「熊本城は、天守閣を見て終わりだと思っていませんか?」
ガイドブックに載っているような、壮麗な天守閣の写真を撮るだけではもったいない。熊本城の本当の面白さは、築城の名手・加藤清正が仕掛けた「難攻不落の知略」と、2016年の熊本地震から今なお続く「不屈の復興」のドラマにあります。
2026年、熊本地震から10年という節目を迎え、熊本城は単なる歴史的建造物から、現代の技術と情熱が結集した「進化する城」へと姿を変えています。今回は、一度訪れたことがある方も、初めての方も、新たな視点で「熊本城のまち歩き」を楽しめる深い魅力をご紹介します。
加藤清正が築いた「戦う城」としての特徴と歴史の深層
熊本城の歴史は、1607年(慶長12年)、戦国時代の名将・加藤清正によって築かれたことから始まります。別名「銀杏城(ぎんなんじょう)」とも呼ばれるこの城には、実戦を想定した驚くべき工夫が随所に散りばめられています。
まず注目してほしいのが、熊本城の最大の特徴である「武者返し(むしゃがえし)」と呼ばれる石垣です。下部は緩やかですが、上に行くほど垂直に切り立つこの曲線美は、単なるデザインではありません。実際に歩いてみると、その威圧感に驚かされるはずです。忍び返しとしての機能はもちろん、最新の調査では、地盤の安定性を高める構造的な合理性も証明されています。
また、城内には多くの銀杏の木が植えられ、井戸も120箇所以上掘られました。これは籠城戦(ろうじょうせん)に備えた食料と水の確保のため。清正の「生き残るための知恵」が、現代の防災意識にも通じる深い視点を与えてくれます。

2026年現在の地震の影響と、今しか見られない復興状況
2016年(平成28年)の熊本地震は、熊本城に甚大な被害をもたらしました。石垣は約3割が崩落・膨らみが生じ、多くの重要文化財が損壊しました。しかし、ここからが熊本城の真骨頂です。
2021年には天守閣が完全復旧し、内部の展示も最新のデジタル技術を駆使したものへと一新されました。現在は、重要文化財である「宇土櫓(うとやぐら)」の解体修理や、膨大な数の石垣を「一本一本元通りに積み直す」途方もない作業が進められています。
特に見逃せないのが「特別見学通路」です。地上約6メートルの高さから、復興作業の様子を間近に観察できます。崩れた石垣のひとつひとつに番号が振られ、パズルのように組み合わされていく様子は、まさに現代の築城現場。完成した姿を見るだけでは分からない「城が造られるプロセス」を体験できるのは、今この時期だけの特権です。
視点が変わる「まち歩き」のすすめ:城下町と城のつながり
熊本城を満喫した後は、ぜひ周辺の城下町へ足を伸ばして「まち歩き」を楽しんでください。城下町としての区割りや、かつての堀の跡が現代の道路や水路として今も息づいています。
おすすめは、熊本城の南側に位置する「桜の馬場 城彩苑」から、レトロな路面電車が走る「上通・下通アーケード」方面への散策です。清正が治水事業で整備した坪井川(つぼいがわ)沿いを歩くと、城を防御するための地形の起伏を肌で感じることができます。
また、城内の「二の丸広場」からは、巨大な石垣越しにそびえる天守閣の全景を望むことができます。ここから見る夕暮れ時のシルエットは、復興への希望を感じさせる、格別の美しさです。歴史を「点」ではなく、街全体の「線」として捉えることで、あなたの旅はより豊かで発見に満ちたものになるでしょう。
アクセス
熊本城への移動は、熊本の街のシンボルである「路面電車」を利用するのが最も情緒があり、便利です。
鉄道・路面電車でのアクセス方法
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JR熊本駅から
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JR熊本駅・白川口(東口)を出てすぐの「熊本駅前」電停へ。
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熊本市電 A系統(健軍町行き)に乗車します(約15分〜20分)。
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「熊本城・市役所前」電停、または「花畑町(はなばたちょう)」電停で下車。
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下車後、徒歩約5分〜10分で城内入口(桜の馬場 城彩苑など)に到着します。
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JR上熊本駅から
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「上熊本駅前」電停から熊本市電 B系統(健軍町行き)に乗車。
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「熊本城・市役所前」電停で下車(約15分)。
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編集者のワンポイントアドバイス 熊本市電は一律料金(大人200円)で、各種ICカードやタッチ決済も利用可能です。1日に何度も乗り降りしてまち歩きを楽しむなら、スマートフォンのアプリで購入できる「市電1日乗車券」が大変お得ですよ。
今の熊本城でしか味わえない、歴史と未来が交差する瞬間をぜひ体感しに行きませんか?次はあなたが、その足で「不屈の城」の新たな物語を見つける番です。
