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【宮城】小山裕隆(コヤマ菓子店)

気仙沼の寅さんこと、明治19年創業のコヤマ菓子店5代目としてお菓子と観光の両輪で地元気仙沼を盛り上げる小山裕隆さんにインタビュー。

プロフィール

1977年宮城県気仙沼市生まれ、東京工芸大学卒業、コヤマ菓子店5代目

気楽会を立ち上げ、地元の観光案内

出生は母親の地元東京都で、幼少期からずっと宮城県気仙沼市で育ってきた。大学進学とともに上京して、再学卒業後の2年間は東京で働き、その後気仙沼へ戻っていく。「気仙沼をもっと楽しもう!気仙沼をもっと楽しくしよう!」というコンセプトで活動する気楽会をつくった。きっかけは「気仙沼は田舎だから何もないよね、つまんないよね」という若者が多かったこと。週末に東京や仙台のどこどこに行ってきた!いいなぁ俺もいきたい!と、それが楽しみのスタンダードだったが、それだと悲しすぎる。気仙沼に娯楽もエンタメもないなら、自分たちで創ればいい、それとまちづくりという方向で、そこでの繋がり作りや成功の共有を楽しみにすればいい、とスタートした。

また、2006年にJR南気仙沼駅のキヨスクの撤退に伴って、その跡に「こちら!気楽会観光案内課」というボランティアの観光案内所も作った。メンバーは気仙沼に住む昭和50年代生まれの5人で「気仙沼を元気にしていこう!」という意義が込められている。業種もバラバラだったが仕事以外でも地域で過ごし時間を作っていこうと観光案内を始めた。現地の魅力的な「人」を巡る、まちあるきツアーを開催している。

当時は観光なんてお金にならないとも言われていた。街には特に観光標識もなく、それでも気仙沼に来てくれる観光客をおもてなしし、若者が率先して来訪者を心地よく応対しようと始めて行った。やがて地元の事業者も加わり、次第に観光意識が高まって行った。小山さんは観光意識の醸成を目指したと語り、温泉街のように駅を出たらワクワクするような、雰囲気づくりをして、町中でおもてなしが当たり前のようにしたいと語った。

2011年東日本大震災が発生

2011年3月11日。東日本大震災が発生し、一瞬で気仙沼の街が流失してしまう。震災当時の小山さんはビルの3階にある工場で働いていて、すぐに河北新報ビルに避難をした。そこから目にした光景は店舗や自宅が流されていく様子をただ見ていることしか出来なかった。ビデオカメラを回し、その光景すべてをYoutubeにて公開している。何とも言いがたい自然の恐ろしさを感じた。建物と建物がぶつかり合い、聞いたこともないような音を町中に轟かせながら、真っ黒な濁流に飲み込まれて行く。夜は火災が起きて海が燃えてる様子もビデオに残っている。

小山さんは店の再建と気仙沼の復興を人生を賭けていくと強く決意した。ゼロからのスタートとなり、父の知り合いの工場を夜間に借りて、親子でカステラを作ってネット販売から始めた。親戚をはじめ多くの人からの支援もあり、震災から5ヶ月後にようやく菓子店を再開。再建に向けて日々奮闘していた時、震災から1年後に父に癌が見つかり闘病の末、2013年1月に61歳で亡くなる。

5代目店主として再建

父が亡くなって以降、経営に行き詰まり赤字に転落。菓子作りもまだ半人前だったため失敗の連続だった。父の友人や同業者の方に作り方やアドバイスをもらいながら努力を重ねた。今度は店舗再建のための用地の確保が難航した。むかし店舗があった場所は災害危険区域で建てれず、他の場所を探すもなかなか見つからなかった。震災から6年が経過して、市街地の復旧が進み、補助金の期限も迫る中、ようやく南気仙沼地区の災害危険区域の解除となり、元の場所での再建が可能となる。そして8年8ヶ月後に新店舗を元の場所に再建した。

新店舗は、店舗部分と工場部分の2つに分かれ、ケーキを割ったような外観。「はまぐりもなかくっきー」をイメージしてデザインしたものだそうだ。店舗2階にはイートインスペース「珈琲山荘」もあり、名物のバナナジュースも提供している。またマスコットキャラクター「うみねっこー」も人気でTシャツも販売と同時に100枚も売れた日もあるという。「うみねっこー」の名前は、サンドウィッチマンの富澤さんに命名してもらったそうだ。

菓子と観光の融合

2019年に気仙沼大島大橋が完成。2021年3月、三陸沿岸道路の気仙沼港ICから、浦島大島ICをつなぐ「気仙沼湾横断橋」が開通した。宮城県内で「復興道路」として整備が進められていた延長約126kmが全区間開通したことになる。またNHKドラマ『おかえりモネ』では気仙沼市大島を舞台に描かれ、観光への期待も高まった。小山さんは震災後はお菓子の事業をメインに頑張ってきたが、今後は観光との融合を目指して新しい事業にも挑戦。観光サイトを準備するほか、移動式観光案内所の「うみねっこー号」を製作。観光地を巡りながら気仙沼市街地に観光客が来てくれるよう呼びかける。

これからどうしていきたい

「うみねこランド」という新店舗を計画していて、地域を照らすような灯台のデザインにしようと考えている。目標では15年後。それに見合うようなお菓子屋さんになろうと決心して頑張る。

パッションポイント

気仙沼の観光、釣り、人を喜ばせるのが好き、寅さんがすき

公式サイト、出版物など

公式サイト

Facebook  コヤマ菓子店

Twitter ( @koyamacake )

Youtube  コヤマ菓子店五代目 小山裕隆

チケット(私のできること、得意なこと)

・気仙沼のいいとこ100個教えてます

※チケットをお願いする時、『ソーシャルタウンガイド』を見たと連絡するとスムーズです。
※コンタクトはSNSのメッセンジャーから連絡をお願いします。

お気に入りの場所(ホーム)

安波山からの景色
宮城県気仙沼市
観光サイト

一番初めに行って欲しい、2mの内湾案内看板を小山さんが寄贈。

お気に入りの場所(アウェイ)

船堀
母の地元が東京都で、東京に行くときには船堀にある知人のところに宿泊している

つながり

佐々木義弘(気仙沼デザイン)

※つながりは、紹介したキーパーソンとのつながり、または今後インタビュー予定の方です。

取材後記

佐々木さんからの紹介でインタビュー。誰よりも愛する気仙沼でお菓子と観光の両輪で地域を明るく盛り上げる小山さん。溢れんばかりの情熱できっと15年も経たず達成できると信じてます。気仙沼にも遊びに行きます。(野田)

インタビュー・野田国広(編集部)
グリーンドリンクス川崎のオーガナイザーをはじめ、かわさき新聞などのWEBメディア運営、シェアオフィスのコミュニティマネージャーなどを勤める。福岡市出身、川崎市在住。
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