建設コンサルタントで環境や防災に従事し、独立後は減災ファシリテーターとして活動。減災マップを考案し全国でワークショップを行う鈴木光さんにインタビュー。
一般社団法人減災ラボ代表理事、防災図上訓練指導員、工学院大学客員研究員。
横浜生まれ。
日本大学農獣医学部では造園・緑地計画、横浜国立大学院では植物生態学を学ぶ。調査のため三浦半島の海岸を徒歩で踏破し、植物と人間のバランスについて思考を廻らす。卒業後、建設コンサルタントで9年間、環境と防災分野に従事し、主に砂防計画、自治体の地域防災計画の策定や図上訓練支援、企業のBCP策定等の業務に携わる。退職後、フリーランスの減災ファシリーテーターとして活動し、2015年に減災アトリエを設立。全国各地の自治体職員、地域住民、学校、企業等に、主に地図を使った防災ワークショップや防災講座、講演会、訓練企画等を実施。2013年にクリアファイルを使い自分だけの減災マップを楽しみながら地域の災害リスクの理解を深める減災教育プログラム「my減災マップ®」を考案。
横浜市で生まれ育ち、高校時代は保健室の先生になりたいと思っていたが、造園や庭園やランドスケープにも興味があったので、大学は、日本大学で造園や緑地計画を専攻、大学院は横浜国立大学院に進み植物生態学を学んだ。海が好きだったこともあり、水辺、海岸線などのフィールドワークに没頭する。後から思えばその頃の調査研究がいまの防災の活動にも通じている。
その頃に阪神・淡路大震災が起きたが、当時は防災の意識はあまりなく、「遠くでおきた大変な災害」という感覚であった。関心は、公園の緑やその土地本来の植物についてであり、海、山、川などいろいろな環境のフィールドワークを行なった。特に、海岸と陸上の汽水域(きすいいき)の植物や生物についてよく調べた。調査のために三浦半島の海岸を徒歩で踏破したこともあるが、その中で干潟など壊れて失っていくもの、残っている生物など調べる日々を過ごした。
新卒で入った会社では、環境に関する部署に配属した。その後しばらくして防災部に異動。ようやく防災の仕事に出会うことになる。ちょうどその頃に中越地震が発生し、机上での防災研究ではなく、はじめて被災地域の現場に足を運んだ。目にする光景はショッキングで、そこで事前に防げなかったのかという感覚が芽生えたという。仕事が自分ごとになった瞬間でもあった。
2011年の東日本大震災がおきる1年ほど前にコンサル会社を退職して、のんびりとしていた頃に震災が起きた。ボランティアとして陸前高田や大船渡の被災地に入り、それまでの経験を元に防災に関する取り組みを行なった。徐々に個人で相談を受けるようになり、2015年に減災アトリエを設立した。その後も熊本地震など各地の課題や困りごとも増えていき、防災に関する仕事が中心になっていった。そうした活動を通じて出会った仲間と一般社団法人減災ラボを設立。それまで防災専門で仕事をしてきたが、防災の専門家ではないデザイナーなど違う職種の人と防災について取り組み始めた。
コンサル時代にDIG(災害想像力ゲームの略)に出会い、仕事や防災図上訓練指導員として、各地で実践していた。その効果を強く感じながらも、地図が大きくて持ち帰ることができないため、せっかく参加者が関心を持ってもらっても、その場で終わってしまうことを残念に感じていた。そこでDIGの思想を活かしつつ、自宅に持ち帰れるようにサイズややり方を考えたのが「my減災マップ」の誕生のきっかけだった。A3サイズのクリアファイルを使って、自分だけの減災マップを作成し、地域の災害リスクを感じてもらう仕掛けだ。
行政が発行しているハザードマップを見ても、なかなか自分ごとになりにくい。自分がどういう場所に住んでいるか。「正しく敵を知る」という言葉があるように、自分の地域の土砂災害図、浸水図面などと照らし合わせて実感する。東日本大震災後に、津波から避難された100人ほどの方にインタビューした際、かつて家にあった場所に立って、自分が海の近くに住んでいたと気づいたと話してくれた人がいた。周囲に家などが立ち並んでいると、海までの距離が分かりにくかったのだ。住んでる地域で自分がどんな場所に住んでいるのか、地域の災害リスクを知ることが大事だと語る。
さらにどうしたら楽しく、自分の地域のことを知ることに^向き合えるか考えた。クリアファイルに災害マップを入れ替えることで見やすく、自分自身で作るからこその面白さ。学校の授業で子どもたちに実際に作ってもらい、それを自宅に持ち帰ってもらうと両親もより関心持って見てくれた。この成果は教育現場に限らず行政機関も大きく評価をしているそうだ。マップの作成は約2時間ほどで、必要なものはクリアファイル(A3ポケット付き)、油性マジック、地図のみ。現在はマイスター制度を導入し、普及活動を行なっている。
防災、減災という言葉がなくなったらいいと思う。文化のように日頃やってたことが防災につながっていくといいと思う。子どもが大人になった時、引っ越す時に、ハザードマップを調べたり、大人になって子どもにも伝えてくれたら嬉しい。
アルトサックス
・がんばらない減災のコツ教えます。 |
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大倉山記念館と梅林
神奈川県横浜市港北区大倉山2丁目10−1 港北 横浜市大倉山記念館
オランダ
・茂木隆宏(NOGAN)
・上島洋(防災ジオラマ推進ネットワーク)
・細谷真紀子(減災Days)
※つながりは、紹介したキーパーソンとのつながり、または今後インタビュー予定の方です。
茂木さんからの紹介でインタビュー。クリアファ入りを使って自分の住む街のハザードマップと照らし合わせて、どんな場所に住んでるのかを知る。とても良い取り組みだと思いました。自分も作成してみます。(野田)
インタビュー・野田国広(編集部) グリーンドリンクス川崎のオーガナイザーをはじめ、かわさき新聞などのWEBメディア運営、シェアオフィスのコミュニティマネージャーなどを勤める。福岡市出身、川崎市在住。野田国広の記事一覧 |