100人、100通りの人生とまちの風景、キーパーソンに会いに行こう

【京都】嘉村賢州( NPO法人 場とつながりラボhome’s vi )

次世代の組織モデル「ティール組織」の日本第一人者・嘉村賢州さんのこれまでの足跡と活動についてインタビュー。

プロフィール

1981年兵庫県生まれ。京都大学農学部卒業。集団から大規模組織にいたるまで、人が集うときに生まれる対立・しがらみを化学反応に変えるための知恵を研究・実践している。2008年に組織づくりや街づくりの調査研究を行うNPO法人「場とつながりラボhome’s vi(ホームズビー)」を京都で立ち上げ、代表理事を務める。2015年に1年の休暇をとって世界を旅する。その中で新しい組織論の概念「ティール組織」と出会い、今に至る。最近では自律的な組織進化を支援する可視化&対話促進ツール「Team Journey Supporter」を株式会社ガイアックス、英知出版株式会社と共同開発。2020年初夏にサービスをローンチした。

原体験は京都の町屋での場づくり

2018年に発行され現在までに世界中で70万部、日本国内で10万部売れた書籍『ティール組織』の解説をしている嘉村賢州(かむらけんしゅう)さん。珍しい名前だが、お兄さんは豪州と言うそうだ。小さい頃は本をほとんど読んだことがなく、本を読むことに対して抵抗していたそうだ。なんでも賢い人の本を読むと自分の成長が止まってしまうのではないかと思っていたそうだ。しかし今ではあらゆる海外ビジネス書を読んでは研究する日々。ファシリテーションを仕事にし始めた頃、海外の書籍を参考に見たことをきっかけに、その頓知の深さに感銘し、それから本を読むようになったという。

大学時代はちょうど2004年〜2005年ごろで日本国内ではSNSのmixiが流行し始めた頃だった。学生が就職活動をし始める頃、異業種交流会や各種イベントが行われていたが、そこにある肩書きを土台にした表面的な出会いのあり方に違和感を感じていたそうだ。

それらとは違う人とのつながり作りができないだろうかと考えた末、自分の住んでいたマンションの一室を開放し、大切な仲間が自由に使える空間を作り始めた。鴨川の西にあったことから「西海岸」という名前がついた。次第に自分を介せずとも知人たちの友人などが集まり始め、仲間が増えていく。当時学生の家賃は4万円から5万円ぐらいだったので、4名で町屋を一見借りることにした。2階は住民の居住スペース、1階を一度来た人は24時間365日いつでも利用できる形にした。その存在は一般公開しなかったが信頼する人が信頼する人を呼ぶ形で5年間で1,000人以上の人が集まるコミュニティに発展していった。

ホームズビー設立

嘉村さん曰く魔法の時間というものがあり、誰かが信頼できる人を連れてきて紹介すると、関係性が深まるスピード感が早い。そこに豊かさがあったという。仲間の喜びは自分の喜びでもある。学生だけのコミュニティのみならず世界中に広がって欲しいと思った。大学卒業後は一度上京する。同時にコミュニティ時代に出会った仲間たちとベンチャーを作るために週末は京都に戻り活動を進める。最終的にベンチャーはうまくいかなかったが、東京にはいかず、京都でやっていきたいと思った。新しい組織を京都で作ることを決意した。

会社や地域、社会、プロジェクト、コミュニティなど、人が集まる場においては、どうしてもそこで対立・しがらみが生まれやすい。それを化学反応に変えるための知恵を研究・実践しているのがホームズビーだ。研究領域は紛争解決の技術、心理学、脳科学、先住民の教えなど多岐にわたり、国内外問わず研究している。まちづくりや教育などの非営利分野や、営利組織における組織開発やイノベーション支援など、年100回以上のワークショップを行っている団体である。

ティール組織との出会い

嘉村さんは京都のまちづくにも関わっている。京都のまちづくりは結構大変だという。京都は比較的狭いエリアに伝統産業からIT企業、学生からシニア世代、宗教や芸能といったさまざまなタイプの人たちが織りなしている。どうしてもそういう状況では何をしようとも対立やしがらみに引っ張られやすいのだ。そこで嘉村さんは紛争解決の技術や大規模ダイアログの手法を海外に求めた。その学びをもとに京都市未来まちづくり100人委員会をはじめユニークなまちづくり活動をたくさん推進していくことになった。そんな中ある知り合いから企業内もある意味紛争状態だと教えられる。その辺りから、ホームズビーはまちづくり主体の場づくりから組織改革や企業のイノベーションづくりなどにその主軸を移していった。

企業における場づくりは喜ばれてもいたし、やりがいもあったという。しかし同時にもやもやも感じていたという。覚悟を決めた社員がヒエラルキー構造の中で潰されていく風景を何度か見た時だ。嘉村さんは「人類は組織の作り方を間違ったのではないか?」という問いが生まれたという。同時に自組織においても壁が立ちはだかったようだ。10年前はファシリーターというのはまだ社会に認知されておらず、それを稼ぎにしている人は少なかったという。市場があまりない中で数はこなしてきたが、なかなか価格をあげることができずにいた。年間100回以上ワークショップをやっていてもメンバーの給料を払うのも大変だった。そんな中、純粋な思いで立ち上げた事業において、サバイバルの思考が生まれている自分に驚き、ある決断をすることに決めた。自分自身の限界との組織論の先の見えなさの二つを理由に2015年に1年間立ち止まって海外放浪の旅をすることを決めた。

フィリピンのセブ島で英語の勉強をし、ベルギーなどヨーロッパ9カ国、アメリカを旅する。途中スコットランドで、フィンドホーンというコミュニティの理想系に出会う。フィンドホーンは、元は農業にも適さない荒れ地を3人のスピリチュアルな実践家が拠点作りをし、今や世界中の人がおとづれるエコビレッジの老舗コミュニティである。

他にもアメリカのエサレン研究所のリトリートや西海岸のカルチャーに触れたり、様々な経験をした。その最中に「組織を再発明しよう」というコンセプトのティール組織の概念と出会い衝撃を受ける。その後、世界中のティール組織の実践者が集まるギリシャのカンファレンスに参加したりもした。

<ティール組織のモデル>

・Red(レッド)衝動型組織:個人の力で支配的にマネジメント
・Amber(琥珀)順応型組織:役割を厳格に全う
・Orange(オレンジ)達成型組織:ヒエラルキーは存在するが、成果を出せば昇進可能
・Green(グリーン)多元型組織:主体性が発揮しやすく多様性が認められる、成果より人間関係重視
・Teal(ティール/青緑)進化型組織:組織を1つの生命体としてとらえる、個々に意思決定権がある

これからどうしていきたい

組織論はそろそろ終焉に入ってきている気がしている。副業や兼業が少しづつ増えているが、今はまだ一つの組織に長期間所属することが前提の世の中である。もう少ししたらその組織の殻がもう少し緩み、もっと副業や兼業が増えるだけでなく、横断的なプロジェクトも増えていくことになるだろう。組織が個人を使う形から、個人が自分の目的に向かって組織に属したり、渡り歩く時代に変わっていくと思う。組織と組織も独立した関係ではなく、人材を共有したり、連携したり、生態系のように発展していくことを想像している。それを私は組織生態系と名付けており、その考えをまとめて、使えるような状態にしたい。組織論を超えた先を見たいと思っている。

パッションポイント

各種修行(瞑想・内観・修験道など)、旅

公式サイト、出版物など

公式サイト NPO法人 場とつながりラボhome’s vi

ティール組織 ― マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現

チケット(私のできること、得意なこと)

・ティール組織について聞いて教えます
・コミュニティづくり、ムーブメントづくり相談のります

※チケットをお願いする時、『ソーシャルタウンガイド』を見たと連絡するとスムーズです。
※コンタクトはSNSのメッセンジャーから連絡をお願いします。

お気に入りの場所(ホーム)

鴨川デルタ
京都府京都市左京区下鴨宮河町

お気に入りの場所(アウェイ)

沖縄

サバティカルジャーニー、西海岸のリングマウンテン

つながり

原田宏美(空間デザイナー)

・熊倉聖子(NPO法人 場とつながりラボhome’s vi )

※つながりは、紹介したキーパーソンとのつながり、または今後インタビュー予定の方です。

取材後記

原田宏美さんに紹介され、初めてお目にかかったのは原田さんのインタビュー当日にWEBカメラ越しの挨拶でした。ティール組織の本は書店で目にしたことはあったものの、読んだことがなかったですが、お話を伺ったり調べてみると、とても面白そうだと思いました。(野田)

インタビュー・野田国広(編集部)
グリーンドリンクス川崎のオーガナイザーをはじめ、かわさき新聞などのWEBメディア運営、シェアオフィスのコミュニティマネージャーなどを勤める。福岡市出身、川崎市在住。
野田国広の記事一覧