尾張一宮駅ビル(一宮市)を歩こう

投稿者: | 2026年1月17日

建築デザイン:光と風を通す「都市の門」

2012年に完成した現在の駅ビルは、それまでの閉鎖的な駅舎のイメージを一新する、モダンで開放的なデザインが特徴です。

  • シースルー構造: 建物の中央部には巨大な吹き抜けがあり、ガラスカーテンウォールを多用することで、外光をたっぷりと取り込む設計になっています。

  • 木のぬくもり: 近代的な鉄骨とガラスの構造の中に、内装の随所に木材が使用されており、テキスタイル(繊維)の街として栄えた一宮らしい、柔らかさと温かみを感じさせるデザインです。

  • テキスタイルへのオマージュ: 外壁のデザインには、一宮の基幹産業である「繊維(毛織物)」をイメージしたパターンや質感が取り入れられており、地域の歴史を現代建築へ昇華させています。

まちづくりの核:シビックテラスと図書館

i-ビルが「優れた公共建築」として高く評価されている最大の理由は、商業施設以上に「市民のための空間」が充実している点です。

  • シビックテラス: 3階にある広大な半屋外空間(屋根付き広場)です。ここは、単なる通路ではなく、コンサートやマルシェ、展示会などが行われる「街の広場」として機能しています。この空間があることで、駅が「通過する場所」から「集まる場所」へと変化しました。

  • 一宮市立中央図書館: ビルの5階から7階を占めるこの図書館は、建築・インテリアデザインが非常に秀逸です。開放感あふれる読書スペースからは街を一望でき、市民の知的交流の拠点となっています。

尾州ビレッジ

一宮駅ビルのすぐ隣、高架下のデッドスペースを見事に再生させた「尾州ビレッジ(Bishu Village)」について解説します。ここは、一宮市の歴史的アイデンティティである「繊維産業(尾州ウール)」を軸に、デザイン、食、まちづくりが融合した「体験型商業施設」です。

コンセプト:繊維の街の「新しい物語」

2022年にオープンした尾州ビレッジは、一宮市とJR東海、そして地元企業がタッグを組んで誕生しました。

  • 尾州(びしゅう)とは: 愛知県一宮市を中心に、津島市、稲沢市、岐阜県羽島市などにまたがる日本最大の毛織物産地です。イギリスのハダースフィールド、イタリアのビエラと並び、**「世界三大毛織物産地」**の一つに数えられています。

  • まちづくりの意図: 高度な技術を持ちながら、一般消費者には見えにくかった「尾州ウール」の魅力を、駅のすぐそばでカジュアルに発信し、街のシビックプライド(誇り)を高める拠点として設計されました。

建築と空間デザイン:洗練された「ストリート型」空間

駅の高架下という、ともすれば閉鎖的になりがちな空間を、開放的なデザインで一変させています。

  • インダストリアルな美学: 高架のコンクリート柱をあえて活かしつつ、黒い鉄骨や木のぬくもりを組み合わせた「インダストリアル・モダン」な外観。夜には暖色のライティングが施され、街に温かな彩りを添えています。

  • 回遊性の設計: 複数の建物が並ぶ「ヴィレッジ(村)」形式をとっており、人々が路地を歩くように各店舗を巡ることができる、ヒューマンスケールな空間構成です。

ショップとグルメ:尾州を「着て、食べて、知る」

ここには、一宮ならではのこだわりが詰まったテナントが集まっています。

  • テキスタイル(アパレル): 世界的なハイブランドに生地を提供している地元の織物工場によるショップが入っています。最高品質のウール製品(マフラー、コート、小物など)に直接触れ、購入できるのは産地ならではの贅沢です。

  • 食のデザイン(グルメ): 一宮の豊かな農産物を活かしたカフェやレストランが並びます。特に、地元の食材を使ったこだわりのパン屋や、発酵食品をテーマにした店舗など、「素材の良さ」を活かしたメニューが多く、食通からも高く評価されています。

イベントと体験:開かれた「産地の窓口」

単にモノを売る場所ではなく、**「体験」**がデザインされているのが特徴です。

  • ワークショップ: 織機の体験や、端切れを活用したアップサイクル活動など、繊維を身近に感じるイベントが定期的に開催されます。

  • 交流の場: 駅ビル「i-ビル」のシビックテラスとも連動し、駅周辺を「ただの通過点」から「滞在して楽しむ目的地」へと変えています。

まちづくりの視点:中心市街地活性化のシンボル

一宮市は、かつて「ガチャ万(織機をガチャンと鳴らせば万札が儲かる)」と呼ばれたほど繊維産業で栄えましたが、時代の変化とともに街の活気が課題となっていました。

i-ビルの建設は、単なる駅の建て替えではなく、「中心市街地にもう一度、人の流れと誇りを取り戻す」という明確なまちづくり戦略に基づいています。駅ビル内に図書館や行政窓口を配置し、市民が日常的に訪れる仕掛けを作ることで、周辺の商店街(本町商店街など)への回遊性を生み出しています。

名古屋駅からのアクセス

一宮駅は、名古屋のベッドタウンとして圧倒的なアクセスの良さを誇ります。

  • JR(東海道本線): 特急・新快速・快速・普通、すべての列車が停車します。名古屋駅から最短11分

  • 名鉄(名古屋本線): ミュースカイ以外の特急・急行などが停車します。名鉄名古屋駅から約15分