋食店「ロンドン」で修行していた2人の料理人が、それぞれ異なる進化を遂げさせたのが現在のチキン南蛮の源流となっています。
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「直ちゃん(なおちゃん)」の流れ: タルタルソースをかけない、甘酢のみの潔いスタイル。
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「おぐら」の流れ: 私たちがよく知る、濃厚なタルタルソースをかけるスタイル。
この2系統が共存し、切磋琢磨してきたからこそ、延岡は聖地と呼ばれています。まちを歩くと、店ごとにタレの酸味や衣の質感が全く異なることに驚かされるはずです。

タルタルなしの衝撃!「直ちゃん」が守る元祖の味
まず訪れてほしいのが、延岡駅から徒歩圏内にある「直ちゃん」です。ここで提供されるのは、タルタルソースが一切のっていないチキン南蛮。
「えっ、ソースがないの?」と驚くかもしれませんが、これこそが賄い料理として生まれた当時のスタイルを今に伝える味です。揚げたての鶏肉を、秘伝の甘酢にジュワッとくぐらせただけ。しかし、その一口が驚くほど軽いのです。
ムネ肉を使っているのに驚くほどしっとりとしており、酸味の効いたタレが衣に染み込んで、噛むたびに旨味が溢れ出します。この「引き算の美学」とも言える味は、延岡という街の、実直で温かい気質をそのまま表しているかのようです。

濃厚な幸せを噛み締める「おぐら」のチキン南蛮
一方で、今の主流であるタルタルソース付きのスタイルを確立したのが**「おぐら」**です。延岡市民にとっては「チキン南蛮といえばおぐら」と言われるほど、ソウルフードとして深く根付いています。
こちらの特徴は、なんといってもそのボリュームと、野菜の甘みが溶け込んだ秘伝のタルタルソース。こってりしているのに、不思議と最後まで飽きずに食べられてしまうのは、ベースとなる甘酢とのバランスが完璧に計算されているからです。
この「直ちゃん」と「おぐら」の食べ比べこそ、延岡を訪れる最大の贅沢。単なる食事ではなく、食の歴史を歩く体験が、ここにはあります。
まち歩きで見つける、延岡チキン南蛮の「5つの定義」と特徴
延岡のチキン南蛮を語る上で欠かせないのが、市民に愛される「延岡チキン南蛮党」が提唱する定義です。単に「鶏を揚げて酢に浸した」だけでは、延岡のチキン南蛮とは呼べません。
まちを歩きながら、ぜひ以下の特徴を意識して店選びをしてみてください。
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鶏肉の部位へのこだわり: 延岡では伝統的に「ムネ肉」が主流です。ジューシーなモモ肉も美味しいですが、ムネ肉をいかに柔らかく、タレに馴染ませるかが職人の腕の見せ所です。
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小麦粉と卵の衣: 唐揚げのようなカリッとした衣ではなく、卵をたっぷり使った「ふわふわ」の衣が特徴。これが甘酢をたっぷり吸い込みます。
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揚げたてをタレに潜らせる: 揚げた直後に甘酢に漬け込むことで、衣と肉が一体化します。
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独自の甘酢: 店ごとに醤油、砂糖、酢の配合が異なり、中には数十種類のスパイスを加えている店もあります。
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おもてなしの心: 延岡の人にとって、チキン南蛮は「ハレの日」の御馳走でもあります。どのお店も温かい接客で迎えてくれるはずです。
観光ガイドに載っている有名店だけでなく、路地裏にある小さな食堂や、地元の人しか行かないような居酒屋でも、驚くほど高いレベルのチキン南蛮に出会えます。「自分だけのお気に入り」を探して、路地を一本入ってみる。それこそが、延岡という街の楽しみ方です。
他の地域とは何が違う?延岡でしか味わえない「本場の空気感」
「宮崎市内のチキン南蛮と何が違うの?」と聞かれることがあります。確かに、宮崎県内全域で美味しいチキン南蛮は食べられます。しかし、延岡で食べるそれは、背景にある「物語の濃度」が違います。
延岡はかつて「工場の街」として栄えました。汗を流して働く人々にとって、酸味の効いた甘酢とボリュームのある鶏肉は、明日への活力源だったのです。まち歩きをしていると、煙突が見えたり、古い街並みが残っていたりと、当時の活気を感じさせる風景に出会います。
また、延岡の飲食店では、チキン南蛮が単なる「メインディッシュ」ではなく、街のアイデンティティとして扱われています。店主との会話の中で「うちは直ちゃん系だよ」「うちはおぐら寄りだね」といった会話が自然と飛び出すのも、聖地ならではの光景です。
ただ食べるだけでなく、その味が生まれた背景、そして今もなおその味を守り続ける人々の熱意に触れる。この体験こそが、ありきたりな旅行では得られない「新たな視点での発見」になるはずです。
アクセス方法(鉄道での行き方)
延岡のチキン南蛮を堪能するために、主要駅からの鉄道アクセスをご紹介します。
宮崎空港・宮崎駅からお越しの方
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JR日豊本線「特急ひゅうが」または「特急にちりん」 を利用。
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宮崎空港駅から:約1時間15分〜1時間30分
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宮崎駅から:約1時間〜1時間10分
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特急列車が1時間に1〜2本程度運行しており、快適にアクセス可能です。車窓から見える日向灘の絶景も楽しみのひとつです。
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大分方面からお越しの方
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JR日豊本線「特急にちりん」または「特急にちりんシーガイア」 を利用。
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大分駅から:約2時間〜2時間15分
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山あいを抜けるルートで、豊かな自然を感じながらの旅になります。
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延岡駅に到着したら
新しくなった延岡駅舎(エンクロス)は、図書スペースやカフェが併設された非常にお洒落な空間です。まずはここで一息つきながら、備え付けのまち歩きマップを手に入れましょう。
主要な名店(直ちゃん、おぐら大瀬店など)は、駅から徒歩またはタクシーで5分〜10分圏内に集まっています。お腹を空かせるために、延岡の風を感じながらゆっくりと歩いて向かうのが一番のオススメです。
