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【神奈川】小林宏行(トランジションタウン藤沢)

社会人として働く一方でトランジションに関心を寄せ、自らシェアシードやオフグリッド発電などの普及活動に取り組む小林宏行さんにインタビュー。

プロフィール

小林宏行(こばやしひろゆき)

1977年生まれ。会社に勤務する傍ら消費社会や金融経済等の社会システムへの依存からのトランジション(移行)に関心を持つ。楽しみながら暮らしに農を取り入れ野菜やハーブのたねをシェアするShare Seeds(シェアシード)の活動を行う。

トランジション

普段は会社員として働きながら、トランジションやShare Seedsに関心を持ち、その普及活動も行なっている小林さん。自宅の庭に野菜を植えたのがひとつのきっかけとなり、身の廻りに既にある物質を循環する生き方について考えるようになっていく。

トランジションとは「移行」のことで、例えば持続可能性の低いエネルギーや消費社会への依存からの脱却が挙げられる。お金というシステムも移行の対象だ。お金は便利だが、それがあることで戦争が起きたりグローバリズムが進みすぎて格差が広がったりお金を稼ぐために時間に追われ過ぎたりするという。

大きな課題を前に茫然としそうになるが、見方を変えれば人口比率が高い自分のような普通の会社員が少しずつ考え方と行動を変えたら大きなインパクトになる可能性があると考え、持続可能な暮らしへのトランジションを楽しみながら実践することに意義を感じている。

具体的にはパーマカルチャーの考え方を取り入れ様々な野菜やハーブを育てる家庭菜園、ソーラーパネルによる小規模オフグリッド発電、雨水タンクの設置、キエーロ・コンポストのDIY、太陽の光と熱で野菜やハーブを乾かすソーラーフードドライヤーのDIYなどを持続可能な暮らしを無理せず実践しブログ記事に残している。

たねのシェア

もうひとつ特徴的な活動として、家庭菜園や畑で採れた野菜やハーブのたねをシェアするShare Seeds(日本における発起人:末木秀和さん)がある。例えば庭やプランターにリーフレタスのたねを植えて大きく育った外葉を少しずつ収穫しては食べる、を繰り返す1m程の高さまで塔立ちして花が咲き綿毛のたねが実る。自分が必要とする以上にたねが余った場合は誰かにお金を介さずギフト(恩贈り)する。それがシェアする“たね”プロジェクトShare Seedsだそうだ。

うまく育つと、たねが大量に余るため「自然に寄り添いつつあるものを活かせば人間はより豊かに生きられるのではないか?」という感覚が得られ、大量消費的な社会のあり方に対する解決策のヒントになり得ると考えるようになった。

またShare Seedsの活動はその後のさまざまな行動のきっかけにもなったと語る。小林さんは、たねをシェアしていたら野菜の苗やDIYで制作したソーラーフードドライヤーをギフト(恩贈り)したくなり、ご近所さんや知人にギフトしたそうだ。ギフトしていると思いがけないところから必要な物がタイミング良く巡ってきたり、新たな人との出会いに恵まれたりするように思える。多くの人々の間で家族同士のようにギフトが循環する先に、豊かさや誰もが好きなことをして暮らせる世界があるかもしれない。

大きな社会課題に対する家庭菜園とたねのシェア。活動の最初の一歩は「野菜の苗をいただいたので自宅の庭で家庭菜園を始めざるを得なくなったから」だそうで、自らもたねや苗をシェアして農的暮らしを始める人を増やしたいと考えている。

これからどうしていきたい

農的な居場所を増やしたい

農家さんが代替わりで米作りができなくなった田んぼを使わせてくださって3年目。不登校の子どもとその親たちの居場所として大勢の仲間と協力して機械を使わずに田植えや稲刈りを行っている。

参加者は必ずしも農作業をしなくても良く、走りまわったりゲームをしても大丈夫。最も大切なのは存在の肯定(being)であり、何をするか(doing)はその次。同じ場所で同じ時間を過ごすことが各々の存在の肯定になる。親が子どものために何かするのではなく親自身も楽しむことが大切。自分が自分でいられる場として田んぼや畑は理想的かつ暮らしの延長線上にあることに価値を感じている。

「私は会話のキャッチボールがあまり得意ではないですが、農作業しながらだと会話に沈黙が挟まっても違和感が少なくなります。むしろリラックスして普段は口に出さないような話題が飛び出したりして会話が弾むこともあります。」

この田んぼの活動は親子関係や集団行動の固定観念からのトランジションでもあると自分なりの意味付けをしており、成功事例を作ることにより市民が遊休農地を利用しやすい仕組みが作られ、このような場所が増えるきっかけになると良いと願っている。

トランジション・タウン

移行を目指す人たちのネットワークがトランジション・タウン(TT)。 イギリス発祥のTTだが日本国内にも神奈川県相模原市の藤野地区をはじめとする全国にTTが存在する。社会的な課題を共有しつつローカル・コミュニティを造るTTのあり方と実践に共感し力を与えられた。

「藤沢市にはTT的な活動をしている人が多いのでトランジション・タウン藤沢があっても良いですね。」とSNSに投稿したところ友人がすぐに立ち上げた。しかしその友人が移住してしまい、どうしようかなと思っている。「私は日々の暮らしの延長として活動していますが、TTの考え方と実践をより上手に伝えられると良いと思っています。関心がある方はぜひご連絡ください。」とのこと。

パッションポイント

ギフト(恩贈り)の実験、暮らしを豊かにするDIY 、ソーラークッキング

公式サイト、出版物など

消費から循環へ

シェアする“たね”プロジェクト Share Seeds

チケット(私のできること、得意なこと)

・野菜やハーブのたねをお譲りします

※チケットをお願いする時、『ソーシャルタウンガイド』を見たと連絡するとスムーズです。
※コンタクトはSNSのメッセンジャーから連絡をお願いします。

お気に入りの場所(ホーム)

NPO法人さんわーくかぐや

障がいがあってもなくても、自分らしくありのままに、いつでも仲間と一緒に過ごせる場所 活動日である平日にShare Seeds の種BOXを置かせていただいています。

お気に入りの場所(アウェイ)

長崎県東彼杵郡川棚町高原(こうばる)地区

理想的な農的コミュニティがある集落ですがダムの建設予定地となっている場所です。 (家族で現地に行ってきた際のレポートが個人サイトにあります)

つながり

石井光( EdiblePark湘南 )

西永雄二(東リ町アートフェス)

※つながりは、紹介したキーパーソンとのつながり、または今後インタビュー予定の方です。

取材後記

石井光さんからの紹介でインタビュー。インタビュー前に質問項目を埋めて送っていただき、今回はほぼそのテキストを活かす形で記事にしました。(野田)

インタビュー・野田国広(編集部)
グリーンドリンクス川崎のオーガナイザーをはじめ、かわさき新聞などのWEBメディア運営、シェアオフィスのコミュニティマネージャーなどを勤める。福岡市出身、川崎市在住。
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