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【川崎】岡本克彦(こすぎの大学)

ワープロからPCへ、携帯からスマホへ2度の時代変化を受け、企業間共創や社内共創の取り組みを地域へ展開し「こすぎの大学」を立ち上げた岡本克彦さんにインタビュー。

プロフィール

NECに勤務し、ブランド戦略を担当。2011年、企業人が会社の枠を超えて価値共創する「企業間フューチャーセンターLLP」の立ち上げに関わる。その経験を活かして、自分が住まう街 武蔵小杉を中心に地域デザインに取組み始め、2013年よりソーシャル系大学「こすぎの大学」、シビックプライドに溢れる街づくりを目指した「川崎モラル」を企画運営する。公私を融合させた「働き方」や「楽しみ方」を模索中。

2度の大きな時代変化のなかで

出身は横浜市磯子区で、川崎市には2001年に引っ越してきた。大学を卒業した1995年からNECグループで働いてきた。入社時は家電製作の部門でワードプロセッサの担当だったが、ちょうどその年にMicrosoft社からWindows95が発表され、瞬く間にパソコンが普及していき、ワープロを使う人が激変し、2000年で出荷終了とななり会社も無くなった。その時に商品も会社も寿命があると実感したそうだ。

次にNECの携帯電話部門に異動。NTTドコモの iモードの大ヒットによって業績は右肩上がりをして、まさに携帯電話時代の中心にいた。自分たちがまるで勝ち組かのように有頂天だったと振り返る。当時は折りたたみ式の携帯電話や佐藤可士和氏とのコラボレーションデザインなど、出す機種、出す機種売れに売れていた。2008年、突然黒船の如くAppleから iPhoneが日本に上陸すると、様相が一変してしまう。それまで先の将来までガラケーが続くと思っていたそうだが、スマートフォンブームへと時代は変わり、携帯電話を作っていた会社も無くなった。

会社の外に出てみよう

2度の歴史的な時代変化の渦中にいた岡本さんは、自分たちだけでは何もできないという無力さを感じる。そこで会社の外に目を向けて出てみようと考える。その当時にワールドカフェという対話手法が、ビジネス界隈で多く耳にするようになっていた。カフェのようなリラックスした雰囲気の中で、少人数に分かれ、それぞれのテーブルで自由な対話をし、一定の時間で他のテーブルのメンバーとシャッフルして対話を重ねることで、いろんな意見や知識を集めるという手法だ。

2010年5月 、第2回 Future Innovation Cafe「モバイルワイヤレス通信の今後」に参加する。さらに翌年に「企業間フューチャーセンターLLP」として団体登録した際に、組合員として運営メンバーとして参画。後方サポートやホームページ制作担当として活動を支援する。そこで課題をみんなで解いていく対話で、アイデアが生まれ共創する面白さを実感する。マルチステイクホルダーとの対話によって価値を見出すことができた。

外で得た経験を今度は会社内へ

当日、コミュニティ系の学校として先駆者的な存在でもあったシブヤ大学の左京さんとも相談をし、そこのメソッドを導入して、NEC社内において役職や部門を超えた取り組みを考えた。いろんな企業同士でワールドカフェでの対話をし新しいビジネス共創を生み出したように、そこで得た経験を社内でも実現したいと考えた。そして2011年9月から2013年10月まで毎月第1水曜日に「ムサコ大学」という名で社内イベントを開催した。その頃は武蔵小杉にオフィスがあったので、「ムサコ大学」と命名した。

そのイベントでは、社内の人的ネットワークを構築して新しいビジネスを共創することを目的に掲げた。イベントの冒頭で、先生役の方に、自分の経験談や思いをプレゼンテーションしてもらう。その後、先生役の方の話を聞いて感じたことを、参加者の方々同士で対話して、明日からの行動につなげるようなプログラム設計をした。みんな仕事では見られない表情で楽しそうに参加してくれた。岡本さん自身も社内で「ムサコ大学」をやりながら、社会の人とは「企業間フューチャーセンター」でつながっていく。

会社から地域へ、「こすぎの大学」の誕生

会社の中や外ではいろんな人とつながっていたが、ふと自分が住んでる武蔵小杉には誰も知ってる人がいないと、ふと思ったそうだ。そしてどこか寂しさを感じた。「ムサコ大学」で社内の風通しがよくなったことを実感していただけに、今度は地域に出ようと思った。インターネットで地元のイベントを探していたら、NPO法人小杉駅周辺エリアマネジメント主催の「こすぎナイトキャンパス読書会」というイベントを見つけて参加した。そこで自分がやっていた「ムサコ大学」について紹介し、地域と連携したいと語ったところ、エリアマネジメントの保崎さんや大坂さんも、読書会以外で地域とつながりを作りたいと言ってくれて意気投合した。

そして、2013年9月「こすぎの大学」を読書会で知り合ったメンバーと一緒に立ち上げた。2014年5月には当日川崎市の副市長だった三浦淳さんを先生役として迎え、川崎の歴史をテーマに開催。同年9月にはシブヤ大学の左京泰明さん、11月には川崎フロンターレの天野春果さんも先生役で来てくれた。翌年にはパクチーハウス東京の佐谷恭さんを迎え、その発生イベントとして「プレ・ムサシシャルソン」を企画。朝10時に「ムサシ」の名がつく武蔵溝ノ口と武蔵小山に参加者が集まり、ウォーキングを楽しみながら、風景を写真に撮って、12時に新丸子のコワーキングスペース「You+」に集合し、一緒にランチしながら語り合うという企画も行った。

各回の先生役は自薦他薦方式で選ばれるという。2020年のコロナ渦以降はオンライン形式となったが、2021年には100回目を超えた。またリアルイベントして部活も誕生し、餃子を作って皆で楽しむ「餃子部」、多世代が集まってハイサワーを飲みながら楽しむ「ハイサワー部」なども立ち上がった

これからどうしていきたい

311 (東日本大震災)のショックが大きかったので、新型コロナは平常心でいられた。変化があることに対する予備訓練ができたんだと思う。人とつながれていることで、困難を安心できる。ずっと目標を言葉にできなかったのだが、この1年で思ったのが、SDGsという言葉をよく耳にするようになったが、誰1人取り残さない世界というこことに対して、違和感がある。一緒になって何かを作ったものこそ、自分ごとで受け止められる。逆に関与しなかったものほど、文句を言ってしまう。誰もが未来に向かって関与できる社会にしたい。関係性が大切だと思う。

パッションポイント

現在進行形、何が生まれるんだろうという楽しみ方を模索中。見つけることをモチベーションにしている。日々が楽しい。

公式サイト、出版物など

公式サイト   KATSUHIKO OKAMOTO

こすぎの大学

チケット(私のできること、得意なこと)

・自分の地域でコミュニティを立ち上げる時に役立つノウハウ集をあげます

※チケットをお願いする時、『ソーシャルタウンガイド』を見たと連絡するとスムーズです。
※コンタクトはSNSのメッセンジャーから連絡をお願いします。

お気に入りの場所(ホーム)

多摩川の河川敷(川崎市)

お気に入りの場所(アウェイ)

山ハイク

つながり

・片野絢子(078Kobe)

山本美賢(ノクチ基地)

※つながりは、紹介したキーパーソンとのつながり、または今後インタビュー予定の方です。

取材後記

岡本さんとの出会いは、グリーンドリンクス川崎を始めた頃。当時はまだ川崎市内のコミュニティは数えるほどしかなかったのですが、いろんなコミュニティ同士で連携しながらつながりを広げていったのが懐かしく覚えています。(野田)

インタビュー・野田国広(編集部)
グリーンドリンクス川崎のオーガナイザーをはじめ、かわさき新聞などのWEBメディア運営、シェアオフィスのコミュニティマネージャーなどを勤める。福岡市出身、川崎市在住。
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