商業デベロッパーで商業施設の企画開発や地元である茨城県守谷市での活動を通じながら、各地のまちづくりに取り組む永井大輔さんにインタビュー。
永井大輔(ながい だいすけ)
一般社団法人P-players理事
イオンタウン株式会社 新業態推進本部 新業態推進部/地域連携まちづくり委員
特定非営利活動法人 自治経営 関東甲信越アライアンス副代表
1983年 北海道札幌市生まれ/茨城県守谷市在住。2006年、筑波大学工学システム学類を卒業、2011年、首都大学東京建築都市コースを卒業後、株式会社NTTファシリティーズ中央に入社。2017年7月、イオンタウン株式会社に入社し、商業施設の企画開発に従事。2018年10月、都市経営プロフェッショナルスクール公民連携スタートアップコース(1期)修了。2018年11月、一般社団法人P-playersに参画。2019年5月、「“住みよいまち”から“自ら暮らしを楽しむまち”へ」をコンセプトとした定期マーケット「and PARK Moriya」を守谷市で始動。現在、イオンタウン株式会社新業態推進本部に従事しながら、地域連携まちづくり委員(2020年4月〜)を兼務している。
北海道から筑波大学で建築を学びたいと思い関東へやってきた永井さん。しかし大学4年間はスポーツや飲み会ばかりをしていたという。大学を出て一度は札幌に帰り、設計事務所でアルバイトしながら、夜は塾講師をしたり、実家に居候していたこともあって、お金が貯まり日本一周の旅をしたりしていた。勢いで横浜にある設計事務所に押しかけ、半年間泊まり込みで働かせてもらったが、修行不足に気づき、もう一度真面目に建築を学びなおそうと、首都大学東京に編入した。2回目の大学は真面目に学び、コンペ作が佳作に選ばれたり、卒業設計ではかなり気合を入れて、知人の夢でもあったワイナリーを設計したが、いざ発表という当日寝坊してしまい、発表できないまま終わる。結局作品は一部の先生には好評だったこともあって、新宿のOZONEで展示したこともあるそうだ。
その後は、NTTファシリティーズに就職して6年半ほど勤務する。機械が入るための建物ばかりを設計するうちに、今度は「建築よりも前に考えるべきこと」があるのではないかと思い始める。まちづくりをしたい。そう考えいくつかの会社を探し出す。そのうちイオンタウンが興味を示してくれ転職が決まった。当時の副社長に「変わった経歴の君に、新しいイオンタウンを考えてほしい」と誘われた。しかし入社後の現実は、提案しても却下されるばかりで、新しいことができるはずもなく、たまたま出会った「都市経営プロフェッショナルスクール」に通うことにした。それがその後の大きな転機になる。開校式でのプレゼンテーションでは、講師に酷評されるも、本気で学び、全国の仲間との合宿を終え、各地に戻り、そこの経営課題を見つけて取り組んでいくということに期待が膨らんだ。スクールに通う傍ら、自分のまちで活動を起こすべく、守谷市で活動する一般社団法人P-playersに参画した。
2015年1月、結婚を機に、茨城県守谷市に引っ越した。当時のアパートの近所であるイオンタウン守谷にお子さんを連れて買い物に行くなかで、目に留ったのは、イオンタウン守谷の一角にあるヒマラヤ杉公園だった。ここで、and PARK Moriyaを始めるきっかけとなる。その公園は手入れさず草むらの状態。しかし永井さんには宝のように見えた。2018年当時、守谷市は住み良いまちランキングで上位。しかし永井さんにはその実感がなく、誰かに決められた住みよさ日本一ではなく、自分自身が守谷市に住む豊かさを実感できる、そんな暮らしを自分たちの手で創っていくことはできないかと考え始めた。
ただ寝るために帰るまちではなく、自ら暮らしを楽しめるまち。面白い人がいる。そんなことを地域の人々に感じてもらえるような、出会いの場を創ろうとヒマラヤ杉公園で定期マーケットを開催するというアイデアを考え、一般社団法人P-playersのメンバーに話を持ちかけた。(本社には内緒で)イオンタウン守谷の責任者に直談判し、了解をもらった。出店は自分たちが素敵だなと思うお店の人に直接会いに行き、口説いた。出店舗数は15〜20店。初回は約1,200人のお客さんが来てくれた。小さなマーケットイベントだが、守谷のこの先や、イオンと地域との関係性について、永井さんにとっては大きな手ごたえを感じた。
千葉県佐倉市にユーカリが丘という街がある。1971年に不動産会社の山万が開発を進め80年代にかけて分譲開発されたニュータウンだ。東京駅までは50分弱。世帯数7,371戸、人口18,312人(2016年11月末現在)。ユーカリが丘の名称は山万が「殺菌作用や空気の清浄作用があり、環境にやさしい」というユーカリを自然環境と調和する都市の象徴として名付けたそうだ。駅前や公園、ニュータウン内にもユーカリの木が植えてある。このまちにもイオンタウンが出店している。
しかし周囲には大型商業施設もあり、お客さんの奪い合いの状況で大きい商業施設を作ったものの、テナントが埋まらず空き店舗が目立った。都市経営プロフェッショナルスクールで出会った佐倉市役所の仲間が参画する「佐倉家守舎」に相談し、地域で活躍する岡島由夏さんを紹介された。そこでシェアアトリエを始めたいという話になり2020年9月にオープンする。会社の役員会でそのことを報告すると社内のメンバーは呆気にとられていたそうだが、外部監査の方が素晴らしい事例だと評価してくれた。何よりも、自分や周囲の仲間、この場にかかわる運営メンバーの成長や変化が嬉しい。この9月でちょうど1周年を迎え、トークイベントで振り返ったそうだ。自分自身がやるのではなく、地域の誰かを応援しながら場づくりをしていくという経験が、永井さんにとっても新たな成長につながったという。
ユーカリが丘店での実績をふまえて、今度は埼玉県ふじみ野市で新店開発に際して、コミュニティスペースの企画を依頼される。地域との繋がりを生み出し、テナントにも新たな価値を提供するというミッションが掲げられた。買い物だけでなく、誰かに会いにいく施設をと、横浜みなとみらいの『BUKATSUDO』などを手掛けたリビタにも協力を仰ぎ、キッチン、レンタルスペース、ワークスペースを併設した、まちのコミュニケーションスペース「cotokoto」を2020年11月にオープンした。ものづくりイベントや近隣の大学によるオンライン授業配信、パート社員が講師になってイベントを企画したりなど、様々な取り組みが始まっている。地域の利用者同士のコミュニティも育まれつつあり、11月には利用者主体で企画する「文化祭」の開催も計画されている。新たなSCでゼロからつくるコミュニティ、というものに四苦八苦しながらも、新たな広がりを見せてきている。
さらに、千葉県旭市では、国保旭中央病院から道の駅「季楽里あさひ」までの一体エリアで、イオンタウンと大和ハウス工業株式会社、阿部建設株式会社、株式会社楽天堂が、地方創生を謳い官民連携で推進する「生涯活躍のまち・みらいあさひ」を手がけることになった。2022年春開業の商業施設内には、旭市が設置する公の施設「多世代交流施設おひさまテラス」があり、イオンタウンが指定管理者として、この運営を担うこととなっている。永井さんが“公私混合”したこれまでの活動で培ったネットワークを活かし、各地で活躍する仲間や地域の団体・経営者の協力を得ながら、地域課題解決とイオンタウンとしてのミッションの両方を実現する「公民連携事業」を推進していく。
会社では、自分以外に地域連携/公民連携を推進できる人材がいないので、若手社員と一緒になって新たなプロジェクトに取組み、ともに成長しながら次世代につなぎたい。
地元守谷では、and PARK Moriya再開の目途はたっていないが、イベントに限らず、改めて仕切りなおして地元のまちづくりに取り組んでいきたい。
お酒(基本ビール/最近はクラフトジン) 、”公私混合”した今の仕事
・守谷と旭のおもろい人と美味しいお店、紹介します。 |
※チケットをお願いする時、『ソーシャルタウンガイド』を見たと連絡するとスムーズです。
※コンタクトはSNSのメッセンジャーから連絡をお願いします。
リノベーションした自宅(書斎)
茨城県守谷市
noWaveと飯岡海岸
千葉県旭市横根1353−36
藻岩山
北海道札幌市
写真:札幌市観光協会
・五十嵐慎一郎 (株式会社大人)
・小林めぐみ (CLUB HUBlic)
・岡島由夏(ハンドメイド作家に会える店ふわいえ)
・伊藤奈未(Social Green Projects in NAGAREAYAMA)
・赤座剛(村長)
・片平塁(楽天堂)
※つながりは、紹介したキーパーソンとのつながり、または今後インタビュー予定の方です。
岡島由夏さんからの紹介でインタビュー。全国近くに数多くの人材を輩出している都市経営プロフェッショナルスクールの一期生で、イオングループ内では唯一無二のまちづくりの第一人者として新しいことにチャレンジされてる永井さん。なかなか流通系の企業でこうした取り組みは事例も少ないので、これからも数多く手掛けて行かれるのを期待しています。(野田)
インタビュー・野田国広(編集部) グリーンドリンクス川崎のオーガナイザーをはじめ、かわさき新聞などのWEBメディア運営、シェアオフィスのコミュニティマネージャーなどを勤める。福岡市出身、川崎市在住。野田国広の記事一覧 |