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【福島】上神田健太(家守舎桃ノ音アカリ)

東京都庁職員から結婚を機に、福島にJターン。元縫製工場をリノベーションしてシェアオフィスなどコミュニティ施設を手がけ、近くではエコタウン計画も進行中。新しいまちづくりに挑戦中の上神田健太さんにインタビュー。

プロフィール

上神田健太。株式会社家守舎桃ノ音代表取締役。

1986年生まれ。岩手県普代村出身。
国立大学法人宇都宮大学建設学科地域計画学研究室卒。大学卒業後、東京都庁に入庁し、インフラ整備に従事。東京在住のうち、台東区蔵前のまちづくりについての独自研究、東京都美術館でのイベントの企画・運営への参画、都電沿線を対象にしたリノベーションスクールへの参画など、都市部におけるまちづくりを学ぶ。

2016年、福島県国見町に移住し、エリアマネジメントを実践する株式会社家守舎桃ノ音を設立し、2019年10月にCo-Learning Spaceアカリをオープン。国見町を中心に、地域資源を有効活用した地域経済循環の仕組みをつくっている。

大学を出て東京都庁で勤務

生まれたのは岩手県の普代村(ふだいむら)という太平洋に面した小さな村で、大学は国立宇都宮大学に進学して、都市計画やまちづくりの研究などをした。卒業して東京都庁に勤めるが、配属されたのはずっと関わりたかったまちづくりではなくインフラ整備だった。まちづくりへの想いは変わらず自分で、東京の蔵前や栃木県足尾町などを研究し続けた。いろんな自治体が全国で駅前や市街地などで大規模な再開発を行うものの、立派な建物ができてもテナントがうまらず、大きなホールも利用される機会が少ないなど、あまり成功した事例は聞かなかった。

一方で勤め先があった蔵前では、次々と新しい個性的な店が出来ていて、行政主導の大規模なまちづくり以外でも、まちを活性化、再生する方法があることに気づいた。実際に町の人たちを取材をはじめる。蔵前は隅田川沿いにあり、近隣には浅草や両国がある。もともと玩具問屋が数多くあったが産業の衰退により、空きビルや店舗が増えて行った。建物自体も老朽化し都心部から少し離れた立地のため家賃が安い。そこに若いクリエイターたちがカフェやホテルなどを相次ぎ開業して行った。熟練の大人も多いことから、若手のデザイナーたちも相談しやすくビジネスになりやすいという背景もあった。

そうした盛り上がりを見て、地方でも出来るのではないかと考えた。実際に北九州市や静岡県熱海市、山形市などでも古いビルをリノベーションし街を活性化した事例も耳にしていた。その後、同じ大学の同期でである奥さんと結婚し、その奥さんの実家の建設会社を継ぐため、福島県国見町にJターンした。建設会社の他にも、遊休不動産を活用したまちづくりを行うため「株式会社 家守舎桃ノ音」を設立した。

家守舎桃ノ音

家守舎桃ノ音(やもりしゃもものね)の由来は、”家守舎”は、遊休不動産の新しい使い方を考えたり、管理をしたりする家守業をする会社であることを表しており、”桃ノ音”は、この地域に暮らす人たちが、”サクサク”と音がするほど固い状態で桃を食べることから名付けたそうだ。この町に来るまでは、桃は柔らかくして食べるものだと思っていたが、本当に新鮮な桃は、固いうちが食べ頃だと教えてもらった。”サクサク”という桃の音は、町の豊かな暮らしの象徴だと思ったそうだ。

町にあった倉庫と公園で、『 空想マルシェ』を一日限定で企画した。子供服の専門店に出店してもらったり、地元の大学生が、演劇をやったり、遊休不動産や使われていない公園の新たな使い方を提案し、まちで活躍する新たなプレーヤーを育ててたいと開催したところ、予想以上の賑わいと反響があった。

暮らす人びとを”アカリ”で灯す学び場

JR東北本線の藤田駅近くに、かつて縫製工場があった。しかしその会社は倒産して、町が取得し、倉庫として利用されていた。しかし町民から活用して欲しいと意見があがり、活用方法の公募が行われた。上神田さんは、倉庫を改修して、飲食店・コミュニティスペース、シェアオフィスを併設した複合施設をつくることを提案。見事その公募を勝ち取った。改修工事に約800万円かかり、一部資金をクラウドファンディングで調達した。

名称は「アカリ」とした。駅前にあるこの倉庫に実際にアカリが灯り、この地域に暮らす人々が、自ら”やりたい”と思う気持ちにアカリを灯すという意味を込めたという。都市部と比べて学び場がないとして、食と農、モノづくり、コトづくりから自ら選び、学ぶ場所にしようと考えた。地方で暮らしながらも、いろんな働き方、暮らし方、生き方があるということをこの地域の人たちに知ってもらいたいと語る。シェアオフィスにはイラストレーターや営業代理店、地域おこし協力隊など9社が入居してるそうだ。

1階には、イタリアのシチリア島で修行した、国見町出身のシェフが、地元食材を使ったシチリア料理を提供する飲食店「Trattoria da Martino」、地域の方々がくつろいだり、学生が勉強や読書ができるコミュニティスペースがある。2階には、シェアオフィス、イベントスペースがある。

これからどうしていきたい

アカリの近くの月極駐車場となっている土地で、断熱性能の高いエコハウスが立ち並んだエコタウンを計画中。脱炭素社会に向けて実現したい。田舎でも新しいライフスタイルを発信できる場所にしたいと語る。

パッションポイント

キャンプ

公式サイト、出版物など

公式サイト

チケット(私のできること、得意なこと)

・国見町の面白い人を紹介します。

※チケットをお願いする時、『ソーシャルタウンガイド』を見たと連絡するとスムーズです。
※コンタクトはSNSのメッセンジャーから連絡をお願いします。

お気に入りの場所(ホーム)

福島県のあんぽ柿

お気に入りの場所(アウェイ)

蔵前
東京都台東区蔵前

つながり

近藤乃梨子(アート・コミュニケーター)

※つながりは、紹介したキーパーソンとのつながり、または今後インタビュー予定の方です。

取材後記

近藤さんからの紹介。桃ノ音やアカリなどネーミングがよくて、どこかセンスを感じる。アカリを中心に公園や新しいエコタウンなどこれから未来も楽しみで、いつか国見町にも行ってみたいと思いました。(野田)

インタビュー・野田国広(編集部)
グリーンドリンクス川崎のオーガナイザーをはじめ、かわさき新聞などのWEBメディア運営、シェアオフィスのコミュニティマネージャーなどを勤める。福岡市出身、川崎市在住。
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