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【東京】田中真宏(NPO法人ピープルデザイン研究所)

アパレル業界から転身し、NPO法人ピープルデザイン研究所で川崎フロンターレなどプロスポーツと協働し障害者の就労体験や渋谷で超福祉展など取り組む田中真宏さんにインタビュー

プロフィール

田中 真宏
NPO法人ピープルデザイン研究所 代表理事/有限会社ネクスタイド・エボリューション 執行役員/みなと障がい者福祉事業団 /渋谷の超福祉ラジオ@渋谷のラジオ 87.6MHz ディレクター/Diversity & Inclution 100人カイギ キュレーター/調布市障害者余暇活動支援事業 アドバイザー/NPO法人スロコミ 監事/港区 共同受注窓口担当/港区 超短時間雇用担当

文化服装学院卒業後、スノーボードインストラクター、アパレルの販売員・企画・デザインを経て、2009年にネクスタイド・エヴォリューション社に入社。2012年、NPO法人ピープルデザイン研究所設立と共に運営メンバーに。超福祉展などのイベントや、障害者の就労体験プロジェクトなどの企画から運営までを担い、2021年に代表理事に就任。

裏原系ファッション全盛期にアパレルの世界に

東京で生まれ育ち、高校は私立大学の附属高に通ったが、大学には進学せず文化服装学院に入学する。当時は裏原系と呼ばれるストリートファッションの全盛期で、ストリートファッションの業界で働きたくても人気が高すぎてなかなか就職先が決まらなかった。その間、中学生の時から始めたスノーボードが上手くなりたい(本当はモテたい)という一心で、冬場のスキー場の宿に住み込みで働き、資格を取得してインストラクターとしても働く。冬の間は山で過ごす生活を気づけば4年間続けていた時、有名なスノーボードプロショップを運営する会社が、埼玉県の大宮に新規でストリートブランドのアパレルショップを出店するという情報を入手。狭き門を潜り抜け念願のストリートブランドショップの店長として働く。並行してスノーボードショップのオリジナルブランドのグラフィックデザイナーも任された。

その後、大宮のショップは人気を博し有名になってきたが、方やスノーボードの人気が翳りだした。運営会社の経営が傾き、スノーボードショップとともに3年後に閉店。当時にその会社を退職した。その後、当時兄が勤めていた会社にコンサルティングで入っていた縁で、須藤シンジさんを紹介され、須藤さんが2002年に立ち上げたファッションやデザインで障害者と健常者が混ざり合う社会を目指す、「ソーシャルプロジェクト/ネクスタイド・エヴォリューション」に参加。その後同社に入社し、2014年に須藤さんが代表理事となり立ち上げたダイバーシティの街づくりNPO、ピープルデザイン研究所のメンバーにもなり、須藤さんの右腕として活躍した。

超福祉展

2020年を最終回に設定し、2014年から毎年1週間、渋谷ヒカリエを中心に開催した「超福祉展(正式名称:2020年、渋谷。超福祉の日常を体験しよう展)」。2020年には障害者をはじめとするマイノリティの人たちが憧れを持ってみられる、「超福祉」な日常を渋谷の街で実現することを目指した展示会イベント。

初回から関わり2018年からは事務局長として企画全体をディレクションした。従来の「ダサい」福祉用具ではなく、思わず「カッコイイ」と使ってみたくなるデザインや、大きなイノベーションを期待させてくれる「ヤバい」テクノロジーを備えたプロダクトの展示・体験や、従来の福祉の枠に収まらない魅力的なプレゼンターたちが登場するシンポジウムやワークショップなどを展開してきた。従来の福祉のイメージを払拭する斬新かつ先駆的なイベントで、ここから様々なプロダクトやサービス、人や企業の繋がりが生まれてきた。2020年はコロナ禍でいち早くオンラインを取り入れ開催を決断。リアルとのハイブリットで開催をし、オンラインでは世界18都市をつなぎ1週間で72本のシンポジウムを配信。2020年までの累計7回の来場者数は30万人を超え、448の企業や団体が参加。福祉業界はもちろん、日本社会にも多大な影響を与えたイベントとなった。2021年からはafter超福祉展企画としてスピンオフイベントの展開をスタート。9月に障害者の生涯学習をテーマにした「超福祉の学校」を文部科学省と渋谷区の共催で開催した。

川崎フロンターレと就労体験プログラム

2014年に神奈川県川崎市とピープルデザイン研究所が、「ピープルデザインの考え方を活用したダイバーシティな街づくり」で包括協定を締結。障害者をはじめとするマイノリティの方々が、スポーツやエンターテイメントの”晴れの舞台”で働く「就労体験プロジェクト」を実施している。主には試合前の観客席の清掃・消毒、来場者への配布物の配布や、ゴミ分別の呼びかけなどを行い障害者やひきこもり、ホームレスの方々が「運営スタッフ」として活躍する。

この取り組みは2012年にJリーグ横浜FCで始まり、川崎市内で展開を拡大。現在市内ではBリーグの川崎ブレイブサンダースの試合やロックフェスのBAYCAMPなどで行っていて、2014年から2020年度までで333企画を実施し、3165名が参加している。川崎フロンターレとの取り組みはJリーグを通じて認知が広がり、藤枝MYFC、アルヴィレックス新潟でも取り組みがスタート。さらに全国に拡大を目指しているが、地方にこうした取り組みを実現できる中間支援組織が少ないのがボトルネックになっていると話す。

Jリーグ 川崎フロンターレ、Bリーグ 川崎ブレイブサンダースでは全ホームゲームで、またロックフェスなどの市内で行われるイベントには障害者の方々が運営スタッフとして活躍している。スタイリッシュなデザインの黒いビブスと帽子が彼らのユニフォーム。

東京パラリンピック以降、社会に変化が起きる

2021年に1年間延期となった東京オリンピック・パラリンピックが閉幕し、大きな感動を残してくれた。ピープルデザイン研究所の活動のベースになっているネクスタイド・エボリューションから考えると、元代表の須藤はダイバーシティを啓発する活動を20年も前の2002年から始めている。私が入社したのは2009年だが、当時は誰もまったく関心を寄せてくれなかった。空気が変わりはじめたのは2011年。東日本大震災でボランティア活動が活発化し、社会活動が世の中に認知され始めた。

またCSRやダイバーシティという言葉も耳にするようになってきた。そして2020年の東京大会の開催決定以降、大会が近づくにつれ、さらに世の中の流れが加速しはじめた。それに比例するように、先に説明した超福祉展も2017年から話題になり、企業の参加も増えたそうだ。今日、パラスポーツの注目も高まり、SDGsという言葉もよく聞かれるようになったが、アクションを起こすプレイヤーが増えなければ社会は変わらない。本当に大事なのはこれから、と語った。

コミュニケーションチャーム

言葉が通じなくても指差しで対話できる「コミュニケーションチャーム」をご存知だろうか。街中で困っていたら「私に声をかけてください!」「お手伝いします!」という助ける側の人が、その意思表明として身に付けてもらうチャームだ。ピープルデザイン研究所が企画制作し、2011年に発売を開始した。これまでに自動車メーカーのアルファ ロメオや、ファッションショップのSHIPSなど、企業とのコラボレーションバージョンも数多く製作されている。

田中さんは2021年春から代表理事に就任。組織体制も一新し、役員には女性や障害当事者を起用。運営メンバーには精神障害や睡眠障害の障害当事者、ヤングケアラーや子育て中の父母、そして次世代を担う大学生が多く関わっているそうだ。

2020年にデザインをリニューアル。発売当初の2011年には、噂を聞きつけた東京都の職員がヒアリングに訪れ、その後東京都からは「ヘルプマーク」が発表された。

これからどうしていきたい

一昔前のように、数年先の夢や目標を見据えて今日を生きるような時代ではないと思っている。日々世界が変化し、テクノロジーなどが猛スピードで進化していく中、今日1日、1週間、少し先の1ヶ月後くらいをどう過ごしていくかを考えながら、日々できることに精一杯取り組みたい。

ピープルデザイン研究所の活動には大学生を中心に、これまで述べ1500人以上のボランティアスタッフが参加している。

パッションポイント

スノーボード、キャンプ、音楽、車、犬

公式サイト、出版物など

NPO法人ピープルデザイン研究所

ピープルデザイン: 超福祉 インクルーシブ社会の実現に向けたアイデアと実践の記録

意識をデザインする仕事 「福祉の常識」を覆すピープルデザインが目指すもの

チケット(私のできること、得意なこと)

・ダイバーシティに関する街づくりやイベントなどの相談にのります!

※チケットをお願いする時、『ソーシャルタウンガイド』を見たと連絡するとスムーズです。
※コンタクトはSNSのメッセンジャーから連絡をお願いします。

お気に入りの場所(ホーム)

渋谷ヒカリエ8階
東京都渋谷区渋谷2丁目21−1
公式サイト

お気に入りの場所(アウェイ)

静岡県西伊豆

つながり

・石橋鉃志

鈴木智博(REIVER)

※つながりは、紹介したキーパーソンとのつながり、または今後インタビュー予定の方です。

取材後記

クラウドファンディングでご支援いただきインタビュー。田中さんとの出会いはピープルデザインとグリーンバード川崎駅チームと一緒に川崎ハロウィンやBAYCAMPに参加したことや川崎フロンターレでの就労体験時に何度かスタジアムでお会いしたりしてました。気がつけば代表理事にもなられて、今後のご活躍を期待しています。(野田)

インタビュー・野田国広(編集部)
グリーンドリンクス川崎のオーガナイザーをはじめ、かわさき新聞などのWEBメディア運営、シェアオフィスのコミュニティマネージャーなどを勤める。福岡市出身、川崎市在住。
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