100人、100通りの人生とまちの風景、キーパーソンに会いに行こう

【福岡】大塚智子(旅するプランナー)

ソフトバンクの人事や起業家支援などを経て、全国各地のプロジェクトやボランティアに参加。訪れる土地で、文化や考え方の違いを学びながら生きていたいと語る大塚智子さんにインタビュー。

プロフィール

福岡県出身。大学で地域経済を学んだのち、ソフトバンクグループで人事・検証エンジニアとして7年半勤務。その後、社会課題解決を目指すスタートアップを支援するMistletoe株式会社で創業支援事業に4年半携わる。個人の活動として、地域コミュニティ・教育・キャリア形成に関するプロジェクトに多数参画。2011年の東日本大震災以降、現地で家屋清掃やマッサージなどのボランティアに参加しながら、現地における「震災関連死」という問題に向き合い、心理学を学び始める。その過程において、Bridge Kumamoto、Take Peace Projectをはじめとした復興に向かうプロジェクト活動に参画し、防災士、防災介助士として地方自治体の防災計画にも相談をお受けすることも。現在は主に、大分県、長崎県をはじめとした自治体の創業支援、九州圏内の大学での講義、またベンチャー企業の成⻑支援などを中心に活動している。これまで旅をしてきた国は58カ国ほど。

探究心は小さい頃から

生まれは熊本で、その後福岡県八女市で育つ。兄妹は大塚さん含めて4人。大学で経済・経営を学んだ後、新卒でソフトバンクに入社。在籍中に立ち上げた教育プロジェクトに本腰を入れるため退職。起業家のサポートに携わりながら、福岡にUターンしてからは防災事業に参画。2019年は1年間で海外34カ国を放浪と、駆け抜けた人生である。現在も国内外で7つのプロジェクトに関わっていると言う。

小さい頃から探究心が強く、畑の中に段ボールで秘密基地を作ったり、防空壕で遊んで怒られたりしていた。高校生の時には、実家にはタイやマレーシアの留学生がホームステイしていたそうだ。英語はうまく話せなかったが、カタコトの英語で会話する中で、国が違うと常識も価値観も正義も違うということを知った。地続きの地球で、生まれた環境で苦しみを抱えている人、息を潜めて暮らす人たちが大勢いる。自分がこの世界のことをちっとも知らないことにショックを受けたそうだ。それからバックパッカーでアジア圏やヨーロッパを旅したり、国内外のボランティアやプロジェクトに積極的に参加し始めいく。

ずっと学び続けたい

2019年、海外34カ国の旅の始まりはスペインのバルセロナからだった。好きな場所にも挙げているサグラダファミリアで、彫刻家の外尾悦郎さんに会い、自分の生きる苦しさを涙ながらに話したとき、「君が健康で、友達や家族もいるんだったら、きっと大丈夫だ」と声をかけてもらったことが、大塚さんにとって大きな励みとなり今に生きてるそうだ。

異国を一人で旅していると、何が好きかとか、どんな生き方をしていきたいかと聞かれる。日本にいる時は、正解だと思っていたことも、海外では不確かに感じたり、その不確かさが正しいとも感じたり。全部正解で、ある意味全部間違いだと思えるようになった。旅先で出逢う人は、いつしか独りよがりになっていた自分に気づかせてくれる。自分は無知であることを受け入れることから全ては始まる。だから生きている限り学び続けたい、と語る。

海外放浪から帰ってきて、世界で起きていることに目と心を向けながらも、身近で困っている人を助けたいと思った。これまでに出会った人たちとの縁もあって、いくつかのプロジェクトに参画している。かつては起業したいと思ったこともあったそうだが、今はビジョンを持ったリーダーを側で支える方が性に合ってると気づいたという。前線で動く人、裏で支える人、チームの誰一人も不幸であってはいけない、チーム全員が幸せでないと成功と言えない。そのような想いで、21年に延期開催された東京五輪では、会場演出チームの取纏め役を担った。

「はなれていてもあったかい」湯の花プロジェクト

2020年世界中でコロナ禍となり、旅が好きで出会いとご縁があって生きてこれたという大塚さんは、人の移動も制限され、人に会えないストレスが溜まり爆発寸前だった人間の感情について、とても自然なことだと話す。大切な人に会いたくても会えない、その想いをどうにかできないか。「会えなくても心は繋がっている」ということを伝えて、ホッとしてもらいたいと思ったそうだ。

100カ国の人が住む大分県の別府市との縁は、1年の海外放浪から帰ってきてからのこと。まるでアムステルダムやベルリンのような良いカオス感と寛大さを街に感じ、第二の故郷のように訪れるようになったそうだ。別府の鉄輪(かんなわ)温泉という地区は、一年中湯けむりが立ち昇っている。源泉数は2,300箇所以上で、湯量は日本最大。1回100円で入れる市営温泉が町中にある。

別府市が立ち上げた一般社団法人別府市B-bizLINKでは、薬用入浴剤「湯の花」をポスト投函可能なサイズにパッケージングし、オンラインや店舗で販売するプロジェクトを発足。パッケージ箱にメッセージを書き、120円切手を貼って宛先・ 差出人を記入するとポストに投函できるプロジェクトを開始した。湯の花で温泉気分を楽しめて、会えない人に「あったかい」気持ちを届けるというギフトで、全国から問い合わせが殺到。全国から届くお礼の手紙に、誰かの人生の一片に関わっていることの重みと感謝を覚えたそうだ。

これからどうしていきたい

この10年間をふりかえると、1人でできることも、チームになると喜びも一層大きいと感じている。国境を越えて、思い込みもプライドも捨てて、その土地の歴史や考えの違いを知って、より良い社会をみんなで作りたい。違いを受容できる社会を目指したい。それがきっと平和に繋がるから。

パッションポイント

旅と映画

公式サイト、出版物など

公式サイト  Blue Empathy

チケット(私のできること、得意なこと)

・自然の中で一緒に話を聞きます。

※チケットをお願いする時、『ソーシャルタウンガイド』を見たと連絡するとスムーズです。
※コンタクトはSNSのメッセンジャーから連絡をお願いします。

お気に入りの場所(ホーム)

八女中央大茶園
福岡県八女市本1699

お気に入りの場所(アウェイ)

サグラダファミリア
Carrer de Mallorca, 401, 08013 Barcelona,

つながり

小島健一(サンバシ)

・今吉直樹(キリシマビト)

※つながりは、紹介したキーパーソンとのつながり、または今後インタビュー予定の方です。

取材後記

大塚さんとの出会いは東京都内でのコミュニティで知り合ったのがきっかけ。久しぶりにオンラインでお話ししましたが、ストレートでピュアさが伝わってくる。(野田)

インタビュー・野田国広(編集部)
グリーンドリンクス川崎のオーガナイザーをはじめ、かわさき新聞などのWEBメディア運営、シェアオフィスのコミュニティマネージャーなどを勤める。福岡市出身、川崎市在住。
野田国広の記事一覧