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【大阪】吉川ヒロ(tomoni.)

トランスジェンダーとしてカミングアウトをし、現在は多様な性を切り口とした人権講演や、LGBTQ+、教育関連の相談に関わっている吉川ヒロさんにインタビュー。

プロフィール

1989年生まれ。大阪府在住。

4歳頃に「からだと自分の性別が違うようだ」と気づき、人と違う自分について意識し始める。また、マレーシアでの植林ワークキャンプを通じ、生まれや性別、国籍、経済状況などの様々な違いが「差」になる状況に疑問を持つ。自分自身も「皆同じ」を前提とした学校や社会に居心地の悪さを感じ、自分と相手のらしさの尊重が両立する世界の作り方を模索し始める。

身近な人の死や病気、自身の繊細さに悩んだ経験から、アクセスバーズ™️をはじめとしたボディワークを学び、施術や講座開催を実施。また、学校現場での多様な性を切り口とした人権講演や、LGBTQ+や教育関連の相談業務に関わる。今の夢は世界を癒すヒーラー/希望に火を灯す講演家になること。

モットーは「自己一致」「恐れでなく願いに立つ」

幼稚園のころにセクシュアリティを自覚する

幼稚園生になる頃には、自分は男性と同じ存在だと認識していたと話す。男の子と一緒になって遊ぶことも多かったが、入園して制服が決まっていてスカートをはかなければいけないことに違和感を覚えた。自分の中では自然なことだと思っていたことが、社会生活の中では、うまく表現できないように感じた。自分と同じような人が周りにいない。「自分は一人ぼっちなんだ」と小学生の時から思うようになる。次第に友だちとは少し距離を置いて過ごすようになっていった。

大人になると男性と女性が結婚し、子どもが生まれ家族になるものだと思い、自分はその流れに乗れないと思った。小学2年生の時、女の子を好きになった。自分が自然に好きになる人の性別も、周りの人たちとは違うらしい。小学生ながら、家族を持てない自分は一人で生きていく準備をしなくてはいけないと思った。中学校、高校になるとまた制服や制度で男女が分けられる。好きな人は女の子だけでなく、男の子も好きになることもあった。そういう自分を説明する言葉も知らず、混乱し、この社会では生きにくいと思っていた。

マレーシアでの植林キャンプに参加

高校1年の時、マレーシアで植林を行うワークキャンプに参加する機会があった。それまでは同じクラスの人たちしか知らなかったが、学校も学年も異なる生徒たちと出会い、一緒にマレーシアへ行った。空港からバスで数時間もかかるような遠い農村に行き、現地の方の収入源でもあるゴムの木を植林しながら、地域の人と交流するというキャンプだった。一緒に行った生徒たちは自分の意見を積極的に語り、自分の考えも持っている人が参加していて、驚いた。

そこで異文化に触れることが大きな経験となる。産まれた国が違うだけで、同じ年の人間なのに生活が大きく違う。格差を目の当たりにして問題意識を感じる一方、それまで狭い世界の中で孤独感を感じていた気持ちが少し和らいだ。自分が知らない世界を見て、同年代の現地の子と話すうちに、この広い世界のどこかには、自分を受け入れてくれる居場所があるかもしれないと感じた。

カミングアウト

大学3年生になり就職活動を始めていくと、また男女で分けられる場面に遭遇する。このままでは自分の心が死んでしまうと思い、自分のままで生きようとカミングアウトを始めた。セクシュアルマイノリティの人が集まる場所で、多くの同じ仲間にも出逢うことができ、ようやく自分の居場所を見つけられた気がした。やがて、セクシュアルマイノリティの啓発活動に関わるようになり、自分の体験を大学で話したり、学園祭でブースを出したりと活動の幅が広がっていった。しかし、セクシュアリティの悩みから就活は続けることができず、卒業後は教育とジェンダーの勉強をしたり、コミュニティに関わる中で自分自身の理解を深めていった。22歳頃から講演活動に加え、電話やチャットでの相談業務に関わったり、教育系の団体で働くようになった。

tomoni.を立ち上げる

友人が主催するイベントで出会った宝本いつみさんと、2021年10月に「tomoni.」という名前で、一緒に対話・場づくりの活動を始めた。2022年2月からはクラウドファンディングにも挑戦し、多様な人たちの声を大切にする場のファシリテーションを学ぶための、合宿の参加費を資金調達するそうだ。合宿でスキルアップを行い、対話の場づくりや学校等の授業で、多様性や人権、つながりについて一緒に考える機会を作っていきたいと語った。

大学時代にカミングアウトをしてから、この10年間で変わったことを尋ねると、セクシュアルマイノリティの認知度が上がり、可視化が進んだと返ってきた。ニュースやドラマ、漫画などで取り上げられる機会が増えたり、当事者自身がSNSなどで情報発信をするようになった。逆に変わっていないのは社会制度。同性婚はいまだに認められておらず、差別禁止法等もない。漫画やドラマでセクシュアルマイノリティの存在は知っていても、実際に生活する学校や会社で、隣にいるかもしれないという実感は薄い人が多いように思うと語った。

これからどうしていきたい

学校を中心に、性の多様性を切り口にした人権や多様性の講演・研修を実施しています。現在は主に大阪が中心ですが、他府県、いずれは全国にも呼んでいただけたらと思っています。セクシュアリティのことは、生活の話であり、人生の話です。自分がどう生きていきたいかという自尊心や自己表現に関わることでもあり、他者とどのような関係性を紡いで生きていくかという関係性やコミュニケーションのことでもあり、互いに異なるあなたと私がどう一緒にこの世界で生きるのかという、多様性や公平公正のことでもあります。違いが間違いではなく、豊かなギフトとして称え合い喜べる社会にしたい。これからもそんな文化を広めるべく、たくさんの人と出逢っていけたらと思っています。

パッションポイント

社交ダンス

公式サイト、出版物など

公式サイト

吉川ヒロへの研修・講演講師依頼フォーム

Instagram (@hiro_speakout)hiro

Instagram (@tomoni5316)tomoni.

チケット(私のできること、得意なこと)

・人権や多様性、自尊心、つながりについての講演をします
・多様な人たちにやさしい学校づくり、お店づくりの相談に乗ります
・大阪のゲイタウンの、おいしいご飯屋さんやバーを紹介します

※チケットをお願いする時、『ソーシャルタウンガイド』を見たと連絡するとスムーズです。
※コンタクトはSNSのメッセンジャーから連絡をお願いします。

お気に入りの場所(ホーム)

万博記念公園

天神橋筋商店街

お気に入りの場所(アウェイ)

屋久島

つながり

松浦美帆(DANCE & SMILE)

高畑桜(ここいろhiroshima)

姜麻里(ファッションデザイナー)

※つながりは、紹介したキーパーソンとのつながり、または今後インタビュー予定の方です。

取材後記

瀧川さんからの紹介でインタビュー。LGBTQに関してインタビューしたのは初めてでしたが、とても新鮮で神々しさを感じました。ヒロさんは芯があって親しみと優しさが溢れる方だと思いました。いつか大阪に行った際にはまたお話聞かせてください。(野田)

インタビュー・野田国広(編集部)
グリーンドリンクス川崎のオーガナイザーをはじめ、かわさき新聞などのWEBメディア運営、シェアオフィスのコミュニティマネージャーなどを勤める。福岡市出身、川崎市在住。
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