駐車場から伝説が始まった?「ザ・スズナリ」に刻まれた開拓の歴史
下北沢を「演劇の街」たらしめている最大の功労者、それが本多一夫氏です。その本多氏が、自身の「理想の劇場を作りたい」という情熱を最初に形にしたのが、1981年に誕生したザ・スズナリです。
驚くべきは、その出自です。もともとは「スズナリ横丁」というアパート兼飲食店街だった場所の、なんと2階の駐車場部分を改造して劇場が作られました。
-
劇場の特徴: 剥き出しの鉄骨、急勾配の客席、そして舞台と客席の近さ。スズナリには、現代のピカピカな劇場にはない「生々しい熱量」が充満しています。
-
歴史の重み: ここは、かつてのアングラ演劇や小劇場ブームを支えた伝説の劇団たちが、汗を流し、夢を語った場所。劇場の1階には今もレトロな飲食店街が残り、終演後に役者と観客が同じ空間で酒を酌み交わすような、下北沢特有の文化が今も息づいています。
ガイドブックに載る「お洒落なカフェの街」という側面だけでなく、こうした「泥臭い情熱」が街の土台にあることを知ると、下北沢の風景がまた違った色に見えてくるはずです。

小劇場の殿堂へ。本多劇場が変えた「下北沢」のステータス
スズナリの成功を経て、1982年に満を持して開場したのが本多劇場です。下北沢駅のすぐ目の前、スーパーマーケット(現在のマルシェ下北沢)の上に位置するこの劇場は、それまでの「小劇場=狭くて不便」というイメージを根底から覆しました。
-
劇場の特徴: 客席数約380席という「大きすぎず、小さすぎない」絶妙なサイズ感。どの席からも役者の表情がはっきりと見える設計は、演劇ファンから絶大な信頼を寄せられています。
-
特徴的なロビー: 劇場ロビーには、演劇関係の書籍やグッズが並ぶ売店、そして過去の上演作品のポスターが所狭しと並び、足を踏み入れた瞬間に「演劇の世界」へ没入させてくれます。
本多劇場ができたことで、下北沢は「若者の街」から「文化の発信地」へと昇華しました。著名な劇作家や人気俳優が当たり前のようにこのステージに立ち、それを見守る観客が街の飲食店を潤す。この循環こそが、下北沢を唯一無二のまち歩きスポットに育て上げたのです。

観劇の余韻を楽しむ。劇場周辺の路地裏散策の醍醐味
本多劇場やスズナリで心揺さぶられる作品に出会った後は、そのまま駅へ向かうのはもったいない。劇場の周辺には、役者たちが愛する老舗の喫茶店や、舞台のセットのような古着屋がひしめき合っています。
-
まち歩きのコツ: スズナリから本多劇場へと続く「茶沢通り」周辺の路地を、あえて地図を持たずに歩いてみてください。
-
新たな発見: 偶然見つけた小さなギャラリーや、演劇のポスターが壁一面に貼られたカレー店。そこには、40年以上前に本多一夫氏が夢見た「文化が混ざり合う街」の姿が今も鮮やかに残っています。
20代から50代まで、どの世代が訪れても、下北沢の劇場は「今、この瞬間」を生きる表現の力を見せつけてくれます。記事を読んだ後は、ぜひ公演スケジュールをチェックして、あなたの人生を少しだけ変える「一幕」に出会いに行ってください。
主要駅からの鉄道アクセス方法
下北沢の二大劇場、本多劇場とザ・スズナリへは、小田急線・京王井の頭線の「下北沢駅」が最寄りです。
| 出発地 | 利用路線 | 到着駅 | 劇場までの徒歩ルート |
| 新宿駅から | 小田急小田原線(急行) | 下北沢駅 | 乗車時間 約7〜10分。東口から本多劇場まで徒歩約1分。 |
| 渋谷駅から | 京王井の頭線(急行) | 下北沢駅 | 乗車時間 約3〜5分。中央口からスズナリまで徒歩約4〜5分。 |
| 吉祥寺駅から | 京王井の頭線(急行) | 下北沢駅 | 乗車時間 約12分。 |
現地での移動ポイント:
本多劇場は「下北沢駅東口」のすぐ目の前にあるビルの中にあります。ザ・スズナリは、本多劇場から「茶沢通り」方面(東方向)へ歩いて約3分の場所にあります。どちらの劇場も非常に近いため、昼公演と夜公演で「劇場のハシゴ」をするのも、下北沢通の楽しみ方です。
