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【東京】白羽玲子(珈琲焙煎処 縁の木/KURAMAEモデル)

大手印刷会社や出版社を経て、蔵前に焙煎所や福祉作業所と企業とを結ぶ支援事業、KURAMAEモデルなど開始した白羽玲子さん。

プロフィール

1971年神奈川県茅ヶ崎市生まれ。趣味は散歩、ヒューマンウォッチング、映画鑑賞。 座右の銘は「誰もいなければ第一人者になれる」。

次男の自閉症が判明

神奈川県茅ヶ崎市で生まれ育ち、高校時代は理系を目指していたが、麻疹にかかり学校を長く休んでしまうことになり受験が厳しいと判断して文系に変えた。当時は歌舞伎が好きで、歌舞伎について勉強したいと大学進学を目指したが、希望する大学には行けず慶應義塾大学の文学科国文学専攻の道に進んだ。卒業後は大日本印刷に就職。出版社向けの仕事に就き、雑誌編集部と印刷工場の間に立って進行していく仕事をした。のちにKURAMAEモデルのプロジェクトを進めているが、この頃の仕事が活きている。

2000年に父親が他界し、ずっと定年までいるつもりだった会社から出版社の翔泳社に翌年に転職。当時時代的には紙からweb媒体にシフトしていっている時代でもあり、IT業界のこと、広告のことから効果測定まで覚える毎日だった。その間に結婚をし、次男を出産して2歳を過ぎた頃、異変に気づく。名前を呼んでもまったく反応してくれない。医師に診断してもらうと自閉症と診断された。すぐに母親に相談をし、母親の力も借りながら育てていこうと決意した、その3ヶ月後には母が亡くなってしまう。両親を亡くしてから、自分自身の死について現実的なものとして考える様になった。

縁の木を起業

自分がいなくなった後の子どもの暮らしはどうなるのか。障がい者のこの親なき暮らし方などについて相談をした。放課後等デイサービスは一般的に開所時間が4時半から5時には終わるため、フルタイムの仕事の就けない。正社員としての働き方を諦めて、地元で起業する方法など模索し始めた。そこで考えたのが複数の福祉事業所をつなぎ会社として成立するビジネスモデルを目指し、コラボレーションできる事業を考えた。福祉の仕事はバリエーションがなく、仕事の幅が選べない。そこで小さな焙煎所を作り、1回につき400グラムのみ製造する機械を導入した。1回の失敗が少なければ、繰り返し練習ができると思った。さらに小ロットで製造することでゴミも削減できた。

豆を多く焙煎し在庫を抱えると、古くなって廃棄するのも嫌だと思った。またコーヒーを淹れる過程で多くのゴミが出てしまう。お湯で抽出したカス、焙煎したときに出るチャフ(豆の皮)、欠点豆という虫くいやカビが生えている豆、カッピング(テイスティング)したあとに残った豆など、コーヒーには捨てるものが多いということも知った。次第に企業側から障がい者支援の取り組みをしたいと相談が届くようになる。企業は支援をしたいが、福祉作業所側はそのニーズのロット数を生産することができない。そこで複数の福祉作業所と企業の中間に立ち、コーディネイトする事業へと拡大していった。バラツキがないように品質管理や企業からのフィードバック、改善点の調整なども行った。

KURAMAEモデル

企業と福祉作業所との新しい価値創造のコラボレーションは、知見やノウハウが蓄積していき、近隣の企業や商店とも連携したアップサイクルプロジェクトへと前進していく。「KURAMAEモデル」と命名したプロジェクトでは、アサヒビールとのコラボレーションが実現。テスト焙煎の豆を蔵前の焙煎店から回収して作る「蔵前BLACK」、サンドイッチ製造で発生し活用しきれないパン耳を乾燥加工して、クラフトビール(酒税法上は発泡酒)の原料として使用した「蔵前WHITE」を企画・開発し、アサヒグループの外食店舗でも販売した。サンドイッチ店からパン耳を回収して乾燥加工する役割を障がい者施設の利用者が担った。

これからどうしていきたい

フランスの観光会社が「KURAMAEモデル」を調べくれて、ツアー会社を通じてKURAMAEモデルに参加するお店やスポットを案内したことがあった。蔵前の商店街全体を、「サスティナブルな街」としてPRできた。また「下町そぞろめぐり」というスタンプラリーを企画して、SDGsやウィルビーイングな取組みをしているスポットだけが参加できて、お客さんがめぐって話の花を咲かせるイベントも成功を収めた。サスティナブルなことを小さくからでも始めたい人たちの集まりを目指したい。

パッションポイント

映画

公式サイト、出版物など

珈琲焙煎処 縁の木(えんのき)

オンラインショップ

KURAMAEモデル

Instagram(@en_no_ki)

Twitter (@KURAMAE_model)

チケット(私のできること、得意なこと)

・コーヒーのドリップパック1個プレゼント
・縁の木に来てください。お話ししましょう

※チケットをお願いする時、『ソーシャルタウンガイド』を見たと連絡するとスムーズです。
※コンタクトはSNSのメッセンジャーから連絡をお願いします。

お気に入りの場所(ホーム)

蔵前
東京都台東区蔵前

お気に入りの場所(アウェイ)

茅ヶ崎
神奈川県茅ヶ崎市

つながり

清瀬由佳(NPO法人チルドリン徳島)

薮原和雄(鶯谷ハニーラボ)

※つながりは、紹介したキーパーソンとのつながり、または今後インタビュー予定の方です。

取材後記

清瀬由佳さんからの紹介でインタビュー。調べたら調べるほどにすごい取組だということを事前に知りインタビューに臨みました。しかもお店が勤務先と近いというもあって(まだ行けてないですが)親近感も湧きました。KURAMAEモデルもスタンプラリーも素晴らしい取組だと思いました。(野田)

インタビュー・野田国広(編集部)
グリーンドリンクス川崎のオーガナイザーをはじめ、かわさき新聞などのWEBメディア運営、シェアオフィスのコミュニティマネージャーなどを勤める。福岡市出身、川崎市在住。
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