高校を卒業して、福岡にあるプロジェクトスペースFANTASIA世界文化ビルに所属する勉強家・野元玲花さん。
野元玲花
2003年福岡生まれの19歳。2022年に福岡雙葉高校を卒業後、福岡平尾に拠点を置く事業創造のためのプロジェクトスペース「FANTASIA(ファンタジア)」に参画。肩書きは「勉強家」。2022年10月より、FANTASIA前の通行人に毎朝無料でコーヒーを提供する「 REIKA’S FREE COFFEE」をスタート。将来の夢は、人の時間を豊かにする公園を街につくること。来春からマレーシアのサンウェイ大学に進学予定。
REIKA’S FREE COFFEE 月曜〜金曜 朝7:30-9:30 at FANTASIA入り口
野元さんは今年の2022年3月に高校を卒業したばかりの19歳。福岡で生まれ育ったという。4年前、中学の修学旅行でシンガポールにあるチャイムスという教会に行った。教会の門を抜けた先に小さな公園があり、そこは老若男女が集う憩いの場になっていた。日本の公園ような「ボール遊び禁止」「ペット禁止」や「飲食禁止」などのルールがなかったことに驚いた。昼寝する人がいたり、本を読む人がいたり、おしゃべりする人の輪があったり。誰もが思い思いの過ごし方をしている様子に感激し、帰国後も鮮明に記憶に残った。日本の街にもこんな公園が増えれば、人はもっと豊かな暮らしになるんじゃないかと考えた。「人にとって、公園はきっと大切な存在だろう」そう思いはじめた。
福岡市の郊外に、FANTASIAはある。100m²ほどの空間。がらんとした一室に、作業台やソファ、そしてたくさんの本が並んでいる。FANTASIAは、事業創造のためのプロジェクトスペース。事業家たちの純粋な創造性を大切にしながら、新規事業の構想から伴走をしているブランディングの会社だ。しかしそこは事業家だけでなく若いクリエイターや学生、子どもが集まる場所にもなっている。
自身も高校3年の夏から、このFANTASIAにたびたび立ち寄っていた。たいていは学校からの帰りだった。「何に興味があるの?」「なぜ?どうして?」たくさん質問をしてくれそのたびにたくさん考えた。そして興味にかかわる本をどんどん薦めてくれた。田中元子さんの「マイパブリックとグランドレベル」、ヤン・ゲールの「人間の街」、ディビット・シムの「Soft City」はバイブルとなった。よい街とは何か、公共性とは何か、考えが深まるきっかけとなった。
高校を卒業し、海外の大学に入るまでの間FANTASIAでアルバイトをさせてもらうことになった。仕事場なのにオープンで、やや公共的な顔を持つこの場所で、来る人が気持ちよく過ごせるよう心がけながら毎日いろんな人と話をしている。名刺も作ってもらった。肩書きは「勉強家」だ。
最近自主的にはじめたのが「REIKA’S FREE COFFEE」というプロジェクト。毎朝7時からFANTASIAの軒先で「おはようございます」と、道行く人に声をかける。そして、コーヒーを無料で振る舞う。尊敬してやまない田中元子さんがフリーコーヒーの活動をしていること知り、自分もまず行動してみよう、とはじめた。看板を作ったり、ベンチを置いてみたり、エプロンをつけてみたり。どうしたら気軽に立ち寄ってもらえるか、ゆっくりしてもらえるか、工夫する日々を送っている。会話のきっかけのために、自分の好きな本や自作のZINEもテーブルに並べてみた。
はじめは挨拶すらぎこちなかった。知らない人に、声をかけるのはドキドキした。目も合わせてもらえなくて悲しい日もあったが、次第にコミュニケーションが生まれはじめた。常連もできはじめた。最近では、お客さん同士でおしゃべりがはじまったり、「これ使ってください」とコーヒー豆を寄付してくれる人も現れた。人工透析の通院をサポートするボランティアのおじいさん。ミュージックビデオの撮影に出かけるヒップホップなお兄さん。今まで交わってこなかった街の住人と毎日ささやかな交流をしている。だんだん、この地域にはいろんな人が住んでいるんだと実感してきた。言葉を交わしてみないとわからなかったことだった。日常には街を実感する機会がとても少ないことに気づいた。
フリーコーヒーをはじめる前は、「居心地の良い空間づくり」に興味があった。しかし、その興味も少しずつ変わってきている気がする。今は空間だけでなく人の「時間」にも注目している。
とある常連のご夫婦は、共働き。毎朝の散歩が貴重なコミュニケーションの時間だと言っていた。いつも散歩の途中でコーヒーを受け取ってくれる。ご夫婦は「このコーヒーを片手に散歩することで、また少し幸せがふえた」とニコニコと伝えてくれた。それがとても嬉しくて、必ずしも自分がつくった空間で過ごしてくれなくてもいいんだ、と思った。忙しい人の時間の流れ方を少しでも緩やかにできたり、誰かのほっとする時間をつくることに、今はやりがいを感じている。
最近、マイボトルを持ってフリーコーヒーに来てくれる人が現れた。それを見た別のお客さんも、翌日からマイボトルを持ってきてくれるようになった。マイボトルにバターとココナッツオイルを入れてきて、バターコーヒーを完成させていた。これは面白い!と思い、今はマイボトルの持参をおすすめできないか計画している。紙コップの無駄な消費を抑えられそうなので、是非早く実現したいと思っている。
来春からマレーシアの大学に進学予定だ。学校で何を学べるのか、まだよくわからない。だけど、FANTASIAで学んだことやREIKA’S FREE COFFEで の経験を生かして、いろんなことに積極的にチャレンジしていきたい。いまは、勇気で溢れている。
寝転んで空を眺めたり音楽を聴くこと、スケボー、サップ
・REIKA’S FREE COFFEに来てくれたら、朝の時間を気持ちよく過ごせると思いま す。 |
・福岡でリラックスできる場所や景色が良くて心地の良い過ごし方を教えます |
※チケットをお願いする時、『ソーシャルタウンガイド』を見たと連絡するとスムーズです。
※コンタクトはSNSのメッセンジャーから連絡をお願いします。
大濠公園
週末の朝、公園内にあるスターバックスコーヒーのテラス席から公園を眺めて いる時間がお気に入り。
糸島
いつも忙しい家族も、一緒に行くと少し笑顔が増える気がする。
阿蘇草千里
シンガポールのチャイムス
・貞末慎吾(ブルースカイ)
※つながりは、紹介したキーパーソンとのつながり、または今後インタビュー予定の方です。
毛利マユコさんからの紹介。高校を卒業したばかりとは思えない堂々とした感じと、目指すビジョンが素敵で将来が楽しみです。公園が好きなので野元さんが作った公園に行く夢ができました。(野田)
インタビュー・野田国広(編集部) グリーンドリンクス川崎のオーガナイザーをはじめ、かわさき新聞などのWEBメディア運営、シェアオフィスのコミュニティマネージャーなどを勤める。福岡市出身、川崎市在住。野田国広の記事一覧 |