100人、100通りの人生とまちの風景、キーパーソンに会いに行こう

【千葉】手塚純子(machimin)

リクルート時代に千葉県流山市に引っ越し、育休中に「地域で活動する面白さ」に出会い、都内勤務の中で培ったスキルを地域で活かし、気づけばコミュニティを立ち上げていた。地域の人々一緒に新たな発想で街の魅力を発信する。

プロフィール

㈱WaCreation 代表取締役社長(本社:千葉県流山市)

1983年大阪生まれ。神戸大学経営学部卒業、人的資源管理を専攻。体育会アメリカンフットボール部で組織マネジメントを実践し、人や組織のおもしろさにどっぷりはまる。新卒で㈱リクルートに入社、営業・人事・企画を経験。ビジョン策定浸透・採用・人材育成などの分野でプロデュースを強みとする2児の母。第2子の育休中に起業。2019年4月より国立大学法人千葉大学非常勤講師、2020年4月より千葉県立特別支援学校流山高等学園学校運営協議会委員。沸点低め。矛盾しながら両立しているものに美学を感じる。生牡蠣とオムライスが好き。著書『もしわたしが“株式会社流山市の人事部長”だったら』

ライフワークバランスを求めて

新卒で入ったリクルートでは、自動車領域での人事を経て、人材領域で営業をしていた。多忙な日常で自宅と職場の往復と深夜までの残業が続く。20代後半の頃にロールモデルとしての女性役員の話を聞かされ、役員のワークライフバランスの例を知った。大企業に入って、結婚して第1子妊娠出産、自宅と会社と保育園と電車往復を繰り返す日々に、さらに第2子妊娠。この必死な毎日をいつまでやるのだろう?と体力と精神力の限界と感じ、一般的な仕事を中心にした「ワークライフバランス」ではなく、暮らしを中心にした「ライフワークバランス」を体験・実践することが重要だと決めたという。

その頃、『母になるなら、流山市。』という広告を目にする。千葉県流山市は、東京に一本でいける新しい鉄道が走ることになり、森を切り開き作ったまちで緑を活かしたまちづくりをしていた。駅前の開発で便利で煌びやかである一方で、駅から離れると田畑、大きな公園があり、川には大きなカエルやトンボもいた。自治体が市民と一緒にまちの価値を作りたいとメッセージしており、どこか当時働いていたリクルートの風土にも似ていてコラボレーションなどもしやすそうだと、流山市に引っ越した。今では両親も関西から移住されてきたそうだ。

流山市は、千葉県北西部に位置し、人口は約20万人。江戸川や利根運河を利用し、白みりんの産地として発展した。隣接する自治体は、千葉県松戸市、柏市、野田市、埼玉県三郷市、古川市。

第1子の育休での出会い

第1子の育休中に時間があったので、なにか流山で面白そうなものはないかとインターネットで検索してみた。すると、自治体には珍しい流山市マーケティング課という部署があることを知り、宣伝コンテンツとして尾崎えり子さんという女性の活動を支援しており、彼女に関する流山の記事をたくさん見つけた。尾崎さんはベンチャー企業出身の2児の母で、母親のキャリアと子どもたちのキャリア教育で起業した方だ。

当時、手塚さんとは違うキャリアの道を歩んでる女性に興味を惹かれ、尾崎さんとコンタクトをとると、ちょうどサテライトオフィスを立ち上げると語っていたので、手伝ってみることにしたそうだ。リクルートでは新規事業開発には関わる機会がなかったので、おもしろい体験ができるとなんでもやることにし、未経験ながら資金調達、広報、カフェの立ち上げ、リノベーションのワークショップ実施、必要備品集め、集客、など幅広く担当した。活動の中で『母になるなら、流山市。』のポスターのモデルとして紹介され、引っ越しのきっかけになったポスターに出ることにもなった。

2度目の育休で市民団体を作る

地域で職場で体験できなかったことを遊びながら学び楽しめたけれど、稼ぎの安定という面で大企業の安定した環境とは比較にならないことも知った。復職し第2子を授かったタイミングで、ワークライフバランスの限界を感じ、2度目の育休では自分で市民団体『WaCreation』を立ち上げ、その際に流山市マーケティング課より『シビックパワーバトル』のお誘いをもらい、初代実行委員長もやった。

様々な活動を進める中で、マーケティング課は人口を移住させる活動は積極的に行う一方、定着にまつわる活動やその成果は見えていないし、課題も同時に発生していることを知る。それは、リクルートで人材領域を専門にしていた手塚さんにとっては、中小企業の採用と類似しているように感じられた。ビジョンの再設定と、それに基づく育成・定着・活躍という分野をしっかりやれば、まち全体の成果が如実に表れるのを想像できていた。これはビジネスに発展する可能性があると確信できたこと、定年後にでもやろうとおもっていたことを「今、ここでならもっと簡単にできそうだ』と感じたことから『株式会社WaCreation』を設立する。

法人として最初に行ったのは、開発エリアとは離れたローカル線流鉄流山駅前にコミュニティスペース兼観光案内所『machimin(まちみん)』をオープンさせ、「まち(machi)をみんな(min)でつくる」というメッセージと共に自分の“好き”や“得意”を持ち寄ってまちづくりへの参加を促しながら、多世代交流促進すること。市民が作った鉄道会社(町民鉄道)流鉄の成り立ちを知った際に、町民(ちょうみん)を(まちみん)を読み間違えたことも、きっかけだったそうだ。

古民家を探していたが、市内には物件はほぼないので困っていたら、駅前タクシー車庫だった場所があいていたので、古民家のようにリノベーションした。

流山発祥の白みりんのおみやげを販売する菓子製造所も併設させ、地域の世代を超えた交流・観光客と住民の交流など、多角的に盛り上げようと考えた。作り手は、お菓子作りが上手な市民の方々で、みりんのフィナンシェ、みりんを泡立てたマシュマロや、他にも砂糖不使用のお菓子が大人気だ。

流鉄ファンの市民が作ったギャラリーに、他の市民の方からの提供なども加わり、さらに流鉄をモチーフにした雑貨も増えてきた。

コミュニティスペースで得た情報、出会った様々な市民の方々と一緒に地域コンテンツを磨き、空き家でやる食材費ゼロのまかない食堂『machimin2』、空き農地をみんなでプライベート公園としても活用しなおす『machimin3』、公共空間をいかに使いこなすかという震源地として公園で移動図書館を行う『machimin4』を展開させている。

移動図書館のアイデアは、起業前に行ったサンフランシスコのまちなかで見つけた歩道にあったライブラリーポストだそうだ。

『machimin』の日々の活動・どんな市民が集まっているかについては、著書や公式Facebookページにて詳しく書かれている。

これからどうしていきたい

ライフワークバランスで人生を考えられるまちを目指し、働き方改革ならぬ暮らし方改革を推進することで、『資本主義社会』と『地域社会(社会資本主義社会)』のバランスを市民参加型まちづくりで行うモデルを確立していきたい。そして、企業と自治体へ提案していくことで、自分の人生のオーナーになれるまちを自分たちでつくることを楽しみたい。

株式会社WaCreation〜壁を壊して、輪を創る〜は、「ないなら創る、欲しいなら創る、あるもの活かす、みんなでやる 」という考え⽅を⼤切にしている、“⼈がいつ何時でも活きて⽣きることができる毎⽇”を⽬指すまちづくり会社です。machimin-まちをみんなでつくる-を4拠点運営し、参加型のまちづくりを推進しています。 

代表:⼿塚純⼦
設⽴:2018年1⽉5⽇
事業:まちづくり事業(⼈材育成、コミュニティデザイン、企画プロデュース、リビングラボ、菓⼦製造、喫茶営業など)

引用:公式サイト

パッションポイント

まだ誰も、本人でさえ気づいていないその人の可能性を発見した時

少人数での深い対話

公式サイト、出版物など

もしわたしが「株式会社流山市」の人事部長だったら  (木楽舎・2020年・手塚純子著)

公式サイト 株式会社WeCreation

チケット(私のできること、得意なこと)

・machiminの運営に1日参加してくれたら、あなたの活動への1時間半アドバイスします

※チケットをお願いする時、『ソーシャルタウンガイド』を見たと連絡するとスムーズです。
※コンタクトはSNSのメッセンジャーから連絡をお願いします。

お気に入りの場所(ホーム)

流山駅
千葉県流山市流山一丁目
流鉄 (公式サイト)

お気に入りの場所(アウェイ)

サンフランシスコ
観光サイト

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つながり

水野かおり(流山ふたごの会)

金川聡美(南流山子ども食堂)

はしもとあや(まんが家)

岩根宏(流山お田んぼクラブ)

※つながりは、紹介したキーパーソンとのつながり、または今後インタビュー予定の方です。

取材後記

手塚さんは、前職のリクルート時代に自動車領域の仕事をお互いに携わっていた頃に知り合いました。退職後はSNSを通じて千葉県流山市で地域活動を始められているのを知り、昨年には本も出されました。じっくり話を聞いたのは初めてでしたが熱い想いがビンビン伝わってきました。本もぜひ読んでみてください。(野田)

インタビュー・野田国広(編集部)
グリーンドリンクス川崎のオーガナイザーをはじめ、かわさき新聞などのWEBメディア運営、シェアオフィスのコミュニティマネージャーなどを勤める。福岡市出身、川崎市在住。
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