日本では珍しいジェノサイド研究者を経て、2016年に島根県隠岐郡海士町に移住。隠岐島前教育魅力化プロジェクト、地域・教育魅力化プラットフォーム、シェアビレッジなどマルチに活躍する澤正輝さんにインタビュー。
澤正輝(さわ・まさき)
学びの案内人・旅するキュレーター
隠岐島前教育魅力化プロジェクト/地域・教育魅力化プラットフォーム/シェアビレッジ。1983年、埼玉県生まれ。2010年よりジェノサイド研究に着手し、『ジェノサイドと現代世界』を出版(編著書)。2016年に海士町に移住し、教育を核とした人づくり、地域づくりに取り組む。NewsPicks for Education「学びの実践者」のひとり。モットーは「ライフ・イズ・ジャズ」
埼玉県で生まれ育ち、大学は東京都国立市にある一橋大学に進学した。2年の時に研究者になろうと決めた。いくつか研究テーマを行った後、最後に行き着いたのはジェノサイド研究だった。ナチ・ドイツやポル・ポト政権など歴史的な大量虐殺をテーマに選び、どうしてそうした事が起きたのか、加害者側は何を思い、その裏側にあるものは何かを研究し続けたという。
澤さんは高校時代にうまく過ごす事がでなかったと振り返る。友達ができず苦しい日々を過ごす。自暴自棄になり、自傷行為もあった。過去の気持ちの浮き沈みもあって、そうしたテーマへの関心があったそうだ。どう自己を表現していいのかも、どこに向けて発信したらいいのかもわからなかった。その苦しさや悲しさが「存在を肯定しあえる世界をつくりたい」という願いに昇華していったという。
ある日、新聞記事にポル・ポト政権の負の歴史をどう伝えていくかという内容の記事を目にする。これまでそうした負の歴史を伝えないという選択を選んできたのだが、それを転換し、伝えていくための副教材を作るという内容が書かれていた。そこで現地に飛び、自分がそのテーマを研究しないといけないと思ったそうだ。
10年近く研究を続けてきたが、しだいに違和感を感じ、もっと違うアプローチをした方が自分や社会にとって幸せを感じられるのではないかと思った。マイナスからゼロにするより、良いものがもっと良くなる、プラスの循環を応援したほうが幸せになると思った。そこでこれまでの人生とは逆に振り切って、いつか包摂されるのを楽しみに待とうと考えていた時に、隠岐島前教育魅力化プロジェクトのことを知り、2016年に移住を決めた。
それまでは一匹狼のように自分1人でやるのが好きで、大変なこともあえて選んでストイックに生きてきたと話す。隠岐では自分1人ではなく、みんなで喜怒哀楽を共有しあいながらやっていくカルチャーがあるといい、それが心地よく、島で学んだ事がたくさんあるそうだ。隠岐島前ではある日、高校が廃校危機になった事があった。廃校になると、高校生は本土に渡ることになり、両親も移住する可能性もあった。そして高校時代の思い出が本土にだけに残り、隠岐での思い出がないまま帰ってくるきっかけがなくなってしまう危機感もあった。高校卒業後、島から離れる子どもたちには、いつか帰っておいでと、大きく育ってという2つのメッセージをどちらも大切にしているという。
澤さんが所属する「隠岐島前教育魅力化プロジェクト」では、魅力的で持続的な学校と地域を作るというビジョンを掲げている。島をまるごと学校ととらえ、「島留学生」として全国、全世界から留学生を受け入れている。活力の源泉は多様性であると考え、「グローバル探究」や「チャレンジファンド」を設置するなど、越境しやすい環境も整えている。2021年にはNewsPicks for Educationとともに、いろんな学校の生徒がニュースを素材に学ぶ構想「越境ラボ」がスタート。オンラインで東京や北海道など全国の生徒とつながった。
日本、世界中におかえり、ただいまといえる場所を増やしたい。
黄色、サイクリング、冒険
・一緒にサイクリングしましょう。自然が豊かなので、自然に身を預けてみると表情がわからかく自分にも優しくなれますよ。 |
・「学びの案内人」として、修学旅行などのファシリテーションもできます |
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鬼舞(西ノ島)
ケープタウン
・住岡健太(PCV)
※つながりは、紹介したキーパーソンとのつながり、または今後インタビュー予定の方です。
澤さんとの出会いは、グリーンズジョブのSlackでのコミュニティで声をかけていただいてつながりました。海士町では共通の知人も数名いらっしゃり親近感が湧きました。話し方が丁寧でわかりやすくて、またゆっくり話をしてみたいと思いました。隠岐にも遊びに行きます。(野田)
インタビュー・野田国広(編集部) グリーンドリンクス川崎のオーガナイザーをはじめ、かわさき新聞などのWEBメディア運営、シェアオフィスのコミュニティマネージャーなどを勤める。福岡市出身、川崎市在住。野田国広の記事一覧 |