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【埼玉】朝霧重治(COEDOビール)

川越を拠点にクラフトビールブームを牽引するCOEDOビールのブランディングに成功した朝霧重治さんにインタビュー。

プロフィール

(株) 協同商事 コエドブルワリー 代表取締役社長

1973年埼玉県川越市生まれ。県立川越高校、一橋大学商学部卒業。
Beer Beautifulをコンセプトとする日本のクラフトビール「COEDO」のファウンダー・CEO。川越産のサツマイモから製造した「紅赤-Beniaka-」を筆頭に、日本の職人達による細やかなものづくりと『ビールを自由に選ぶ』というビール本来の豊かな味わいの魅力をクラフトビール「COEDO」を通じて、武蔵野の農業の魅力とともに発信している。品質やブランドデザインに世界的な評価を受けている。ビールは現在、アメリカ、オーストラリア、中国、シンガポール、フランス等各国に輸出されており、Globalな視点での活動も進めている。

義父に誘われ協同商事へ

COEDOビールを製造販売している協同商事(埼玉県川越市)の朝霧重治社長は、川越で生まれ、高校は映画「ウォーターボーイズ」の舞台となった県立川越高校。大学は一橋大学経済学部へ進学し、学生時代はヨーロッパやアジアを中心にバックパッカーの旅をしてきた。ロンドンのパブやドイツのビアホールで、本場のビールと出会い、後にビール事業の再建の時の原体験へと繋がっていく。大学は、途中で商学部に転部し1997年に卒業した。それから新卒で三菱重工業に入社してプラント機械の海外営業をする。

大手企業では長く勤務するつもりがなかったという朝霧さんは、学生時代からお付き合いしていたフィアンセの父・朝霧幸嘉氏が創業した協同商事で、繁忙期にアルバイトをしていたそうだ。協同商事は、もともと農産部商社で、96年に地ビール事業を始めたとき、地ビールを供するドイツ料理のレストランを手伝っていた。地元産のサツマイモを原料とする地ビール(酒税法上は発泡酒)は、川越の名物となった。

社会人2年目の時、義父から三菱重工を辞めて、うちに来て欲しいと誘われる。地ビールのブームに乗って急拡大をしていた最中でもあった。97年10月に入社したのだが、その頃から地ビールブーム一気に消えていく。2002年に結婚、03年に副社長に就任した頃にはビール事業の継続さえも難しい状況下になっていた。06年10月、満を持して商品ブランドを『小江戸ビール』から『COEDOビール 』に一新。工場の稼働率を上げるための、他社のOEM生産をやめて自社製品のみに切り替える決断をする。

地ビールからクラフトビールのCOEDOへ

クラフトビールという言葉が、世間で耳にするようになる以前の2006年から、クラフトビールというコンセプトに啓蒙普及に努めてきた。川越を訪れる観光客の”土産物”としての地ビールから、ビール好きを対象に職人が丁寧につくり上げたクラフトビールとして生まれ変わった。川越特産のサツマイモを原料とした発泡酒から事業は始まった。ワインでいうテロワール。テロワールは、「土地」を意味するフランス語で、ワインの世界では、ブドウの樹を取り巻くすべての環境を指している。

ロゴマークは、ビールの材料であるホップの花を象徴した「毬花」。デザインコンセプトは美しい液色の多様性をテーマにあふれる日本の色として、レギュラービール6種が、瑠璃(Ruri)、伽羅(Kyara)、漆黒(Shikkoku)、白(Shiro)、紅赤(Beniaka)、毬花(Marihana)という日本の伝統色で名付けられている。

2016年9月、緑豊かな自然と一体になったサステナブルなクラフトビール生産のため醸造所を移転した。もとは昭和50年代に建てられ企業の研修所として使われていた建築を改修した。敷地内に掘った井戸から醸造用水を確保し、醸造活動で排出される排水もブルワリーで浄化し自然に還している。また、排出される麦芽や酵母を科学者と農家の力を借りて、良質な飼料として牛や豚に食べてもらうことで利活用する地域循環の仕組みにも取り組んでいるという。

コエドビール祭

2007年8月、COEDOを通じて繋がっている全ての人々への感謝の意を込めて、年に一度コエドビール祭を開催しはじめた。ビールと、食、音楽、アート、ダンス。そこに集う飲食店、お客さん、取引先すべて一体となるイベントだ。直接「ありがとう」の気持ちをこめてお迎えしたいと、感謝祭という位置付けでお客様と交流したいとの想いが込められている。2020年からはコロナ禍の影響で開催は見合わせとなった。またいつの日か、くつろぎ、笑い、語らえるコエドビール祭りの場を再びご用意できる日を願っている。

これからどうしていきたい

地ビールからクラフトビールになってからも、地域性、ローカルを失ってない。地元の人の生活の一部に取り入れて欲しい。COEDOビールを通じてコミュニティを作りたい。

協同商事の起源は農業でもあるので、オーガニック農業としてビールの原料の大麦を地域農業として自分たちで作って、生産者の方との関わりを広げていきたい。川越で黄金の麦の風景を見てみたい。

パッションポイント

植物

週1回に余白の時間を作って、農作業や植物の手入れをしながら、振り返る時間を大切にしている。

公式サイト、出版物など

公式サイト

オンラインショップ

Twitter ( @COEDOBREWERY )

チケット(私のできること、得意なこと)

・これまでに経験したことをもとに、話を聞きます。

※チケットをお願いする時、『ソーシャルタウンガイド』を見たと連絡するとスムーズです。
※コンタクトはSNSのメッセンジャーから連絡をお願いします。

お気に入りの場所(ホーム)

武蔵野の雑木林
さいたまの平地林、実家の近くの森で見慣れた風景でホッとする。

お気に入りの場所(アウェイ)

瀬戸内海
新卒で働いた会社の配属先が広島で、1年半過ごした。

つながり

笛木正司(笛木醤油)

菅原裕輔(菅原工芸硝子)

※つながりは、紹介したキーパーソンとのつながり、または今後インタビュー予定の方です。

取材後記

笛木さんからの紹介。コエドビールと聞けば知り人ぞ知るビールだったので、今回お話を伺えてよかったです。コロナ禍でコエドビール祭が中止になってしまったのは残念ですが、いつかまた川越みなさんと一緒に賑わいのある日が戻ることを願っています。(野田)

インタビュー・野田国広(編集部)
グリーンドリンクス川崎のオーガナイザーをはじめ、かわさき新聞などのWEBメディア運営、シェアオフィスのコミュニティマネージャーなどを勤める。福岡市出身、川崎市在住。
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