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【川崎】小俣博司(オープン川崎/ Code for Kawasaki)

オープンデータを活用し川崎や福島県、福井県などで活動の場を広げている小俣さん。自治体や地域コミュニティとともに生活に役立つAPPなどを開発。様々な活動について語っていただきました。

プロフィール

小俣 博司(おまた ひろし)

1963年生まれ. 日本工学院専門学校メカトロニクス科を卒業. NC制御, 組み込み系ソフトウェア, デジタル信号処理からエンタープライズサービスまで長年にわたり幅広くソフトウェア開発を経験. 福井県鯖江市のオープンデータの当初の取組を支援し, その後 コードフォージャパン(Code for Japan)のフェローとして福島県浪江町役場に勤務しAndroidタブレット事業に従事する. 現在は東京大学空間情報科学研究センター 特任研究員として地理空間情報や都市情報の研究に従事しながら, シビックテックやオープンデータ/オープンガバメントの普及に向けて精力的に活動している. オープン川崎/Code for Kawasaki 主宰, アーバンデータチャレンジ事務局なども務める.

東日本大地震で人生が変わる

現在は、東京大学空間情報科学研究センターに在籍しながらシビックテックジャパン(CIVIC TECH JAPAN)コードフォージャパン(Code for Japan)、東北TECH道場  郡山道場、オープン川崎などの活動をしている。復興庁からの派遣で臨時職員として浪江町役場で災害支援もしていた。活動の幅広さに圧倒されそうだ。分かりやすく説明するとIT技術を使って行政や地域に役立つ情報を提供する仕事。

小俣さんは、川崎市で生まれ育ち,両親が営んでいた町工場を継いだ。しかし円高の影響で国内の工場がどんどん海外にシフトしていき、仕事がなくなっていく。将来が不安になり,働きながら専門学校でソフトウェアを学び,その後ソフトウェア関係の仕事を始めたそうだ。会社勤めや会社起業、フリーランスでソフトウェア開発の仕事を長年やってきた。

2011年の東日本大地震をきっかけに人生が大きく変わる。震災で宮城県東松島市にあった奥さんの実家が被災してしまう。小俣さん自身も災害支援で現地に飛び、土砂の片付けなどを始める。そこでHOT(Humanitarian OpenStreetMap Team)という人道支援チームに出会う。彼らはオープンストリートマップを使って自然災害、人的災害が発生した時に、最新の被災地の地図を作ることで、支援物資や救助活動がしやすいように活動している。

オープンストリートマップ(OpenStreetMap、OSM)は自由に利用でき、なおかつ編集機能のある世界地図を作る共同作業プロジェクトである。GPS機能を持った携帯端末、空中写真やほかの無料機械からのデータをもとに作られていくのが基本だが、編集ツール上で道1本から手入力での追加も可能である。登録したユーザーであれば、GPSのログファイルをアップロードしたり、ベクトルデータをエディタで修正することができる。

引用:wikipedia

 

オープンデータで誰かのためになることを

災害地では通常の地図のように道路が無くなっていたり、土砂で埋もれたり、地震で地形が変わったり、家がなくなっていたりしている。そのため最新の地図データがないと支援物資が被災地に届かないのだ。災害情報をMAPにして、情報を発信する。時系列のずれや災害前の地図情報ではなく、災害後の地図データを作るボランティア活動を小俣さんも始める。こうした活動はのちのコードフォージャパンの活動になっていったそうだ。

市民参加型の行政サービスのイノベーションを実現するために、ウェブ技術者などを地方自治体にフェローとして派遣するプログラム、コードフォーアメリカ(Code for America)という非営利団体がある。日本でも同様の取り組みが必要なのではないかという問題意識から、関治之さんを中心とする有志のメンバーにより、「コードフォージャパン」が2013年に立ち上がった。

Code forを語る上で外せないのが、福井県鯖江市で活動している「コードフォーサバエ(Code for SABAE)」。鯖江市は「データシティ鯖江」をキャッチフレーズに、鯖江市のオープンデータを活用した多数のアプリを開発していた。小俣さんはそうした取り組みを地域で繋げられるのではないかと考えた。

自治体が無料で情報データを提供してくれたら、無料でオープンデータ活用のアプリを作成する。無報酬のボランティア活動ではあるが、エンジニアたちは自分たちが仕事を通じて誰かに喜んでもらえること、評価されることを1番の喜びに感じるそうだ。世の中のためになること、誰かに認められることが嬉しいと。

オープン川崎の誕生

小俣さんは、福井県鯖江での活動を川崎でもやろうと思い、川崎市のオープンデータを使った活動、「オープン川崎」が2013年にスタートした。活動方針として川崎ならではのコミュニティづくり、次世代の人材育成、地域を面白く、地域課題解決と新たな事業創造を行うこととした。生活に身近な事例として、川崎市のゴミ出し分別の曜日を検索できるアプリ『かわさき5374.jp』や、保育園マップ『 かわさき保育園マップ 』などを開発した。

富山や裾野での挑戦

2018年、富山県南砺市(なんとし)で公共施設マネジメントに取り組んだ。南砺市は合併してできた新しい市だが、合併したことにより公共施設が多い自治体であった。それにより維持管理費が増大し、財政をひっ迫してしまう結果になった。このままでは富良野市のように行政破綻してしまう。しかし単純に小学校、病院を減らすという発想では地域住民の方の理解を得られない。

そこで小俣さんが在籍する東京大学の研究室では、「本気で市民を巻き込む」市民協働型公共施設管理システム「南砺市公共施設マネジメントシステム」を開発。システム導入によるメリット、収入と経費のバランス、既存システムとの統合による負担軽減、入力の簡素化、誰でも気軽に入力・利用できる親和性、市民ニーズに対応した情報提供などの意見交換をし、南砺市のオープンデータや社会インフラに関する情報を可視化するデジタル南砺になっていく。

最近は、トヨタのウーブンシティで注目が集まる静岡県裾野市でも、人を中心にどう都市ができていくか、情報を見える化する取り組みも行っている。国や行政がやってたことを、どう伝えていくか。財政が逼迫し自治体が自由に使えるお金がなくなってきてる。そういった情報を可視化し、みんなに考えて欲しい。昭和のインフラ(道路・トンネル・水道)を延命処置するのか作り替えるのか、保守管理の限界が来ている。共助をやっていかないといけないと思う。

これからどうしていきたい

みんなには地域について考えて欲しい。そして考える力を養ってほしい。行政サービスは無料だったが、それが当たり前に出来なくなってきてる。いまは川崎市も人口が多いが、将来的には川崎市がなくなる可能性もある。ごみ・道路・上下水道は当たり前ではない。そのためにどうするか。インターネットが発達し情報の溢れるこの時代に、これからの地域をどう作っていくのか、そしてITやデジタル技術とどうやって付き合っていくのかを考えて欲しい。

パッションポイント

地図

公式サイト、出版物など

オープン川崎

シビックテック: ICTを使って地域課題を自分たちで解決する (勁草書房・2018年・稲継裕昭ほか共著)

チケット(私のできること、得意なこと)

・デジタルの地図を作り方を教えられます。
・シビックテックで使っているツールの紹介やプログラミングを教えられます。

※チケットをお願いする時、『ソーシャルタウンガイド』を見たと連絡するとスムーズです。
※コンタクトはSNSのメッセンジャーから連絡をお願いします。

お気に入りの場所(ホーム)

多摩川丸子橋
神奈川県川崎市中原区

お気に入りの場所(アウェイ)

利賀村
富山県南砺市
観光サイト

浪江町
福島県双葉郡
観光サイト

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つながり

手塚純子(machimin)

久門 易(写真道場)

※つながりは、紹介したキーパーソンとのつながり、または今後インタビュー予定の方です。

取材後記

小俣さんとの出会いは、東急新丸子駅前にあったコワーキングスペースYou +でのイベント自治体のオープンデータ活用という取組みは新鮮で、当時知らない領域だったので面白いことをされてるなと思ってました。一度カフェで2人話した時には川崎市の情報をローカルWikiを作りたいと話されていたこともありました。その頃はあまり興味を抱かなかったのですが、後に私自身がウィキペディアンになろうとは考えもしなかったです。(野田)

インタビュー・野田国広(編集部)
グリーンドリンクス川崎のオーガナイザーをはじめ、かわさき新聞などのWEBメディア運営、シェアオフィスのコミュニティマネージャーなどを勤める。福岡市出身、川崎市在住。
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