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【北海道】福島慶介(N合同会社)

東京からUターンし、地元小樽で歴史的建造物の「岡川薬局」を買い取ってカフェや宿泊施設などを運営したり、まちづくりに関わっている福島さんにインタビュー。

プロフィール

1977年小樽生まれ。建築家/クリエイティブディレクター。
N合同会社 代表社員、株式会社 福島工務店 代表取締役、有限会社 福島商事 取締役。

東京大学大学院建築学専攻博士課程単位取得退学(生産技術研究所、藤井・曲渕研)。小樽を拠点として建築を軸に活動。空間デザインをはじめとして映像制作やグラフィックなど横断的にデザインを続けながら、それらを活かしたまちづくりを行う。2009年には小樽市指定歴史的建造物「岡川薬局」を買い取り、自らが代表を勤めるN合同会社で利活用を行う(2017年、小樽市都市景観賞受賞)。

北海製罐小樽工場第3倉庫の保全利活用や、第3号ふ頭周辺再開発などのみなとまちづくりにおける重要な役割を担っている。

今話題の北海製罐小樽工場第3倉庫を背景に ©︎Yasuyuki Ohashi

小樽で歴史的建造物の改修・利活用

小樽にある福島工務店の3代目社長として、不動産部門の福島商事の役員として、そして2009年には小樽市指定歴史的建造物「岡川薬局」をリノベーションし、そこを拠点に活動しているN合同会社の代表と3つの顔を持つ福島さん。小樽市内の重要文化財・歴史的建造物の改修・利活用や、まちづくり、デザインなどの活動をしている。30歳まで東京大学大学院の建築研究室にいて、横浜市内のまちづくりにも参画していた。

小樽の景観保全やこの街独自の魅力づくりを行いながら、時代背景に沿った価値を生み出す活動を継続。街に埋もれている価値を高めていくまちづくり活動を目標としている。また、東京・横浜時代に築いた人脈を中心として、市外の企業や個人の取組を小樽に実装するためのサポート活動にも力を入れている。現在、小樽市観光誘致プロモーションビデオを制作中(プロポーザルで一等となり実施)で、市内外の強力なチームで制作を進めている。

文化庁メディア芸術祭(2020、石蔵利活用の会場空間演出、イベントロゴ、グラフィックデザインを一式担当 ©︎KOO)

(旧)岡川薬局をリノベーション

自身で立ち上げたN合同会社では、空間デザインやインスタレーション、文化庁メディア芸術祭等のイベント運営参加、まちづくりなど、自信がクリエイターとして創作活動を行いながらも、幅広い見識を活かして東京をはじめとした市外の資本や才能を街に着地させるサポートをしている。特に個人で取得し、Nで利活用を行う旧 岡川薬局では2010年の利活用開始以降、様々なイベントやビジネスプランを実施。人材育成や教育の場として、またコミュニティづくりの場として多角的に運営を継続。2018年には活動が認められ、小樽市都市景観賞を受賞した。

岡川薬局は、福島工務店の近くにあり、薬局としての営業を終えていた。間口が狭く奥行きがある建物で300平米ほどの広さだ。福島さん自身この建物を気に入っていたが、改修費もかかることから買取ることを両親からは難色を示されていた。オーナーさん自身は中途半端に残すのなら解体してしまおうと決断もされていたが、小樽市内では古い建物がどんどん壊されていき、景観も変わっていく。ほかの建物が解体されていく様を見て、残酷に感じた。昔の景観を残し現在に活かしたい。薬局だったという建物は、いろんな人たちが出入りしていた場所であり、地域をささえていた場所だと思った。そんなコミュニティを失うのは損失だと考え、自身で運営することを決めた。

「(食)べれて、(借)りれて、(泊)まれる、まちの縁側。」をコンセプトに、20104月から(旧)岡川薬局として営業を開始。1階はカフェ『Cafe White』で薬局だった雰囲気も残っている。カフェの奥からゲストハウスで、素泊まりの個室が3室ある。定員は12名。宿泊者には専用ラウンジや石蔵スペースもある。また、ワーキングステイ制度を用意していて、館内の手伝いで、宿泊が無料になる。(12名まで)条件は、18歳~35歳の日本人女性。一日5時間程度(1日限定2名まで)、建物内外の掃除や洗濯、カフェのお手伝いをしてもらう仕組みだ。そして館内の一部はN合同会社のワークスペースになっている。

港エリア再開発計画にも参加

2011年から小樽商工会議所のプロジェクトメンバーとして港エリア再開発計画に関わり、建築や都市の専門家として第3号ふ頭を中心とした港広域の再開発マスタープランを構想。同プロジェクトでは「港を巷に」をテーマに掲げながら、市民の港への意識喚起を目指して様々なシンポジウムやイベントを行なってきた。特に地元商科大学の大津ゼミと連携した社会実験カフェPHANTOMとHATOBA.C.Yにおいては、海上物流の象徴であるコンテナを人々がくつろげる場としてのカフェに置き換え、プロジェクトのコンセプトを明確にアピールしながら港に賑わいを作った

HATOBA.C.Y(2016、小樽商工会議所のメンバーとしてコンテナを使ったイベントを主催。小樽商科大学大津ゼミと協働)

小樽は古くから貿易港として発展して来た。人やモノの交流が続いて来た街だ。しかし時代の変化にしたがって、人とモノとが分かれていった。港からは人が消えていき、倉庫街となった。物流では石狩や苫小牧など、ほかの港に負けている。駅と港が近いのも魅力の一つだが、物流拠点だと弱い。いまは人が憩う魅力的な場所に変えている。2019年からは小樽市も交えた、港の未来の魅力作りを考える官民連携の協議会にプロジェクトメンバーとして参加。市の計画への民意の組み込み、拠点施設の具体的整備イメージなどの策定に貢献している。

第3倉庫ライトアップ(2021、第3倉庫活用ミーティングメンバーとして担当。音と光で建物を有機的に見せた)

これからどうしていきたい

<まちづくりの活性化>

2017年に尾道へ視察に行った際に、尾道にはまちづくりに積極的に参加する若いプレイヤーが100人以上いると聞いた。小樽でもそのような状況を作っていきたい。そのためには教育が重要と考え、現在解体の危機に瀕し、多くの市民がその動向に注目している第3倉庫は大いなるきっかけとなる。「第3倉庫活用ミーティング」メンバーとして関わっている中で利活用の提案に教育的な仕組みを盛り込んでいきたい。

<観光都市から交流都市へ>

港町は本来新しいことを積極的に取り入れていた(かつての北前船を中心として)が、今の小樽は新しいものは生み出しにくい街に変わってしまった。物と人の交流の場が、いつしか物流専用として運河や埠頭が整備され徐々に水辺と市民の距離が生まれたことがその背景にある。その後、物流の衰退と共に港から活気が消え、人々もあまり港に立ち寄ることがなくなっている。

運河論争が残した「運河を半分残して半分を道路」とした折衷案は、結果として街と港の連続性を維持する結果につながったと捉えている。港町に本来の魅力を取り戻すためには、今一度港から街を見直し、市民を中心とした多くの交流から新しい価値が生まれていく交流都市になるように観光都市小樽を見直したい。

パッションポイント

アート鑑賞

公式サイト、出版物など

公式サイト

チケット(私のできること、得意なこと)

・小樽は海と山に囲まれたコンパクトな街です。天狗山の山頂からは、すり鉢状の地形に張り付くかのように市街地が形成されていることがわかります。すり鉢上なので、それは海から(映画 Love Letterの冒頭のシーン)も見ることができます。そんな小樽を観光するためのスポットをお知らせすることが出来ます。
小樽やその周辺都市における建築や不動産、デザインに関わる取組のお手伝いが出来ます。

※チケットをお願いする時、『ソーシャルタウンガイド』を見たと連絡するとスムーズです。
※コンタクトはSNSのメッセンジャーから連絡をお願いします。

お気に入りの場所(ホーム)

CafeWhite
北海道小樽市若松1丁目7−番7号
公式サイト

お気に入りの場所(アウェイ)

天王洲
寺田倉庫を中心として、水辺の魅力作りがとても参考になる。

オランダ
オランダは「水に近い都市」という言い意味で、小樽に近しいものを感じてお気に入り。特にNDSM Wharfに代表されるような、アートの拠点が沢山あることもその理由。拠点を支える文化・芸術の中間支援組織を今後小樽でも立ち上げる参考にしたい。

【じゃらん】国内25,000軒の宿をネットで予約OK!2%ポイント還元!

つながり

船戸大輔 (artful)

・伊藤広大(GEOGRAMS)

・五十嵐慎一郎(大人)

※つながりは、紹介したキーパーソンとのつながり、または今後インタビュー予定の方です。

取材後記

船戸さんからの紹介。小樽には何度か観光で訪れたことがあって、旧岡川薬局も現地では見てませんが、オープンした当時は建築雑誌などでもよく取り上げられてて存在は知っていました。古き街並みが残ってほしい都市のひとつです。福島さんの活動をこれからも注目していきたいです。(野田)

インタビュー・野田国広(編集部)
グリーンドリンクス川崎のオーガナイザーをはじめ、かわさき新聞などのWEBメディア運営、シェアオフィスのコミュニティマネージャーなどを勤める。福岡市出身、川崎市在住。
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