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【川崎】熊谷薫(アートマネージャー)

東京アートポイント計画や六本木アートナイト、ヨコハマ・パラトリエンナーレなど数多くの芸術祭に携わったアートマネージャーの熊谷薫さんにインタビュー。

プロフィール

アートマネージャー/事業評価・アーカイブコーディネーター/合同会社ARTLOGY代表

2005年に東京大学美術史学科修士課程修了後、N.Y.の市立大学に留学し戦後美術について研究、グッゲンハイム美術館でのインターンを経て帰国。2012年11月から東京アートポイント計画のプログラムオフィサーとしてTokyo Art Research Labの、記録調査/アーカイブ/評価に関わる研究開発プログラムに携わった。2014年よりフリーランスとして、アートプロジェクトの企画運営に加え、文化芸術分野の様々な活動のアーカイブや事業評価のコーディネートを手掛ける。現在は社会と文化芸術の橋渡しをすべく、日本全国の活動をリサーチしながら、事業運営支援や、企画立案・プロデュース業務、事業評価や戦略立案などを実施している。2020年に合同会社ARTLOGYを設立。

多くの人に現代アートを届けたい

フリーのアートマネージャーとして活動している熊谷さん。あまり聞き慣れない職業だが、アートマネジメントとは、美術や音楽・演劇など芸術活動を支援する方法論で、アートに関わる作品の発表のサポートにとどまらず、プロジェクトの企画・運営・広報・戦略など多岐にわたって、多様なステークホルダーを調整してマネジメントすることで、質の高い芸術作品に、多くの人々がふれられるような機会を提供している。かつては公的機関や企業に所属している人が多かったが、近年ではフリーの個人での活動も見られ、多様化してきているそうだ。熊谷さんは地域の芸術祭の企画、コンサルティング、運営など行っている。こうしたフリーのアートマネージャーは国内では少なく、感覚的には20〜30人程度しかいないのでは、という。自身でも絵を描いていた時期はあったそうだが、結果的に縁の下の仕事が向いていると感じ、いまの仕事を選んだ。

大学時代は東京大学で現代アートの研究をしていたが、日本では理論的な部分を学べないと感じ、ニューヨークの大学に留学した。最も興味があったのはニューヨークの現代アーティストだったからだ。グッゲンハイム美術館のインターンも経験した。社会派のアートが好きで、特に現代アートは政治や社会問題ともクロスしている。芸術作品の表現を通して新しく問題提起をしているところが好きだと話す。注目しているアーティストは多くいるが、 視覚的に強度があるだけではなく、様々な社会課題(ジェンダー、移民、歴史問題等)をテーマにしたアーティストに関心があるそうだ。『クリスチャン・ボルタンスキー』『バーネット・ニューマン』『 シンディ・シャーマン 』『 ウィリアム・ケントリッジ 』『マリア・アブラモヴィッチ』などがおすすめだそうだ。

馬喰町アートプロジェクト、インスタレーション宮田明日鹿、ダンス廣瀬暁子

六本木アートナイトで、インクルーシブ・ツアー

2009年から六本木界隈で開催している「六本木アートナイト」は、六本木ヒルズや東京ミッドタウン、国立新美術館をはじめ六本木のまちを舞台に、現代アート、デザイン、音楽、映像、パフォーマンス等の多様な作品を点在させ、非日常的な体験をつくり出すイベントだ。熊谷さんは2016年から関わっている。

そのイベントに関わる中で、見えてきた課題を解決する一助となるように、企画したのがインクルーシブ・ツアー。誰でも六本木アートナイトを楽しめるようにと、2018年から「インクルーシブ・ツアー」と「外国語対応企画」を始めた。鑑賞することに障害のある方にも楽しんで欲しいという想いから企画したそうだ。そこで、まずは車椅子の方でも回れるツアーを実施。この企画は行政機関など各方面から『こういう芸術祭はなかった』と高く評価された。しかし、続けてやった方がいいと思うが、できる人材が他にいない。現代アートを通して、社会から取り残されているものを見つめて、そのままにしないために、新たな仕事を立ち上げたい。そして、誰もがアートを楽しむことができるように、きっかけを作りたい。

(写真:©六本木アートナイト実行委員会、越間有紀子)

熊谷さんの好きな美術館はと尋ねると、森美術館、東京都現代美術館、国立近代美術館、MOMA、MOMA-PS1の5箇所を挙げた。特にPS1がお気に入りで、ニューヨーク近郊のロングアイランド・シティに位置する非営利の文化・教育活動を行なう現代美術専門の展示施設だ。一般的な美術館ではなく、実験的な現代美術の企画を年間50本以上開催している。こうした施設をオルタナティヴ・スペースと呼び、使われなくなった倉庫、校舎、工場、店舗、事務所、家屋などを利用している所が多い。運営も非営利で、地域に根ざしたものが多く、社会的なテーマを扱うものなどが中心だ。

地域でアートプロジェクトをやりたい

フリーになる前は、アーツカウンシル東京に在籍していた。主には地域のアートプロジェクトを応援する仕事で、東京都小金井市を中心に、アートを通じた新たなコミュニケーションを生み出し、豊かな生き方を目指していく市民参加型のアートプロジェクト『小金井アートフル・アクション!』などへの中間支援を実施した。地域の人と時間をかけながら作っていき、コミュニティを作っていく。

最近は、地元川崎市多摩区のアーティストたちと、ご近所アートコレクティブ『TAMA VOICES』という活動も始め、多摩区のソーシャルデザインセンターなどで活動し、アートの地産地消を目指している。その他、アートマネージャー・ラボというウェブでの学びあいの場も開き、各地のアート関係者のネットワーキングを通して、多分野と共創し、新しい活動や仕事を生み出すことにトライしている。

これからどうしていきたい

アートマネージャーのスタープレイヤーを増やしたい。またインクルーシブツアーのように、アートの力で社会課題を少しでも解決したい。そうした活動によって、これまでアートに距離を感じていた人も来てくれる。楽しいこと、面白いことを続けていきながら課題解決していく。

パッションポイント

アートと旅

チケット(私のできること、得意なこと)

マニアしか知らない地域のアートプロジェクトを教えてます
・アート関する相談を受けたり、人を紹介したりできます

※チケットをお願いする時、『ソーシャルタウンガイド』を見たと連絡するとスムーズです。
※コンタクトはSNSのメッセンジャーから連絡をお願いします。

お気に入りの場所(ホーム)

生田配水池(川崎市)
神奈川県川崎市多摩区生田5-30-1

お気に入りの場所(アウェイ)

熱海 Atelier & Hostel ナギサウラ
静岡県熱海市渚町19−6 chause
公式サイト

【じゃらん】国内25,000軒の宿をネットで予約OK!2%ポイント還元!

公式サイト

公式サイト( http://www.artlogy.net/ )準備中

つながり

岡田恵利子(ニアカリ)

鈴木泰人(美術作家)

近藤乃梨子(ヨリミチミュージアム)

※つながりは、紹介したキーパーソンとのつながり、または今後インタビュー予定の方です。

取材後記

岡田恵利子さんからの紹介でインタビュー。アート作品を見るのは好きで美術館にもいきますが、アートマネージャーという仕事は初めて知りました。いろんな縁から仕事に発展することが多いようで、今後の活躍に注目です。川崎でもアートプロジェクトができる日を楽しみにしています。(野田)

インタビュー・野田国広(編集部)
グリーンドリンクス川崎のオーガナイザーをはじめ、かわさき新聞などのWEBメディア運営、シェアオフィスのコミュニティマネージャーなどを勤める。福岡市出身、川崎市在住。
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