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【さいたま】宮本恭嗣(ハムハウス)

再開発コンサルタント、東洋大学大学院公民連携専攻などを経て独立。現在は、さいたま市PPP(公民連携)コーディネーターも務める傍ら、自身が市職員として携わった旧大宮図書館活用事業「Bibli」に、民間事業者として「ハムハウス」を開業する宮本恭嗣さん。

プロフィール

1973年東京都生まれ 2012年東洋大学大学院公民連携専攻修了 都市経営プロフェッショナルスクール1期生 再開発コンサルティング会社で、まちづくりに関する各種調査・研究、まちづくりコーディネート、再開発事業コンサルティングに従事するも、人口も経済も右肩上がりを前提とした開発手法に疑問を感じ、大学院修了を機に独立。 各地で公民連携の仕組みづくりやリノベーションまちづくりに取り組む。 2015年~2017年に開催されたリノベーションスクール@北九州の公務員リノベーションコースの企画運営を通じて、全国に多くの公務員の仲間ができる。 20184月より、非常勤特別職(現在は会計年度任用職員)として、さいたま市PPPコーディネーターに着任し、PPPの企画立案や庁内の啓発に取り組む。 週34日は、まちにダイブを繰り返し、3年で市民100人と友達になる目標を2年足らずで達成。 そこで出会った仲間との公共空間活用の取り組みを通じて、市民や市職員に公共空間の可能性を可視化し、政令市初の庁舎へのランチタイムのキッチンカー導入を実現するなど様々な公民連携事業に取り組む。2022年、旧大宮図書館に「ハムハウス」を開業予定。

信州大学で建築を学ぶ

生まれたのは東京だが、3歳くらいに流山へ、小学生の時には松戸へ引っ越し、高校生までは千葉県で過ごす。子どもの頃は『西部警察』『Gメン75』を観るのが好きで、少年ジャンプもよく読んでいたので、刑事や漫画家への憧れがあった。高校生くらいからテレビで世界遺産を紹介する番組を見て、建築に興味を持ち始めた。大学は長野県にある信州大学に進学。社会開発工学科を専攻し、2年から建築コースに進んだ。

大学時代の研究テーマは、松本市の縄手通り。四柱神社、参道の露店から始まり、戦後には闇市が立ち、道路を占拠する状況だったが、やがてそれが公共に認められた商店街として残っていった場所だ。その成り立ちについて研究していくうちに、まちへの興味が深くなった。縄手通りのまちの在り様が面白く、残って欲しいと思った。地域の人にもインタビューをし、昔の風景を図書館で調べた。そしてまちづくりの仕事をしたいと思うようになった。大学院から再開発コンサルタント会社に就職。

東洋大学での出会い

再開発の仕事は主に調査研究から始まった。しばらくしてから再開発を推進する仕事に就くようになり、宇都宮発祥の地と言われる神社の参道脇にあった百貨店跡地で、12階が店舗、3階から上がタワーマンションという近年では全国各地に見られる典型的な再開発事業の立ち上げから清算まで担当した。好立地なだけにマンションは完売するのだが、購入している人たちは資産として持つ方が多かった。そうした再開発という仕事に疑問を抱くようになってくる。

参道を挟んだ向かい側にあった同じ百貨店跡地の商業・業務・公共施設の複合型再開発にも携わったが、テナントがすべて決まらずうまくいかない。集客面も苦戦をして悪循環でテナントが出ていく、結果的には雑居ビル化してしまう現状を目の当たりにした。またインターネットで検索しても同じ様な形の再開発ばかりで、金太郎飴を作ってるような仕事にジレンマを覚えた。転職も考えたが、思うようにいかず不毛な時間が過ぎる。

ある日、のちにリノベーションスクール北九州などを立ち上げた清水義次さんのインタビュー記事を読んだ。再開発の代名詞でもあるスクラックアンドビルドではなく、地域の空き店舗などを地域資源と捉えて身の丈にあった、その街に足りないコンテンツを補うという発想に衝撃を覚えた。学生時代に松本で歴史や文化、景観が残る街を見て好きになったように、住民が主体的に街を変えていくとうことが新鮮だった。自分がやりたかったことが、その清水さんの記事で見つけれた。記事にはプロフィールも載っていて、東洋大学で公民連携について教えていると書いてあったので、東洋大学で社会人大学院生として働きながら学ぶことにした。

リノベーションスクール北九州

2012122日、中央自動車道の笹子トンネルで天井板が落下するという事故が起きた。老朽化が一因とされ、この事故をきっかけに全国でインフラの点検が行われ、公共施設・インフラの老朽化対策論が一気に高まることになった。その老朽化について早くから警鐘を鳴らしていた根本先生が東洋大学にいて、人口減少で財政も厳しく、維持管理が厳しい公共施設が大半を占めている中、公民連携、民間企業と手を取り合ってやっていくべきだと語っていた。

東洋大学でゼミをしていた清水先生が北九州でリノベーションスクールを2011年に立ち上げ、その2回目の開催に宮本さんは参加。リノベーションスクールは異様な熱気があった。34日で合宿を行い、北九州市の小倉にある実際の空き家、空き店舗を題材に、それらをどう再生するか。事業化することを目標として掲げられ、収支計画を組みビジネスでどう成立するかを、そのオーナーにプレゼンまで行った。3回目以降となると前回提案したプロジェクトがどこまで進んでいるのか分かり、街の変化が見えてきた。シャッター通りだった場所に人が集まってきて3年で目に見えて変化が出てきて、その後、全国にリノベーションスクールが拡がるようになる。

同スクールには、対象物件を期間中に実際にDIYする「DIYリノベーションコース」、公共空間を楽しくしたり、実験的な取り組みをする「公共空間活用コース」、行政の協力なしではできないことから公務員自身をリノベーションの対象案件とする「公務員リノベーションコース」があった。熱量の多い公務員をたくさん増やしたいということで「公務員リノベーションコース」はスタートした。そのコースの企画運営を宮本さんが任させることになり、それがのちに大きな転機となった。そこで多くの公務員とも出会うことができた。

旧大宮図書館でハムハウス開業

武蔵一宮氷川神社の二の鳥居、参道の横にあった築50年の旧大宮図書館。2019年に大宮区役所新庁舎と新図書館の複合化に伴い閉館となった。さいたま市はこの図書館を解体せずに民間事業者に貸して、地域の拠点作りをすることにした。戸田建設関東支店など4社で構成するグループ「OMIYA COMMON LIBRARY」が事業者となって、施設をリノベーションした。さいたま市が使われなくなった公共施設を民間活用で行う事業としては初めての事業である。宮本さんはPPPコーディネーターとして手伝っていた。

自転車を核とした観光・地域ビジネス・発信拠点となることを目指して、1階が飲食店、物販店舗、イベントスペース、2階はさいたま観光国際協会、保育施設、オフィス、3階はコワーキング・オフィス、屋上テラス、地下にはスタジオができる予定。さいたま市を拠点に全国各地で自転車運動会のようなイベントを展開する『バイクロア』が1Fに拠点を構え、自転車で巡る大宮観光ツアーデスクや子ども自転車教室なども行う予定。施設の名前は、本や図書館を意味する「Bibli(ビブリ)になった。

宮本さんは、Bibliの1階奥に残る、図書館時代の本棚を活かして「地域・本・食のシェアプレイス・ハムハウス」の開業にあたってクラファンにも挑戦した。ハムハウスは、全国の公務員バイヤーが選んだ逸品が並ぶアンテナショップ「ハムショップ」、1棚1オーナー制の図書館&本屋「ハムブック」、キッチンカー専用のシェアキッチン「ハムクック」からなるシェアスペースだ。”小さな「公」が集まる場所” を文字って「ハムハウス」と名付けた。ハムハウスのハウス(HAUS)はドイツ語で家や建物、会館などを意味している。

ハムハウスのクラウドファンディングサイト

これからどうしていきたい

縁があって、さいたま市に来た。ずっと自分には地元がないのがコンプレックスだったが、これまでの4年間でナイトマルシェなどを市民や民間の方々と一緒に企画してきて、PPPコーディネーターでなくなったとしても、今後もさいたま市に関わり続けたいと思うようになった。さいたま市は人材の宝庫でありながらも、地域に関わり持ててない人が多いので、ハムハウスから、まちの楽しみ方が生まれる場所にしたい。

パッションポイント

まちを歩くのが好き

公式サイト、出版物など

公式サイト

チケット(私のできること、得意なこと)

・ビブリや大宮の街を案内します

※チケットをお願いする時、『ソーシャルタウンガイド』を見たと連絡するとスムーズです。
※コンタクトはSNSのメッセンジャーから連絡をお願いします。

お気に入りの場所(ホーム)

さいたま市役所前広場
埼玉県さいたま市浦和区常盤6丁目4−4

着任した平成307月に、この風景(毎年7月~8月に「水の流れる段床」と言われる階段状の広場に水が流れ近隣のママがお子さんを連れて遊びに来る風景)を見て、これまで見たどの役所にもない素敵な風景だと思い、地元のパパ友グループとこの広場でナイトマルシェを開催したことが全ての始まりでした。

大崎公園(子供動物園)
埼玉県さいたま市緑区大崎3170-1
公式サイト

首都近郊における貴重な大規模緑地空間である見沼たんぼに隣接する都市公園。さいたま市唯一の市営動物園があり、生い茂った木々の木陰と芝生広場が気持ちよく、週末には市内外から家族連れで賑わう知る人ぞ知るおすすめスポット。

お気に入りの場所(アウェイ)

アムステルダム

つながり

鈴木真(KAWASAKI LOCAL DOOR)

高橋浩志郎(草加市役所)

三ツ口拓也(一般社団法人うらわClip

※つながりは、紹介したキーパーソンとのつながり、または今後インタビュー予定の方です。

取材後記

鈴木真さんからの紹介でインタビュー。ちょうどタイムリーに「Bibli」(ビブリ)ができて、ハムハウスのクラファンもはじまったタイミングでのお話だったので、旬な話を伺えました。再開発は個人的にも好きなので前半の部分は時間を割いて色々聞いてしましましたが、今後のさいたまでのご活躍期待しています。遊びにも行きます。(野田)

インタビュー・野田国広(編集部)
グリーンドリンクス川崎のオーガナイザーをはじめ、かわさき新聞などのWEBメディア運営、シェアオフィスのコミュニティマネージャーなどを勤める。福岡市出身、川崎市在住。
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