火星カレー(池袋)無水調理とジビエとの融合で生まれたカレー

投稿者: | 2026年1月24日

池袋の地下に眠る「地球外」のカレー体験

池袋駅西口から徒歩数分。雑居ビルの地下へと続く階段の先に、その店はあります。 『火星カレー』。 そのインパクトの強い店名から、一見すると「出落ち」のネタ店かと思われがちですが、実態は全く異なります。ここは、「自分が美味しいと思うカレーが世の中になかったから作った」という、極めて純粋でストイックな動機から生まれた、合理性と偏愛が同居するカレーの聖地です。

実はこの店、伝説的なゲーム『ぼくのなつやすみ』シリーズの生みの親であるゲームデザイナー・綾部和氏がプロデュースしたことでも知られています。ゲーム制作における「世界観の構築」と「緻密なフラグ管理」が、一皿のカレーという宇宙にどのように落とし込まれているのか。その論点を紐解いていきます。

無水調理が生む「情報の密度」

まず、ベースとなるカレールーの構造から見ていきましょう。火星カレーの最大の特徴は、「ほぼ無水」で仕上げられた、情報の密度が極めて高いテクスチャーにあります。

  • 素材の凝縮: 大量の玉ねぎ、トマト、ニンニク、そして貝類やキノコといった「旨味の塊」を、水を使わずに数時間かけて煮込み、ペースト状になるまで濃縮しています。

  • スパイスの調和: 尖った辛さではなく、野菜の甘みの奥から複雑な香りが多層的に追いかけてくる設計です。一口ごとに異なるニュアンスが顔を出すその様は、まさに緻密に計算されたゲームのシナリオのようです。

  • 低脂質の設計: 濃厚な見た目に反して、油分を極限まで抑えています。「もたれない」という機能性は、リピート率(LTV)を高める重要な戦略的要素と言えるでしょう。

ジビエという名の「トッピング・マーケティング」

火星カレーを唯一無二にしているのは、その豊富な、かつ異端な肉のバリエーションです。

  • 鶏、豚、牛(定番): 炙られたチキンや柔らかい豚肩ロースなど、基本のクオリティが極めて高い。

  • 羊、鴨、馬、鹿(ジビエ): 特筆すべきはこれらのジビエ。特に「羊(ラム)」は地中海風に煮込まれ、臭みゼロで旨味だけが抽出されています。「鹿」は北海道産エゾシカを白ワインで煮込み、赤身の清涼感を活かしています。

  • カンガルー、ラクダ(希少): 時にはこうした極めて珍しい肉も並びます。

これらのトッピングは単なる「話題作り」ではありません。それぞれの肉質に合わせて煮込み方やスパイスの配合を変えており、ベースのルーとの「最適解」を個別に追求しています。顧客は「次は何に挑戦しようか」という、RPGのような攻略の楽しみを享受することになります。

最も合理的な選択肢は「羊カレー + 草トッピング」です。

  • 草(ほうれん草のバターソテー): この店において「草」と呼ばれるほうれん草は、単なる付け合わせではありません。バターのコクとほのかな塩気が、濃厚なルーをさらに立体的に引き立てる「必須デバイス」です。

  • 羊(ラム): 火星カレーのルーに最も共鳴するのが、ラムの持つ野性味ある脂です。

一口食べれば、まず野菜の甘みが広がり、次にラムの旨味が押し寄せ、最後にスパイスの余韻が残る。この三段構えの攻撃は、既存の「欧風カレー」や「インドカレー」の文脈では語れない、まさに火星独自の食体験です。

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