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【福島】野口福太郎(小高パイオニアヴィレッジ)

東日本大地震の原発事故で無人になった街で開拓者精神で起業家や若者が集まる拠点として、小高パイオニアヴィレッジのコミュニティマネージャーをされている野口さんにインタビュー。関東で生まれ育った彼がなぜ南相馬を選んだのか、お話を伺いました。

プロフィール

1997年埼玉県生まれ。早稲田大学 文化構想学部を卒業後、新卒学生が 2年間という期限付きでベンチャー経営者の右腕として働く「Venture For Japan」プログラムを通じて、株式会社小高ワーカーズベースに就職。同社が運営するコワーキングスペースのコミュニティマネージャーととして活動中。

人とのつながり、精神的な豊かさを求め

2011年に発生した東日本大地震による原発事故の影響で人口がゼロになった福島県南相馬市。同市小高区に『小高パイオニアヴィレッジ』という簡易宿所付コワーキングスペースがある。事業創出に取り組む起業家たちの働く拠点でもあり、地域とのコミュニティ拠点として2018年に誕生した。ドミトリータイプの簡易宿所もあり長期滞在もできる。まさにゼロから開拓としての場でもある。

そこのコミュニティマネージャーとして就職したのが野口さんで、早稲田大学に通いながらアルバイト生活をしていた大学3年生の頃、アルバイト、大学と自宅の往復という何も変わらない生活に危機感を覚えたという。何かを変えていきたいと考え始め、「アドレスホッパー」という定住しない生活に転換して、東京都内のゲストハウスやホステルを転々とする。そこで年齢や価値観が異なるいろんな人たちと出会っていく。また地方のゲストハウスなども訪れ旅しながら生活するという環境の中で、東京で働く面白さよりも地方の方がポテンシャルが高そうだと気づき始めた。

アドレスホッパーとは

固定の住居を持たず、全国各地のゲストハウスやホテルなどに移りながら暮らすことを「アドレスホッピング」といい、その生活をする人を「アドレスホッパー」と呼ぶ。生活コストを抑え、いろんな地域で暮らせるというメリットがある。

 

人の繋がりや精神的な豊かさが地方にあると感じたのと、浅草にあるホステルでアドレスホッパーしていた頃に出会った友人が浪江町出身で、地元を紹介され震災の被災地にはじめて訪問した。震災当時の野口さんは中学生だったので、初めて見た被災地は、ショッキングで衝撃を覚えたという。そんな状況を自分の目で見てスルーはできなかった。その頃に、株式会社小高ワーカーズベースの採用募集でコミュニティマネージャー募集を見つけ、南相馬にいく決意が固まった。

パイオニア精神で開拓していく

被災地でもあった南相馬で生活することについて、不安はなかったのと尋ねてみたが、アドレスホッパーをしていたので不安よりも知らない場所での適応力はあったのと、新しいシチュエーションでの変化や刺激を楽しめる方が大きかったようだ。また小高というコンパクトな町での生活も気に入っているという。

小高で出会った人の中で最も印象が深かったのは、小高ワーカーズベースの代表の和田さん。もともと小高出身で東京でITベンチャー企業でエンジニアなどやっていたそうだ。リモートワークで南相馬にいた時に、和田さんは震災に遭い、原発事故で無人になっていく地元で絶望感よりも課題が多く、チャンスだと感じたそうだ。

2016年7月に避難指示が解除されたが、帰還者3000人のほとんどが65歳以上だった。何もない場所でフロンティアのように開拓していきたいと考え、若い世代を呼ぶためにコワーキングスペースやホステルを作り、生活者のために仮設スーパーなど相次いで作って行ったという。そしてクラウドファンディングで小高パイオニアヴィレッジ構想を発表し建設された。

小高パイオニアヴィレッジ

福島県南相馬市小高区にあるコミュニティ施設。延べ床面積約280平米、鉄骨造りの2階建て。建築費用は日本財団の「東日本大震災復興支援 New Day 基金」の支援金やクラウドファンディングを活用。ひな段状で、吹抜けのコワーキングスペースは、最大50名規模のイベントも可能。2階はドミトリータイプのゲストハウスが5部屋。1階は共同作業場「メイカーズルーム」を設置。

福島県南相馬市小高区本町1−87
JR常磐線・小高駅徒歩5分(東京駅から約3時間半)

参照:makuake

 

小高パイオニアヴィレッジができて、地元の方たちの反応は好意的で、若い人たちが増えたことで町の風景を新しく作ってくれたと喜んでいるという。地域に与えたインパクトは大きかったようだ。震災から10年目を迎えた2021年3月11日には、コビリングサービスを提供するHafF(ハフ)の代表者や関係者たち10名ほど訪問してくれたらしく、長崎や福岡、東京などから集まって視察したそうだ。その時にも震災当時の話など聞いて、何もない場所で点からはじまり旗を振っていく役割の重要さを感じた。

南相馬には大学がないが、施設見学や地域留学などを通じて19歳から24歳くらいの若い世代が足を運んでくれるようになった。1階にあるガラスアクセサリ工房「アトリエiriser」(イリゼ)では、ガラスアクセサリー制作体験もできる。こうしたDIY体験も魅力のひとつだという。また地域の方とのBBQや飲み会も定期的に行われて、利用者のみならず地域とつながったコミュニティの拠点として根ざしている。

5部屋あるゲストハウスのうち、2部屋は起業するために移住してきた方の部屋として使い、残りの3部屋はADDressHarHを通じて宿泊予約(会員登録必須)ができる。

次の10年をつくるプロジェクト

震災から10年が経ち、この先10年を目指して、Yahoo!とソフトバンクと共に、Next Action → Social Academia(NASA)というプロジェクトがスタートした。「課題先進地」をフィールドに、若い世代『ゴールデンエイジ』が、3層プログラムに分かれて「次の復興10年」を創る社会を目指すというもので、小高パイオニアヴィレッジに常駐して1年以内の起業を目指すアポロクラスと、集中講義を通して準備をし中長期的な起業を目指すロケットクラス、オンラインを中心にアポロ、ロケットメンバーを支え一緒に価値創出をおこなうブースタークラスがある。

これからどうしていきたい

野口さんの人生の指針として、Will beingがあるが、これから先は Will dyingだと思っている。どう生きるかより、どう死んでいくかを大切にしながら、コミュニティ活動や事業を作っていく準備をしていきたい。

パッションポイント

アルバイトの初任給で買ったクロスバイクに乗って走ること。自転に乗って見る景色が好き。最高で30キロくらい走ったこともあります。

公式サイト、出版物など

小高パイオニアヴィレッジ (公式サイト)

note (ふくたろう)

Twitter (@fukutaros)

Instagram (@owl_drift)

チケット(私のできること、得意なこと)

・福島県小高町を案内します
・ファシリテーターのお手伝いできます

※チケットをお願いする時、『ソーシャルタウンガイド』を見たと連絡するとスムーズです。
※コンタクトはSNSのメッセンジャーから連絡をお願いします。

お気に入りの場所(ホーム)

村上海岸
福島県南相馬市小高区村上横砂

お気に入りの場所(アウェイ)

薬師湯のサウナ
公式サイト
東京都墨田区向島3丁目46−10

【じゃらん】国内25,000軒の宿をネットで予約OK!2%ポイント還元!

つながり

大塚誠也(Soft. Guest house)

※つながりは、紹介したキーパーソンとのつながり、または今後インタビュー予定の方です。

取材後記

野口さんとの出会いは、コミュニティマネージャーつながりで紹介してもらってインタビューすることに。プロフィールやSNSなどから見てもアクティブで人懐っこそうで優しい好青年という印象でした。(野田)

インタビュー・野田国広(編集部)
グリーンドリンクス川崎のオーガナイザーをはじめ、かわさき新聞などのWEBメディア運営、シェアオフィスのコミュニティマネージャーなどを勤める。福岡市出身、川崎市在住。
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