小松駅(小松市)周辺を歩こう

投稿者: | 2026年1月24日

小松駅周辺:産業遺産とモダニズムが交差する「石の都」の設計思想

小松駅に降り立つと、まず目を引くのは駅前に鎮座する巨大な超大型ダンプカーです。この光景こそが、小松という街のアイデンティティを雄弁に物語っています。小松駅から半径2キロ圏内は、日本の近代化を支えた重工業の足跡と、それ以前から続く「石」にまつわる豊かな文化が地層のように積み重なったエリアです。

まちづくりの観点で見れば、小松は「働く場所」と「文化を育む場所」が極めて近い、職住近接の理想形を追求してきた街と言えます。駅周辺の再開発においても、単に新しい建物を建てるのではなく、産業遺産をいかに都市のデザインに組み込むかという、高度なプレイスメイキングが行われています。

こまつの杜:企業城下町が提示する「産業の公共化」というデザイン

小松駅から徒歩1分、かつての小松製作所(コマツ)小松工場の跡地に広がるのが「こまつの杜」です。ここは、一企業の歴史を展示する場所を超え、市民や観光客に開放された「都市の庭」として機能しています。

建築的・デザイン的見どころは、世界最大級のダンプカー「930E」と超大型油圧ショベル「PC4000」の展示です。その圧倒的なスケール感は、機能性を追求した末にたどり着いた一種の「機能美」を体現しています。

また、園内に復元された旧本社ビル(わくわくコマツ館)は、昭和初期のモダニズム建築の香りを残しており、現代的な駅舎との対比が、この街が歩んできた産業史を視覚的に伝えています。企業が自らのルーツを都市の景観として開放するこの手法は、企業の社会的責任(CSR)を超えた、真の意味での「まちづくり」の好例です。

勧進帳の舞台「安宅の関」:歴史の余白を歩く

駅から西へ約2キロ、日本海の潮騒が聞こえる場所に「安宅の関(あたかのせき)」があります。歌舞伎の銘目『勧進帳』の舞台として知られるこの地は、源義経と武蔵坊弁慶が、関守・富樫左衛門の機転と情けによって危機を脱したという、日本人の精神性に深く関わる場所です。

デザインの視点で見れば、安宅住吉神社の境内に広がる松林と、そこに配置された義経・弁慶・富樫の銅像は、物語の緊張感を空間全体で演出しています。建築的には、厳しい日本海の海風に耐えるための工夫が見られる古い町並みが、この地の厳しい気候と共生してきた人々の知恵を物語っています。

小松のグルメ:北前船が運んだ食文化と「塩焼きそば」の合理性

小松の食文化は、日本海を通じた物流の拠点であった歴史と、高度経済成長期を支えた労働者のニーズが融合して生まれました。

小松うどん

松尾芭蕉も称賛したと伝えられる「小松うどん」は、細めで柔らかい麺と、うるめ、さば、昆布などから取った透き通った出汁が特徴です。これは、加賀藩主への献上品としての「洗練」と、日常食としての「親しみやすさ」が共存した、完成度の高いプロダクトです。

塩焼きそば

一方で、B級グルメとして愛される「塩焼きそば」は、戦後、小松の職人たちの胃袋を満たすために考案されました。太麺にたっぷりの野菜、そしてシンプルな塩味。この「潔い構成」は、効率と満足度を追求する工業都市ならではの合理性を感じさせます。

ゆかりがある企業の紹介:世界の「KOMATSU」とその戦略

小松を象徴する企業、株式会社小松製作所(コマツ)について、その収益モデルと経営戦略の観点から深掘りします。

独自の収益モデル:KOMTRAX(コムトラックス)

コマツは単に建設機械を売る企業ではありません。世界中の建機にGPSと通信機能を搭載し、稼働状況を遠隔監視する「KOMTRAX」を開発しました。

  • 価値の転換: 「モノ売り」から、稼働率向上や盗難防止という「ソリューション売り」への転換。

  • データドリブン: 稼働データから景気動向を予測し、生産計画を最適化する。 これは、製造業がデジタル技術を取り入れ、中長期的な成長を確実にしたDX(デジタルトランスフォーメーション)の先駆事例です。

現場のデジタル化:スマートコンストラクション

人手不足という社会課題に対し、ドローンやICT建機を活用して、施工現場全体の「見える化」と自動化を推進しています。小松市の「こまつの杜」で行われている子供向けプログラムにも、この最先端の技術思想が組み込まれており、次世代の「担い手」を育てるという、極めて長期的な視点での投資が行われています。