中村憲剛 引退セレモニー全記録(2020年12月)
2021/05/25
引退セレモニーでのスピーチ全文
「こんばんは。川崎フロンターレの中村憲剛です。まずこのコロナで外出するのも大変な中、寒い中、足を運んでくださったみなさん、本当にありがとうございます。DAZNさん、僕のような人間のためにここに来られない人たちのために生配信をしていただき、ありがとうございました。ずっとこの日が来ないことを考えていて、けれども今VTRを見て、俺引退するんだって思いました。会見もしましたし、発表もしましたし、自分の中では他人事のようなところがあったのかなと今は思います。でもこれだけの人が来てくれて、最初から消防車がはしご伸ばして幕を出してくれたり、桐谷さんチャリンコ乗り回してパトカーが追いかけたり。最初はこのクラブすごいなって思ったんですけど、それは全部、俺のためにやってくれたことで、みんなありがとうって言ってくれましたけど、ありがとうを言いたいのは僕の方です。なんでもない大学生を拾ってくれたフロンターレに感謝しかありません。本当にありがとうございました。
僕はフロンターレで学んだことがあって。Jリーガーはお金を稼いで、いい車に乗って、いいものを買って食べて…サッカーをすればいいって僕は入る前、本当にそう思ってました。けどこのクラブに入ってそうじゃないことに気づかせてくれました。地域密着、川崎市の皆さんを笑顔に元気にするって合言葉を持ったクラブに入ったことで、多くの方と接し、多くのものを学び、何より僕自身がみなさんとふれあうことを楽しみにしてました。
今でも忘れません。2003年開幕戦。雨でした。3、4000人しか入りませんでした。ホントかって思いました。それでも地域密着を続けて、ともに歩んできた結果、今フロンターレはこれだけ大きなクラブになりました。これは先輩たちから始まって、川崎フロンターレをいいクラブにしたい、川崎を強くしたいと思うクラブサポータースポンサーのみんなが同じベクトルを向いた結果だと思いました。
自分がただサッカーをやってればいいって発想の人間だったらここまでプレーヤーとして続けられなかったし、地域のみなさんを巻き込んで大きくなることはなかった。フロンターレに拾ってもらって心から良かったと思ってますし、18年間感謝の気持ちしかないです。
この後、今いる選手たち、クラブ、スタッフ、サポーター、スポンサーの皆さんからこれまで以上に愛されるクラブになってほしいと心から願っています。関わる一人一人がフロンターレ愛を持って、それぞれの立場からフロンターレのために戦ってほしいと思います。
フロンターレに入りたい、フロンターレを目指している子どもたち。僕は小さい頃高校は入ったときは小さくて、今も体は華奢(きゃしゃ)ですし、強くないですけど40歳までプレーすることができました。何が言いたいのかと言うと、体の小ささや身体能力とかはハンデじゃないということ。おそらく小中学生、高校生悩んでる子はいっぱいいると思います。でもそうじゃないと僕のキャリアが言ってます。みんなに可能性があります。自らフタをしてほしくないし、指導者の方も小さいから使わない、足が遅いから使わない。そういう目線で見ないでほしいと心から願っています。逆にそのハンデをチャンスだと思ってください。周りの環境やチームメートに文句言ったり、そういうのは一切関係ないです。全部自分にベクトル向けてください。その気持ちを持って一日一日頑張れば、必ず道はひらけます。そしてまわりが助けてくれます。今サッカー選手になりたい、でもちょっと悩んでる子どもたち。明日からまた新しい気持ちでボールを蹴ってほしいと思います。
そして川崎フロンターレは頑張った選手に素晴らしい舞台を用意してくれる最高のクラブです。一人でも多くこのような引退セレモニーが行われることを心から願ってます。
最後18年間、前十字(靭帯)を切ってしまいましたが、大きなけがなくプレーできる体に生んでくれた、育ててくれた両親、今でもずっとサポートしてくれる姉2人。本当にありがとう。僕はみんなのサポートがなければここまで頑張れなかったと思っています。本当に中村家の人間で良かったです。
先ほど素晴らしい文を書いてくれた息子。パパは3人がいたからここまで頑張ることができました。3人にこの景色を見せられて父親として誇りに思います。みんなと悔しい思いをした時期もありましたけど、優勝を喜べたことは決して忘れません。加奈子さん、僕はたぶん君がいなければここまでには育ってなかった。どんなときもポジティブなことを言ってくれて、前向きに自分とは逆のことを言って常に引っ張ってくれた。感謝しかないです。あなたと会ってなければここまでになってなかったと思います。出会ったのは大学4年からですけど、ありがとう。これからもよろしくお願いします。
最高のプロサッカー選手生活でした。川崎フロンターレに入れて良かったです。みんなに会えて良かったです。僕は頼もしい後輩たちみんなにフロンターレを任せて先のステージに進みたいと思います。これが選手として最後に話すことになると思いますが、今日のこの景色は一生忘れません。本当に感謝してます。フロンターレ最高です。ありがとうございました。