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【東京】石井秀幸(スタジオテラ)

「大阪中之島美術館」、「町田薬師池公園四季彩の杜西園ウェルカムゲート」や「星野リゾートリゾナーレ那須」などのランドスケープデザインを手掛けた石井秀幸さん。

プロフィール

株式会社スタジオテラ代表

石井秀幸
1979年東京生まれ。2005年ベルラーヘ・インスティテュート卒業。

久米設計、LPDを経て、2013年株式会社スタジオテラを設立。2017年より山梨県景観アドバイザー就任、千葉大学・武蔵野美術大学・東京理科大学非常勤講師。

2020年度町田薬師池公園四季彩の杜西園ウェルカムゲートにて日本造園学会賞 設計作品部門受賞(石井・野田)、2021年さいき城山桜ホール周辺地区にて都市景観大賞「都市空間部門」優秀賞受賞、2021年那須塩原市図書館みるるにてグッドデザイン賞受賞など

オランダでランドスケープを学ぶ

東京で生まれ、横浜市金沢区並木にある団地で長年過ごした。そこは富岡総合公園がある原自然と幸浦の埋立地の狭間にある団地だった。そうした風景の中で育ち、団地の空間の心地よさ、いろんな居場所があることを感じていた。木々の成長や街の風景など、時間軸で街がつながっていると思った。大学で建築の勉強をしたのち、建物だけでなく都市や街といった面としてどう人が生きる空間ができるかということを学びたいと思い、オランダのベルラーヘ・インスティテュートに行った。そこで多国籍な街でありながら、コンパクトでほどよい距離感と肩の力が抜けてる感じが良いと思った。

のちに暮らすことになる大田区池上にも近いスケール感があり、どこかで誰かに会える街だった。ランドスケープの影響を強く受けたのはオランダに過ごしていた時、電車に乗って旅しているとオランダからドイツに入ると森が広がり、スイスに入ると山になる。それがつながってるということに衝撃を覚えたという。大地がつながっていても風土が違う。多様性をどう受け入れるかを意識したきっかけにもなった。

原風景をつくる、つなげる

帰国して久米設計に就職し、その後ランドスケープデザイン専門の事務所を経て独立する。独立しようと思ったきっかけは2011年に発生した東日本大震災で、大地の表層に人間が住んでいると改めて感じた出来事だった。自然の摂理と向き合うような生き方、場づくりをしたいと思ったという。そうした想いから事務名は、大地(テラ)と向きあう事務所という意味で、スタジオテラとした。

これまで手がけてきた作品の中でも最も印象に残っているのは、「石巻・川の上プロジェクト」。東日本大震災で被災した地区の約400世帯の方々がこの町に移住するというプロジェクトで、新旧住民の接点を持つことができるコミュニティースペースを手がけることになった。第1期では農業倉庫を再生し、カフェを併設した図書館「百俵館」と黒石広場を整備。第2期は、自習室などに使われる「耕人館」とイベントスペースや遊び場となる「たねもみ広場」、第3期は裏山の整備が進められている。コミュニティスペースでは朝市や学習塾が開かれだしている。

時間をかけながら作り、地元の方とも一緒につくるという「スタジオテラ」にとっても、事務所を立ち上げて間もない時期の大きな仕事になった。住民の方たちの成長や感性がランドスケープにも重なり、そこにいる人々や風景の風景も変わることを前提にしたつくった作品となった。

終わらない場づくり

町田市にある町田薬師池公園で、ランドスケープデザインも担当した。丘陵地の起伏に富んだ地形と、落葉樹の雑木林が残る四季彩の杜エリアに、情報発信施設・飲食・休憩所を整備するという計画からスタートした。公園でありながら周囲に溶け込むような、雑木林に囲まれた集落のような風景を目指した。クヌギやコナラ、ヤマザクラなど1,000本以上の苗木を配植。将来にわたって、変化し続ける風景と次世代に場が受け継がれるような風景を提案した。また施工をはじめカフェ運営は町田市内の企業が行い、地元の方たちで街を盛り上げる取り組みになった。

ノミガワスタジオ

2020年、大田区池上の呑川沿いに本社事務所を構えた。1階は、堤方4306アベケイスケさんと共同運営する「ノミガワスタジオ」。2階はオフィスがある。これまでは「働く」だけの事務所空間を少しでも「暮らす」とつなげるきっかけをつくりたいと考えた。毎週金曜日と土曜日には、事務所の打ち合わせスペース・食堂として利用している空間でブックスタジオ(棚貸しの本屋)を行っている。オフィス街では、日常でどうみんなが暮らしているか実感が持てないように思えた。小学生が何時に帰ってくるのか?何時にまちのひとが寝起きしているのか?など当たり前のことを実感することが、街の風景をつくるのに必要だと思った。そこで路面の事務所にこだわって今に至る。コロナ禍でもまちの中で楽しめる充実感溢れる場所になっている。

これからどうしていきたい

日本人のデザイナーとして、ヨーロッパでパブリックスペースをつくりたい。

人がつくり出しながらも、手を離れ自然の一部になるような場、例えば明治神宮の森のような後世の人々の原風景をつくりたい。

パッションポイント

アベさん観察、人間観察

公式サイト、出版物など

公式サイト

KJ 2019年6月号/スタジオテラ特集

図解 パブリックスペースのつくり方学芸出版社 石巻・川の上プロジェクト

チケット(私のできること、得意なこと)

・ブックスタジオの棚主さんの本を通じて紹介します
・池上の街の面白い方を紹介します

※チケットをお願いする時、『ソーシャルタウンガイド』を見たと連絡するとスムーズです。
※コンタクトはSNSのメッセンジャーから連絡をお願いします。

お気に入りの場所(ホーム)

池上

お気に入りの場所(アウェイ)

ロッテルダム

つながり

アベケイスケ(Baobab Design Company)

小薬順法(ノミガワスイーツ)

※つながりは、紹介したキーパーソンとのつながり、または今後インタビュー予定の方です。

取材後記

アベケイスケさんからの紹介でインタビュー。町田のプロジェクトなどいくつか知ってるランドスケープを手がけられていて楽しみにしていました。大阪や那須の作品も観にいきたいです。(野田)

インタビュー・野田国広(編集部)
グリーンドリンクス川崎のオーガナイザーをはじめ、かわさき新聞などのWEBメディア運営、シェアオフィスのコミュニティマネージャーなどを勤める。福岡市出身、川崎市在住。
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