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【新潟】高木千歩(妻有ビール)

地域おこし協力隊として生まれ故郷の十日町へ。農家支援などを行ったのち、クラフトビールを学び妻有ビールを誕生させた高木千歩さんにインタビュー。

プロフィール

1973年十日町市生まれ。新潟市で7歳まで育ち、その後は父の転勤のため、あちこちで暮らす。大学卒業後は、IT企業などで営業職を経験。2011年に「地域おこし協力隊」として十日町市に移り住み、2014年、共同経営者と「ALE beer & pizza」をオープン。2017年に妻有ビール株式会社」を立ち上げる。中学、高校時代に吹奏楽部でアルトサックスを担当していて、現在は趣味としてジャズバンドで演奏を楽しんでいる。

地域おこし協力隊で十日町に移住

新潟県十日町市で生まれるも、父親の仕事の関係で転勤が多く、引っ越しが多く実家というものがなかったという高木千歩さん。十日町には両親の実家があり、いつか関われたらいいと思っていた。大学を出て東京の会社に勤務していた2011年、東日本大震災が発生。そのときに都会の生活のもろさを感じる。またその頃、父親が亡くなる。そうした状況が重なり十日町に行くなら今かなと思い、転職先を探しはじめた。

地域おこし協力隊の募集を見つけて、2011年から十日町に引っ越してきた。過疎地域に、地域外の人材を受け入れ、活性化につながる活動を行い、地域力の維持・強化を図っていくという総務省の制度で、十日町市の嘱託職員として活動を開始した。地域の方と農産品の販売促進や地産地消の推進の取り組みをしてながら、野菜、お米のことを農家さんに教えてもらった。

地産地消の意味を知る

活動していると地域課題も見えてくる。かつて大家族だった家庭は、子どもたちが市外、県外に出ていき2人きりとなっている。家族の人数が減っても、田畑の面積が減ることはなく、2人では食べきれない野菜が大量に余ってしまう。近所に配っても余り、結局廃棄することになって、農作物をつくる意欲も無くなってしまうのだ。同い年の農家の男性が「この地域ではみんなで一丸となって何かに取り組んだことがないので、何かやりたい。地域の野菜の直売所をやるとかどうだろう」と話してくれた。そしてその方を代表に、地域おこし協力隊の先輩も一緒に、農作物の販売を始める。

直売所でも売れ残ってしまう野菜もあり、今度は野菜を車に積んで十日町市内の飲食店を回って販売し始めた。地元産の野菜ということで飲食店やデイケアセンターの給食室などで大変喜ばれたそうだ。観光で来るお客さんだけではなく、十日町市の店や施設の方々も喜んで、地元も活気付く。農家さんたちは、売上は100万円だと報告すると来年も頑張ろうと盛り上がってくれた。金額の大小ではなく、目に見えた結果があると、次につながっていく。地域活性化のためにも続けなければと思った。

ある日、山菜取り名人のおじいちゃんに売上金を渡して別れた後、携帯に着信がありました。金額が少ないって怒られるかなと思いながら電話に出てみると「たくさん入っていて、本当にありがとうね。このお金でばあちゃんと何かおいしいものを食べに行くからね」と言ってくれた。作る人も売る人も、買う人も喜んでくれて、地産地消につながっているという手ごたえを感じたそうだ。

妻有ビールの誕生

地域おこし協力隊の任期が3年で終わる前に、妹夫妻と義弟の友人の4名で株式会社YELLを設立した。2014年4月にクラフトビールとシカゴスタイルピザを提供する「ALE beer&pizza」をオープン。地場産のものを使ったビールを自ら手掛けることができないかと考えるようになった。ある日、醸造家・丹羽智さんが手がける甲府のアウトサイダーブルーイングに行く機会があった。そこは商店街の空き店舗に醸造施設が入っていて驚いたそうだ。小さな設備でも美味しいクラフトビールを作れることを知った。丹羽さんに様々なことを教えてもらい、資金集めに奔走した。

施設整備費用の一部は、クラウドファンディングで170名の方に209万円の支援をしてもらい、「妻有ビール」はスタートしていく。定番は「豪雪ペールエール」で、味と香りのバランスにこだわったビール。「十日町そばエール」は、十日町産のそばの実をローストして使っていて、そば茶のような香ばしい風味を楽しめる。「めでたしゴールデンエール」は、オレンジピールを使ったフルーティーな香りの強いビール。この3種類をスタンダードに揃えた。ほかにも「柏崎ウィートあんにんごの花」は、柏崎産小麦を麦芽に加工して使用。里山に咲くあんにんごの花の香りをふんわりとつけたビール。これはハンガリーに旅行した折に見つけた、エルダーフラワーをつかった花の香りのビールがヒントとなってるそうだ。

妻有ビールのマークは、十日町にある諏訪神社の 八角神輿(はっかくみこし)という八角形をしたおみこしがあり、そのおみこしをイメージして、八角形をモチーフに、 おみこしの頭の鳳凰(ほうおう)と麦をあしらった図柄にしている。小さい頃から夏祭りが好きで、毎年楽しにしていたという地域の伝統文化への想いも込めている。

これからどうしていきたい

これまでホップを栽培してきて、2年間収穫までできなかったが、今年ようやく出来た。地産地消型の醸造のひとつとしてこれからも取り組みたい。そのことを通じて耕作放棄地がホップ畑になっていったら景色がかわってくると思う。少しでも地域の課題解決や活性化につながるようにこの土地ならではの取り組みを考えていきたい。

パッションポイント

ビール、音楽でも地域とつながってる、アルトサックス、JAZZ

公式サイト、出版物など

公式サイト

Facebookページ 妻有ビール

チケット(私のできること、得意なこと)

十日町地域のおすすめの場所を案内します

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お気に入りの場所(ホーム)

棚田の風景

お気に入りの場所(アウェイ)

ハンガリー

つながり

飛田晶子(NPO法人越後妻有里山協働機構)

※つながりは、紹介したキーパーソンとのつながり、または今後インタビュー予定の方です。

取材後記

飛田晶子さんからの紹介。行動力と明るさを持ち合わせて、自ら切り拓いた妻有ビール。地域の想いとビール愛を感じるインタビューでした。妻有ビールも飲んでみます。(野田)

インタビュー・野田国広(編集部)
グリーンドリンクス川崎のオーガナイザーをはじめ、かわさき新聞などのWEBメディア運営、シェアオフィスのコミュニティマネージャーなどを勤める。福岡市出身、川崎市在住。
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